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九十九篝は、ヒロイン二人と戦う

あけましておめでとうございます♪


さてさて♪


次はどんな展開になるんでしょーか!?



リベリアと皇の背中から突如として生えた、天使や神を連想する白く、細く、綺麗な翼が伸びていた。しかし、綺麗で美しくも感じる筈なのだが、無意識に恐怖というべきか、それとも畏怖してしまう不気味な雰囲気があった。



「なんだ、あれは」


≪我が妻の味方になるのがそれほど面白くないと見える。成る程、あれ(・・)やつらの駒(・・・・・)か≫


「どういう事だ、ヒノカグヅチ!」


あれ(・・)は敵だ、我が嫁よ。駒自体は(・・・・)無害だが、あの姿は操られている。無論、やつら(・・・)にだ≫


「だから、やつらとは───」


≪来るぞ、妻よ!≫



問い質す前に白き翼が槍の様に九十九へ襲い掛かってくる。リベリアも皇も意識はない。ただ後ろにいる何者か(・・・・・・・・)によって操られているのか、それとも乗り移ったのか。定かではないが、襲ってきたのはリベリアと皇の意思ではない。


しかし、襲い掛かる翼を迎撃する者が九十九の元に現れる。



「ヴァッカス!」


「クソガ────ぁ?お前女だったか?」


「事情があるのだ、事情がな」


≪なんだあの男は。殺してもよいか妻よ≫


「黙っとけヒノカグヅチ」


≪だって、我が嫁は我のだもん≫


「……何独り言言ってんだ?」



ヴァッカスに明確な敵意を示すヒノカグヅチであったが、九十九は溜め息を着くしかない。九十九は一言で黙らせようと言うのだが、ヒノカグヅチの声は九十九しか聞こえない。なので、端から見れば独り言を言っている様にしか見えないのだ。



「ほら」


「!」


≪ほぅ、これは中々の美女だが……やはり、我が妻には敵わぬなっ♪≫


「(ほんと、黙れよ)」



ヴァッカスが九十九へ放り投げたのは、気絶した女軍人である。何とか受け止めた九十九であるが、中にいるヒノカグヅチは女軍人の容姿に評価をする。けれども九十九にべったりであるが、何時気分で興味を無くし裏切るかはわからない存在なので正直信用ゼロだ。だからこそ、九十九はこの女軍人をヴァッカスに投げつけて返したのだ。



「!?ったく……いきなりなんだ。この女二人に、あの黒騎士(・・・・・)は!」


「なんだと!?」



直ぐに辺りを見渡すと、抉れていた大地の上に瓦礫が山積みになっていた場所が突然爆発するのだ。そしてモクモクと砂煙から現れたのは、かつて九十九も一度刃を交わした相手『黒騎士君』であった。けれども、今の黒騎士君はボロボロな姿。黒い鎧は所々欠けてしまっている。けれども、黒騎士君自体はまだまだ戦えそうだ。



「──────────!!!」



黒騎士君は、咆哮する。


リベリアと皇に向かって。


しかし、リベリアと皇は宙に浮いたかと思うと黒騎士君を無視して女体化した九十九をターゲットに捉えて右目に歯車の様なレンズが生み出して、それを通して見下ろしていた。



「ターゲット、ヒノカグヅチの吸収を確認。危険度"高"。神殺し(・・・)の能力を得ています。能力【伊邪那美(イザナミ)】:不明───崩壊を確認」


「ヒノカグヅチ───愚かなる母殺し(・・・)。まさか、被験体に接触し中に入るとは。これではあの方(・・・)の計画が破綻してしまいます。これは、由々しき事態」


≪……≫



まるで片言の言葉で発する様子から、まるで機械染みた感じもある。しかもどうやらリベリアと皇を操る存在はヒノカグヅチの事を知っているらしい。二人の発言に九十九は聞き捨てにならない事を聞き逃さなかった。



「被験体?計画?どういうことだ」


「Answer.被験体=九十九篝。計画───九十九篝の育成」


「要は土に植えた種に水をやる様に少しずつ少しずつ、あなたの成長させる為に何度も何度も(・・・・・・)絶望を、苦しみを、痛みを与え続けました。あの方(・・・)の目論み通り、あなたはここまで強くなりました」


「Excellent.当初は期待ゼロ。But.我々の想像以上」


「そろそろあなたという花を摘む時が近付いてきました。けれども、その時はまだ。まずは、あなたの中にいるヒノカグヅチを取り出します。その為にあなたには再び死んでもらいます」



