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俺を殺せる者はいるか!  作者: Tkayuki 冬至
第二章 狙われた女神の分身体達《ヒロイン達》
30/47

強者共は、静かに語る

お待たせしました。


⚠️胸糞ありです。嫌な方は見ないで下さい。


あと、感想・評価ありがとうございます。



幼女───ネメアの悲鳴が木霊する。


その悲鳴は絶命したかの様な絶叫であり、その証拠にネメアの右腕が切断され、鮮血が辺りに散らばっていく。ネメアは歯を食い縛り、何とか少年───ホリンを殺そうと躍起になる。が、ホリンはゲイ・アイフェを構えつつも、何処か消極的であった。けれども、ホリンの額から血が流れており、どちらも激しい戦いだったのだろう。



「ぅがっ!?」


「童と思って油断したが……しかし。もう勝負は決した。引け、童よ。これ以上お前さんを傷付けたくはない」


「ぁがっ……めがみの、ぶんしん、つかまえるっ!」


「さっきから言う母の命令かのぅ。幾らモンスターと言え、酷いものだ」



ホリンは無力化したいのが山々だが、ネメアの実力が想像以上だったのだ。無力化するのを徹していれば、下手すれば自分が殺されてしまう。殺し合いとは、そんな生易しい、そして夢物語で出来るものではないのだ。



「今の状況が判らぬとは───若いッ!!!」



ホリンは透かさず避けたネメアに向けて止めの一撃として、ゲイ・アイフェを突き放つ。しかし、ネメアの動体視力はやはりモンスターよりも遥かに上。紙一重で避けると、倒れ込み動けぬリベリアだけでも連れ去ろうと駆けていく。


しかし、そんな狙いを見据えていたホリンは指で鳴らすと戦車を引いた二頭の馬がネメアを引き飛ばすのだ。バコンッ!と大型車に引かれた様な衝撃音と共にネメアは地面に身体をぶつけながら転がってしまう。



「ぅ……ぁぁ……」



呻き声を出しながら倒れたネメアを確認したホリンは、倒れたリベリアを担ぎ上げ戦車の方へ運んでいく。そして勿論ハーツもだ。運び終えたホリンは直ぐに応急処置を行っていく。



「こりゃ、派手にやられたのぅ」



染々と呟きながら、鳩尾が血だらけのリベリアを傷薬で塗り、包帯を巻いていく。そしてハーツにも手当てをしている途中、突如二頭の馬は慌てた様に鳴き声を上げて、更に威嚇したのだ。



「どうした、マハ、サングレン!」


『逃げちゃったようです』


「……ロイグ、お主今まで何処に」


『同胞と遊んでいたです』



お伽噺に登場しそうな妖精ロイグがホリンの頭で胡座をかいて欠伸をする。ロイグの言う通り、先程まで倒れていたネメアの姿はない。



「逃げたのぅ」


『拘束しないホリンが悪いのです』


「主が見張ってくれればよいものを」


『嫌です。労働時間は9時から18時なのです。現在23時過ぎは、遊びの時間なのです』


「……ふむぅ」



何とも言えぬ表情をしてしまうホリンは逃げたネメアは追わず、リベリアとハーツを運んで国へ向かうのであった。



『ホリン、道真逆なのです』


「まじかの」


『相変わらず方向音痴なのです』




▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼




夜明けが明ける、数個前。


互いに狂いに貪る様にして交わり終えた、その風俗街のスイートルームのベッドの上。そこにすやすやと眠る九十九篝の姿を一糸纏わぬ姿のツバキは彼の頭を撫でながら微笑んでいた。



「ほんと、寝顔は可愛いなぁ」



そんな他愛ない独り言を呟きながら、次はまるで九十九の身体の中に住まう(・・・・・・・・)存在に向けながら声を掛ける。しかし、その声は何時ものツバキではなく、何処か冷たいものであった。



「起きてんねやろ、ヒノカグヅチ」


≪……キサマか≫


「久しいなぁ。ほんと、まさかかがりはんの中にいるなんて───どういうことや、説明してみぃ」


≪キサマこそ何故ここにいる、セクメト(・・・・)。お前程の女が動くとは≫


「わっちはな?阿呆な奴等(・・・・・)が何かやってるから気になって見に来たんよ。そんな時にたまたまかがりはんと出会ったんや」



ふふんっ、と胸を張るセクメト(・・・・)と呼ばれたツバキだが、ヒノカグヅチは彼女のお腹を見ながら何かを察して少し怒りを現していた。それをツバキ自身もわかっているのか、彼女はお腹を愛しそうに撫でていたのだ。



