九十九篝は、夢を見る
感想・評価ありがとうございます。
前半の回想?はシリアスが入りまーす。
夢を見た。
前世、というべき記憶を。
正直いい記憶ではない。
けれども、ボクにとっては忘れられない記憶。
『燎くん』
聞こえる……お母さんの声が。
……ううん、涼子さんの声。
あの人を、母親と呼んではいけない。
いけないんだ。
ボクがまだ小学生の頃だった。
母親だった涼子さんとお父さんと一緒に幸せな日常を過ごしていた。涼子さんは息子のボクから見ても綺麗で優しいお母さんだった。涼子さんは料理がとても上手で、毎日どんな料理が出るのか楽しみだったんだ……。
けど、何時からだろう。
確か……涼子さんが、スポーツジムに行く様になってからだ。
最初はトレーニングに夢中になっているから帰ってくるのが遅いんだと思っていた。けど。違ったんだ。
ある日、休日に涼子さんの手伝いをしているとチャイムが鳴ったんだ。そして開けてみたら、知らない男の人。多分20代位のチャラそうな男の人だったのは覚えてる。涼子さんはエプロンを慌ててはずしてその男の人と何処かへ行こうとしていたのだ。
『どこにいくの?』
『今からジムに行ってくるの』
『え……でも……』
『ごめんねー、ボク。お母さん借りるね~』
少し焦った様子の涼子さんはその男の人と家から出ていってしまった。家の中は、ボク一人。涼子さんが居なくなって、静かで、そして寂しくて。行かないで、と言えなかった。その時の涼子さんは男の人と楽しそうな顔をしていたから……。
数時間後、何事も無かったかの様に涼子さんは帰ってきた。
それからだろうか。
涼子さんの帰りが遅くなったのは。
ジム友達と遊びに行っていた。ジム友達と旅行に行ってきた。ジム友達と飲みに行っていた。
そんな理由をお父さんは信じていたけど何れもが嘘だと、ボクは気付いたんだ。あの男の人と会っていたんだって……。
だから、ボクは涼子さんの為に我が儘を言ったんだ。
一緒に遊ぼ、ジムに行かないで……。
『うるさいっ!!!』
けれど、無理だった。
初めて、怒った涼子さんの顔を見た。
いや、怒る事はあった。けれども、まるで邪魔な存在を見る目で睨まれた時は、初めて涼子さんに恐怖したんだ。あれからボクは涼子さんと話すことは少なくなった。あったとしても何時もの様な優しいものではない。素っ気ないもの。
ボクは……泣いた。
みっともなく、負け犬の様に泣いていた。
でも、お父さんに言えば喧嘩になってしまうとわかっていたからこそ何も言えない。
男の人と頻繁に会うようになったのか、家事全般が疎かになっていく。でも、それがお父さんが気付けば涼子さんが男の人と会っている事を気付いてしまう。そうなれば、何時ものようにお父さんと涼子さんと一緒に暮らすこの空間が壊れてしまうのを、ボクは恐れていた。
だからこそ、涼子さんの代わりに家事を全部やろうと決めたんだ。家事も洗濯も、掃除も。
それを一年半続いた頃、ボクは倒れ病院に運ばれてしまった。
お父さんは看病してくれたが、涼子さんは一度も病院に来ることはなかった。ジム友達との旅行だったらしい。
病院を退院した後が、ボクにとって不幸の始まりだった。
バレたんだ。
涼子さんが浮気していることに。
その事で涼子さんとお父さんは大喧嘩。暴力こそ無かったものの、涼子さんの発言はボクの心を抉った。
『母親として、もう疲れたのッ!!!』
『私は母親である前に女なのッ!!!』
『あんな子、産まなきゃよかったッ!!!』
その最後の言葉に、ボクは自分の存在が否定された様で何もかも考えられなくなった。
ボクが産まれなければ、涼子さんは幸せだったんだろうか。ボクが居なければよかったのだろうか。
そんな事をぐるぐる考えて、そのままボクはその場で倒れてしまった。そして気付けば再び病院のベッドの上。お父さんは側に居たけど涼子さんの姿は無かった。
お父さんは言ってくれた。
既に数週間寝込んでいて、その間に涼子さんと離婚したことを。そしてボクはお父さんの両親と共に暮らすこととなった。
ボクはお父さんに何度も謝った。涼子さんの異変に気付きながらも黙っていたことを。何にも相談しなかったことも。
けれどもお父さんは逆にボクに謝っていた。お前に辛い思いをさせて、気付いてもやれなかった馬鹿な親父を許してくれと。
涼子さんについては、お父さんは自分にも悪い所があったのかもしれない。仕事が何時も忙しくて家事も何もかも手伝えなかった自分も悪いと。だからこそ、涼子さんが離婚を望むのを受け入れたのだと。この時、ボクも涼子さんに甘えていたのがいけなかったんだと感じた。何もかも涼子さんに頼っていたから、こんなことになったんだ、と。
それから数年、涼子さんと会うことはなかった。
お父さんは亡くなった。
いや、殺された。
涼子さんの浮気相手の男の人が、皆が寝静まる夜中に家を放火したのだ。家にはボクと祖父母が就寝中で、お父さんはボクを助ける為に燃え広がる家からボクを救い出してくれた。けれど祖父母を助ける為に行ったが、帰ってくる事は無かったんだ。燃え広がった家が倒壊したのだ。
お父さんだけではなく、お爺さんお婆さんも亡くなってしまった。
高校一年秋の頃だった。
………………。
……………
…………
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突然ですが、男性の皆さんに質問です。
朝起きたら、女になってたらどうします?