リベリアと皇は白き翼の羽を鋭利な刃の様に九十九へ狙いを定める。確実に殺しに来ているのを理解していた九十九は、最後に二人へ問うように呟いた。



最初から(・・・・)、なのか?」


「Exactly」


「所詮、この駒(・・・)も作り物。あなたを愛したことも何もかも偽りに過ぎません。残念でしたね」


「そう、か……」



最初から。


つまり初めてリベリアと、皇と出会った時から仕組まれていたのだ。愛を誓った事も何もかも単なる演技だったのだと、九十九は理解する。それを知った今、九十九はこれまで何度も二人と結婚したことも、次は幸せにしようと思っていた事も何もかも滑稽に思えてきた。それと同時に、リベリアと皇だけではなく他のヒロイン達もそうだと考えれば……今まで自分がしてきた事は何だったのだろうか。



「───まあ、よい」



しかし、九十九は何も感じなかった。


どうでもよかった。


ただ、九十九が思うのはただ一つ。



「俺を殺す、のであれば───俺もそれ相応の対抗をさせてもらおう!!!」



戦い、そして死ぬこと。


目の前に降臨するリベリア?と皇?は己を殺せる可能性の塊だ。ヒノカグヅチの時は世界を巻き込もうとしているが、今回は単に自分一人の命を狙うだけ。これほどいい状況ならば逃す筈がない。


突如として九十九は身体から炎を出現(・・・・)する。それは、九十九の感情を現しているのかは不明。だが、その炎は普通ではない(・・・・・・)



≪なっ!?我の力が!?≫



その炎は、まさしくヒノカグヅチの力。しかし、ヒノカグヅチの意思ではなく九十九の意思によって反応しているのだ。それは、もうヒノカグヅチの炎を無意識に己の力にしてしまう。ヒノカグヅチ自身も驚いているが、更に驚くべき現象が九十九の身体に起こる。



「Why?異常事態発生」


「これは、ヒノカグヅチの?いえ、これは───」



九十九の身体に現した炎は、九十九の身体を包み込んだかと思うと白と紅の着物に変貌する。しかも羽衣も身に付けており、金髪の綺麗な髪も、熔岩が流れる様に紅く帯びていた。



「ふははははは!!!どうした、俺を殺すのではないのか!!!」



日本神話に現れそうな女神を体現した九十九篝だが、その勇ましい姿は神話や伝説の英雄そのもの。既にヒノカグヅチを己の物とした九十九は、その事に気付かずに力を解放している。左目からは黄金の炎を灯しながら力を顕現させていく。



「Analyze……!」


「なによ、これ……」



二人のレンズは見た相手の能力を視る事が出来る。本来は何でも解析出来るのだが、九十九の【伊邪那美(イザナミ)】の様な正体不明の能力も稀にあるのだ。だが、今の九十九篝の能力に新たな正体不明の能力が顕現していたのである。


それが────。



【神命:天照(アマテラス)



「Don't know.何故」


「まさか、人の身でありながら───神に成ったというのですか!?!?」



九十九篝は、無意識に、無自覚に、神となった。


能力の域を通り越し、一つの存在として確立させてしまったのだ。ヒノカグヅチ同様、火の化身よりも上位互換となる"恒星(太陽)の化身"である。



「何ワケわからぬ事を───」


『やめて!』


「む?」



突如、九十九と二人の間に一匹の竜が割り込む。その竜はリベリアの相棒であり、娘でもある賢竜ハーツであった。


ハーツはリベリアを背にして九十九が攻撃するのを止めようとするのだ。しかし、その声は届かない───聞こえない。【神命:天照(アマテラス)】と成った九十九はわざわざ邪魔をしてきたハーツを睨み付ける。



「キサマ……少しは賢いとは思っていたのだがな」


『やめて、パパ───ぇ?じゃなくて、えっとっ、パパ?えっ、えっと、とりあえず、やめて、パパ!!!』


「ギャンギャン煩いぞ」



ハーツは必死に訴えるのだが、九十九はそんな言葉を理解する事ができない。何か伝えようとしているのだけは理解しているのか、九十九は攻撃の手を止めてしまう。が、そんな隙を逃す程優しい相手ではない。



「愚かな子。お前もイレギュラーな存在。共に死ね」



リベリア?が右手を掲げた瞬間、その掌から天に向かって伸びる超巨大な大剣が出現していた。その大剣は大地を切り裂くのも容易い程の巨大さと鋭さを誇っている。


それが今、ハーツを巻き込む様に九十九へと振り下ろされたのだ。



「───馬鹿者!!!」


『わっ!?』



透かさず魔糸でハーツを操ってその剣の軌道から逃がす。そして目の前に迫り来る巨大な大剣に目掛けて、九十九は左手を翳したのだ。


その瞬間、何処から徒もなく烏が出現する。


しかも、その烏は只の烏ではない。


黄金の鱗粉を振り撒く、三つ足の烏。


八咫烏(ヤタガラス)