≪キサマ……孕んだな?我、妻の子を!!!≫


「あはっ♪苦労したんやで?かがりはんにバレん様に避妊具に小細工するのはなぁ♥️───って、なんや妻って。かがりはんは男やで?」


≪フッ、何も知らぬ様だなっ!見よッ!!!≫



ヒノカグヅチは無断で熟睡する九十九の身体を乗っ取って、女体化してしまう。そして意識もヒノカグヅチなので、女体化姿の九十九を操りながら話す。



「見よ、我妻の美しさをッ!」


「……驚いたわぁ。もう、かがりはん女に成れるんやったやゆうてくれたらいいのに」


「あっ、ちょっ!?胸を触るな。妻の胸とか、アソコとか触るではないっ」


「何ゆーてんねん。かがりはんのおなご姿なんてもう二度と見られへんし触れられへんやろ?今のうちや今のうち♪」



そんなやり取りを終えると、ヒノカグヅチは渋々ではあったが何が起こりこの様な結果になったのかを述べていく。【神命:天照】に、七姉妹の女神達。そしてその分身体等を淡々と語ったヒノカグヅチ(九十九女体姿)の裸体をマジマジと眺めていたツバキは、はぁっと溜め息を着いてしまう。



「【神命:天照】……よりによって、神王の一角(・・・・・)の名を引き継いだんかぁ。そして、七姉妹の女神。そうか、だから篝はんは死にたがってた訳やね」


「妻に触れるな、戯者」



そう納得しながら九十九(中身ヒノカグヅチ)の頭を撫でるツバキ。この世界がループ(・・・・・・・・)していることは知っていた。けれども、その中心にいるであろう篝が苦しんでいるのはわかっていたが、あの女神達に目をつけられていた事は初めて知ったのだ。


ツバキは何か思い出したかの様に、ヒノカグヅチにある事を話す。



「なぁ、ヒノカグヅチ。あんさん、知ってはる?」


「なにを」


「動いてるで、怪物達(・・・)が」


「……やつらか」



ヒノカグヅチの表情は、固い。


苦虫を噛んだかの様な表情に、ツバキは顔を傾げてしまう。



「知ってるん?」


「知るも何も、我は怪物達(奴等)と戦ったことがある。しかし、"怪物(奴等)の王"と共に"やつ"が封印された筈なのだが……」


「風の噂でやけど、"プロメテウス"が手を貸してるみたいやねぇ?」


「"プロメテウス"、だと……っ!!!」



ここで初めて、酷く憤った表情を見せるヒノカグヅチは殺意を剥き出しにしてしまう。何故、ヒノカグヅチがここまで怒りを露にするのかはツバキも知っている。だからこそ、こんな風になってしまうのも無理はないとわかっていた。



「(天界の冥府で共に死んだ母親と暮らしている中、それを引き裂き下界に連れ去った奴やからなぁ。無理もないわぁ)」



ヒノカグヅチの母は、ヒノカグヅチを産むのと同時に死に冥府に逝ってしまったのだ。ヒノカグヅチ自身も、父に殺されてしまい冥府に逝くのだが、そこで母と共に静かに暮らしていたのだ。そんな中、突如ヒノカグヅチを連れ去ったのが"プロメテウス"。ヒノカグヅチからすれば"プロメテウス"は悪であり、必ずこの手で殺す事を決めた宿敵である。



「何故」


「たぶんやけど……"あんひと"を降し、自分が新たな【神帝】の座を得ようとしてるんとちゃうん?」


「……有り得るな。あの"怪物の王"も"やつ"を倒せる可能性がある存在。手を組めば中々厄介な事になるであろう」



この最悪の状況は、神々でしか判らぬ事態。ツバキは全く気にしていないが、ヒノカグヅチは怒りも滲ませつつ七姉妹の女神達の後ろにいる存在が何を狙っているかも理解してしまう。



「成る程。九十九篝(我が妻)を強くさせていたのは───」


「"怪物の王"達と戦う為の、()っていうわけやなぁ」



両者共に心底面白くない表情をしてしまう。何故なら、ヒノカグヅチにとっては己の女を。ツバキからすればお腹に宿る父親が都合の良い道具されようとしているのだから。


しかし、セクメトは動くつもりはない。何せ自分の目的は果たされたのだから。ここで問題が出るのであれば、九十九篝の子を神である自分が孕んだ事だろうか。それが見つかれば面倒極まりない。子を育てるのは問題ないのだ。けれども、これからこの店から(・・・・・)離れて(・・・)どうするか具体的には考えていなかったが、女体化した九十九篝(中身ヒノカグヅチ)を見てピコーンっといいアイデアを思い付いてしまう。