まず、最初に何します?
……ふ~ん。エッチじゃん。
俺は断然に、胸を触ります。
「……うむ。丁度良い大きさで癖になる柔らかさだな」
端から見ればヤバい女だよね、全く。
朝起きたら女に───とかではなく、能力の副作用でこうなったんだよな……。何か、思い出したら恥ずかしくなってきたんですけど。ていうか、黒騎士君喋れたのね君。中々中性的なイケメンボイスは驚いたよ。
で、あれから何があったかは不明で……目覚めたら自分の家、その寝室で眠っていた。しかも裸で────きゃっ♪とか言えばいいのかこれは?
「結界、か……」
どうやら俺の寝室だけではなく、部屋全体に結界によって守られている。まあ戸締りもされていたけどね。黒騎士君がな?
「おはようございます」
「……」
黒騎士君か、吃驚した……じゃなくて!?
鎧姿のままかよ。素顔少し気になったのに、残念。てか、多分男だよな黒騎士君。そして俺は全裸である。
もう一度言おう。
ZE☆N☆RA、である。
けれど、やっぱり心は男なのか全く恥ずかしいとかはあまり無い。いや、全裸で外へ行けとかは無理だけどな。基本ギャル達がいる時は全裸だからか?
だが、一応女なのでお決まりの台詞を言っておこう。
「へんたい」
「元気そうで何よりです」
……スルーかい。
まーいいや。
「貴様、何者だ」
今俺が最も問いたい事だ。
しかも何故俺の部屋知ってんだよ。
「内緒です」
……まあそこまでして鎧を脱がないのにも色々事情があるんだろうと思っておこう。
うーむ……寝起きだけど何か凄く懐かしい夢?を見ていた様な……なんだっけ?
どーでもいい……ことなのかな。その内思い出せるかも?
「魘されてましたよ」
いやん、見てたのね貴方。
てか、魘されてたのか俺。
……何夢見てた、怖い。
まー、冗談はここまでにして。
「貴様の目的は」
「それも内緒です」
「貴様な……」
「もう大丈夫そうなので、お暇させてもらいますね」
「ちょ────」
……消えやがった。
まるで忍の如く、闇に紛れたぜおい。
で、ポツーンと一人になった俺は何しよう?
……そうだ。洗濯物にギャルの下着置きっぱにしてるのあったな。何かお泊まりで着替えとか入れたキャリーバック持ってきてた時にね。
そうと決まればタンスにしまってあったから……あったあった♪
うーむ、黒のエッチな下着ねぇ……しゃーない。着てみるか。
え、やり方わかんのかって?
何度もギャル達の下着を外し脱がしてるよ。無論着せたりも稀にしてる。まさかこんな時に役に立つとは───やったね、俺♪
しっかし……。
「胸がキツいな」
多分ギャルよりか胸のサイズは一つ大きい。まあ絶対に無理、という程キツくはないけど、まあいっか!
さて、昨日は新事実が判明して頭がこんがらがっているのが実情だが確認しておこう。
まず七人のヒロイン達は女神の分身体だったということ。これは驚愕する他にないが、何故あの場で現れたのか。理由としてはやはり、俺の中にいるヒノカグヅチが原因だ。計画がどうのこうの言っていたが……俺を育成させる?何かゲームでもやってるのかね?あ、この世界ゲームの世界だったわ。
けど、何故俺を育成させるのだろうか?