その【八咫烏】達が九十九が翳した左手に集い、一つの鏡となる。



「【八咫(やた)(かがみ)】!!!」



鏡───【八咫の鏡】次第に大きくなり、そこからにゅるり、と現れたのは迫り来るリベリア?が振り下ろした大剣そのもの。それが、互いに衝突し合い爆発的な衝撃波が生み出される。両者の大剣は罅割れ、そして崩壊していく。



「相殺しますか」


「狙いは俺だろう」


「Yse.標的確認」



九十九と対峙するリベリア?と皇?は完全に殺戮モードと化している。天使の姿をした悪魔、とはまさにこのことだろうか。殺す、という行為を全くなにも思ってない。


こんな状況の中、九十九の中にいるヒノカグヅチは焦っていた。



≪妻よ!!!今すぐやめよ!このままでは、己の力に呑み込まれてしまう!!!≫


「さあ、殺ろうではないか!!!無像無像共が!!!」


≪くっ!?我の声が、聞こえておらんのか!≫



既に九十九は【神命:天照(アマテラス)】の力に呑まれていた。既に力の暴走と言っても良いほどの状況だ。けれども、端から見てみれば何時もの九十九にも見えるだろう。だが、今の九十九は完全に狂戦士そのもの。九十九の心の中で、既に消えていたと思い込んでいた筈の"思い出"が砕け散ったのだ。


その"思い出"は、九十九にとっては紛れもなく大切だったもの。


証拠に、九十九は笑いながら戦っているが、その両目から頬に掛けて涙が溢れていた。彼にとって、単なる洗脳だと思っていたのだ。だからこそ、初めて出会い、そして共に愛し合った事までもが、全て嘘偽りだったのだから────。



「一つ、訪ねる」


「Here」


「他の……五人も、貴様等の仲間なのか?」


「Of course.我等七姉妹(・・・・・)。全て、あのお方(・・・・)の御意志のままに従う」


「ならばよい」



更に彼の心から罅が入る。


リベリアと皇だけでなく、全てのヒロイン達も同じだった。


愚か。


実に愚か。


上手いように利用され、良いように動かされていた単なる間抜けだと九十九は己を嘲笑う。あの時の愛は、本物だった。紛れもなく、心の底から愛していた。彼女を、妻を。


けれども、どうだ。


最初から、目の前にいる二人だけではなく七人全員だときた。だが、これで漸く九十九は改めて決心する。ヒロイン達は、自分達の敵だ、と。そして今のリベリア?と皇?を見てみれば、己を殺せる可能性であること。それこそが、九十九か求めていたものだ。



「では、始めるか────ふっ!!!」



九十九は、己の感情を振り払って、左手を握り締めそのまま大地へ殴り付ける。今の姿の九十九の細い腕でも大地を軽く割れる程の威力ではあったが、それだけでは終わらない。


殴った箇所から広範囲に、地面が罅割れ、鼓動したかと思うとその裂け目から炎が噴出するのだ。そしてその炎は生きている様にリベリア?と皇?を取り囲む。



「Interesting.」


「二人相手に勝てるとでも?」


「やってみなければわからぬだろう?」



【神命:天照(アマテラス)】と成った九十九とリベリア?・皇?の戦いは更に過激さを増していく。


しかし、九十九は知らない。


リベリア?と皇?は、本当のリベリアと皇ではなくただ操られているだけであり、本当の彼女等は既に作られた駒ではなくなっていることに。そして言葉も発する事も許されぬ二人は、ただただ悲しみ・嘆く事しか出来ない。


しかし、それに気付く事もないだろう。


九十九も九十九で、【神命:天照(アマテラス)】という神そのものの力によって意識がほぼ失われてしまっているのだから。あるのは戦いを求め死に行く女神の姿をした英雄。どちらが勝とうが負けようが結果的に絶望的な結末が訪れるのだろうと、誰もが想像出来る事態へ発展してしまうのであった。







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― 新着の感想 ―
[一言] つまりヒロイン以外を選んどけばよかっただけの 話だという事ですか。ヒロインが全員、自殺した場合 手駒が無くなるんですがその場合どうするんでしょう?
[一言] これ大丈夫かな。風呂敷広げすぎてない? 大丈夫だろうなぁと思いつつ、前書きにエタるかもという不安を感じた(苦笑) 殺しあいかぁ、ヒロイン二人は意識あるんですよね。面白そう。他の五人とも殺しあ…
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