「~♪」


「(何か良からぬ事を考えているな)」


「まっ、わっちはのんびり過ごさせてもらうわ」


「貴様はそれでよい。暴れられては困る」


「あははっ♪もし、篝はんが死んだら───この世界、そして天界を滅ぼしたろか」


「セクメトっ!?」


「冗談やぁ♪獣人一人にそんなことせんわ。例え神々に狙われていたとしても、なぁ?」


「(神王達が恐れられているこやつの冗談は、冗談に聞こえぬ……)」



溜め息を着きつつ、ヒノカグヅチは女体化した九十九篝から意識を手放し、それと同時に男へ戻ってしまう。そしてそのままベッドの上で再びすやすやと気持ち良さそうに眠る九十九の身体の上に、ツバキはその上に被さり眠りに着くのであった。




▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼




夜が明けかけた空だが、木々の枝から伸び生え生い茂る葉によって殆ど夜空が見えぬ森林の奥地。そこで一人の幼女が荒く、苦しい息を吐きながらよたよたと歩いていた。



「ぅ……ぅ゛ぅ゛……」



左腕を失い、肩から血が溢れていく。身体中も傷だらけな黒き獅子の幼女ネメアは既に力が無く、歩くだけでやっとである。



「どぅ、ち、ましょぅ……」



命令を遂行出来ず、涙を堪えて今にも倒れそうに歩くネメアは母親の元へ戻るに戻れなかった。母親の命令を遂行出来ず失敗したネメアは、どんな顔をして家族の元へ戻ればいいかわからない。母の為に、身を削ってでも女神の分身体を捕らえようと考えていたのだ。しかし、今ネメアは深傷を追って直ぐに実行できない。


一度、何処かで身体を休めようと考えていた矢先、ネメアにとって地獄の幕開けが始まってしまう。



「ぅがっ!?」



ネメアの肩に、細い鉄の刺が突き刺さる。その刺は明らかに人工的なもので、刺されたネメアはその場で倒れ込んでしまう。そんな倒れたネメアの元に何人もの怪しい人影が姿を現す。



「おいおい、こりゃぁ上玉じゃねーか」


「けど頭ァ、この子供右腕ねぇですぜ?」


「ぐひゃひゃひゃっ、幼女っ幼女っ」


「直ぐ止血すりゃぁいーだろ」


「まぁ、これだけ顔と身体が良いんなら良い値で売れるぜぇ?」



その姿と格好で誰もがわかるだろう。


盗賊だ。


しかも、迷い混んだり、連れ去った女子供を奴隷に落とす奴等である。誰かを襲った後なのか服が血がベットリと着いている。そして全員男で、右腕が無く出血しているにも関わらずネメアに対して下劣な笑みを浮かべていたのだ。



「なにを、ちまちゅっ!」


「なんだ、じょーちゃん。今からお前は奴隷になるんだよ。勿論、性奴隷だけどなっ!がはははっ!!!」


「良いっすよねっ、頭っ!先に味みてもっ!」


「先に手当てしてやれよ。このままだと死ぬぜ?」


「まずは、っと」



そう言う野郎共の一人が、倒れたままのネメアの首に首輪を強引に着ける。抵抗するネメアであったが、既に単なる人間相手一人でも殺すことも逃げることも出来なかった。既に今にも気絶してしまいそうなネメアからすれば絶体絶命。しかし、都合の良い様に助けてくれる人等いない。世の中、今ネメアの様な状況から無事に救われる者など極少数だ。都合の良いヒーローや人が現れる訳がない。



「やっ、やめ───」


「おーおー、暴れんなよじょうちゃん」



首輪だけではなく、手足に枷を付けられてしまう。加えて噛まれない様に轡までされてしまうのだ。しかもそれは奴隷専用の者でモンスターであっても簡単には外せない。本来のネメアの力を持ってすれば破壊できるだろうが、今の状況では不可能である。



「ほらいくぞ、野郎共!!!」


「はなっ、ち……」


「漸く効いてきたか」


「おら、さっさとアジトに戻るぞ」


「アジトには治癒師がいますからね。えへへへへ……治れば」


「構わねぇ。だが、壊さねぇようにな?」



刺さった刺には麻酔薬が塗られていたのだ。只でさえ意識が朦朧とするネメアはそのまま耐えきれずにそのままコテンと意識を失ってしまうのであった。




ネメア……ごめんね。

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