確かに俺は七姉妹の女神達の策略?で何度もNTRて何度もやり直した為にここまで強くなった。それも計画だったのはわかったんだが……問題はその理由だ。
話の内容から、七姉妹の元締め?らしき主神様がいるみたいだが、何が目的か、だ。俺を育てる為に七姉妹を動かし、そして『あなたという花を摘む時が近付いてきました』、だと?と、いうことは近々俺は摘まれるのか?花みたいに。
え、怖い。
でも、ヒノカグヅチが邪魔らしいが……。
「ヒノカグヅチ」
《……》
「寝てる、のか?」
全く反応がない。
恐らく……多分?俺が何かヒノカグヅチの力を馬鹿みたいに吸い取って自分の力にしちゃったもんな。ほんと、何やってんだよ俺。自分以外の力を得ても意味無いでしょうに……。
しかも……。
「む」
人差し指から簡単にライターの様な火が出る。
『五大属性』の一つ、"火"を操る事が可能になっちゃった。
……炙り料理に使えるな、これ。今度試してみるか。節約できるし、いいかも♪
こほん。
話を戻して、その主神様は何が目的か。そして俺を使って何をする気だろうか。話の内容的に強者を求めてる……いや、必要としている?
だが、意外とその主神サマの暇潰しとか何かで特に理由はないかもだな。
───まあいい。ヒノカグヅチが起きたら直接問い質す方が早いな。それまではどうするか……何しよう?女の姿で出歩くのにも服がなぁ。てか、どうやって男に戻れんの?
……ぉん?扉が開いた音?
誰か入ってきたな……しかもどたどたーっと足音を立てて、誰だよ────。
「アンタ何処に─────へ?」
「騒々しいぞ」
何だギャルか。
……あ。
今、俺、女じゃん。
──────ま、いっか。
別になっちゃったもんは仕方がないし。
てかギャルよ、何ガン見してんだ。
「篝……なの?」
「それ以外に誰がいるというのだ、戯者」
「……なんで女になってんのよ」
なんて答えればいいんだよ。
あれだよあれ。なんかなっちゃったんだよ女の子に。それで察しろよ。あるに突然女の子になっちゃった☆だよ。いやほんとうに、なんて答えればいいのさ?
「女になって何が悪いっ」
「何言ってんのよ」
だれかー、助けてー!
ヘルプミー!
「……ま、いいわ」
そう言うとギャルは俺が座るベッドの端に腰を掛ける。なんか、納得した、のかな?
「……よかった」
「なんだ」
「アンタ知らないの?昨日『火の神殿』で大噴火が起こったのよ。しかもその規模はこの国まで影響が出てね……。皆避難してるのにアンタの姿が見えなくて……ここに来ても居なかったし、その……」
「ほぉぅ……」
うん、それね。
当事者?というかその関係者は俺じゃん。
結構な事態になってたみたい。あの後本当にどうなってんだろ?俺関係者だし……何か言われるよね絶対。関係者だとここの王様とか知ったら呼び出されるんじゃない?ヤダー、こわーぃっ♪
「ねぇ……」
「……なんだ」
ギャルよ、俺の太股なぞるように触ってくるが ……ぇ、なに?しかも顔近いゾー。もうちょっと動けば唇くっついちゃう。しかもギャルの手は徐々に太股だけでなく、もう片方を背中に回してくる。
え、何この子ヤる気なの?
俺、女の子ですことよ、今だけ!
「アンタ……凄く綺麗な肌してるわよね」
「おい」
「女みたいなアンタが女になっちゃって……可愛いわよ」
「当然だがな」
「……ムカつくわね、ほんと。けど────」
まさかの女になった俺、ギャルに唇を奪われる。
やーん、女として初めてのファーストキス奪われた♪ま、今回のループ初キスもギャルだったな、そういえば。男としても女としてのファーストキスをギャルに奪われるとは……ま、いいけどね。
「女のアンタでも、全然余裕ね」
「全く、お前は」
そう言いつつ、貪る様に熱烈なディープなキスをしてくるギャル。もう座っている俺の真っ正面を跨がって、そのまま押し倒してくるんだから、仕方がない。
ええ勿論、ヤりましたよ?
……何か?
燎君……何処かで出てきましたよね?