九十九篝は、○○化する。
⚠️注意!
タグ一つ新たに追加しました。
それを確認した上で、問題が無ければ御覧ください。
ではっ、どうぞ♪
"原初の火"ヒノカグヅチによる『太陽の息吹』は全てを消滅させるまさしく太陽の業火球。天も大地も燃やし尽くす力は例え『五大属性』を持ってしても防ぐのは不可能だ。ヒノカグヅチもこの一撃で九十九が即死したと思っていただろう。
だが───。
≪───なに?≫
『太陽の息吹』は何かとてつもない力によって、消滅されてしまったのだ。ヒノカグヅチは焦りはしないものの、むしろ興味深く『太陽の息吹』を吹き飛ばした相手を確認する。
モクモクと煙が晴れたその先に───。
この世とは思えぬ程の、絶世の美少女が降臨していたのだ。
金髪の髪は黄金に輝きそれと同じく狐の耳に九つの尻尾がゆらゆらと揺らめいていた。そして小顔で整った容姿は、男女関係無く魅了してしまう程に凛々しい。それに相応しく、手足は長くすらりと延びており、華奢な身体付きにも関わらず力強い雰囲気を放っていた。
「……うむ。問題なさそうだ」
≪───なんと≫
「何を驚いているヒノカグヅチ。貴様と戦う為に、変身してやったというのに」
この絶世の美少女───正体は、九十九篝である。元々女の子の様な華奢で愛らしい男の娘であったのだが、性別が変わった瞬間女性としての魅力は倍増されている。
ヒノカグヅチは、女となった九十九篝を魂が抜かれたかの様に絶句してしまう。しかし、意識を取り戻したヒノカグヅチは更に身体中の陽炎を燃え上がらせながら九十九へ目を向ける。
「なんだ?」
≪おぉ……美しい。我が伴侶なれ≫
「あ゛?」
当然の反応である。
女となった九十九は声も少し高くはなっているものの、ヒノカグヅチの唐突な発言に低い声で応えてしまう。しかしながら今の九十九の姿は、容姿だけでなく魂までもが神々を魅了してしまう麗人なのだ。
≪不満か?≫
「───ハッ!何を言うかと思えば……阿呆め、と言いたい所だが、いいだろう」
≪ならば───≫
「しかし、だ!」
九十九は身体中から見えないオーラを放出させながら、ヒノカグヅチを前にして武術の構えを取ったのだ。その麗人は、可憐ではあるものの、その目は一瞬ヒノカグヅチまでもが気圧されてしまう程、鋭く、恐ろしく美しい。綺麗な薔薇には棘がある、というのがまだ生易しい程だ。
「この俺を倒してからだ、わかるだろうヒノカグヅチ」
≪よかろう!!!≫
ヒノカグヅチは長い尻尾を九十九に絡めて拘束しようとするのだ。が、その前に九十九は迫ってきたその炎の尻尾を、その手で掴んだのだ。
≪!≫
「炎なぞ掴めん、という常識は───この俺には通用せぬぞ?」
【伊邪那美】
これが、九十九が使用した能力である。
対『五大属性』の力で、今火そのもののヒノカグヅチの尻尾を掴んだのがいい例だ。常識的に火や風等を掴めないものを、掴んでしまう・触れられるのだ。それは霊でも妖精であっても同じ。殺す事ができるのである。
「さて───まずは、一発ッ!!!」
九十九は、炎の尻尾を握り潰したかと思うとそのままヒノカグヅチに向けて殴ったのだ。距離はかなり空いているにも関わらず、九十九より放たれた拳からは空気砲が発生し、ヒノカグヅチに襲い掛かった。
≪ぐっ、ぬぅ!?≫
本来、ヒノカグヅチは火のそのものだからこそ痛覚等無い筈。だが、それを起こしてしまう要因が九十九篝の【伊邪那美】の能力にはある。女の姿になったとはいえ、侮るなかれ。この【伊邪那美】は破格の力である。何度もループしている中で、編み出した技の偶然の産物。これこそ、"異能破壊"・"掟破り"とも呼べる力だ。
「ふはははは!!!そんなものではないだろう、ヒノカグヅチッ!!!」
≪当然だ、未来の我が伴侶よ!!!≫
そして、九十九篝とヒノカグヅチ。
両者は一歩も引かぬ、大地を揺るがし、天をも狂わせる激突を繰り返し続けるのであった───。
▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼
『パパが……』
賢竜ハーツは、【伊邪那美】の能力の副作用として女となってしまった九十九篝の姿を目の当たりにして、困惑が隠せなかった。しかし、それよりもリベリアの方が驚愕していたのだ。何度もループしている中で、九十九が女になるなどという展開は一度たりとも無かった。
自分達が知らない九十九篝。
何度もループしている中で、今回の九十九篝は変わっていた。
何もかもが。
「これはっ、どういうことですか!」
『!』
「あなた、は───」
リベリアとハーツは九十九が見える位置まで避難していたのだが、そこに一人の使用人が現れたのだ。
リベリアとハーツが知らぬ筈もない使用人の女性───皇奈瑞菜であった。リベリアの顔を見た皇は一瞬驚愕の満ちた表情を表に出してしまうが、直ぐにそれをしまう。けれども、二人が二人単なる知り合いで終わる訳がなかった。
「リベリア・ルル・ミラルーク───!」
「皇、奈瑞菜───!」
両者は一触即発が起きてもおかしくない雰囲気である。互いが互いを恨み・妬み・憧れた同士なのだから。そして何度もループしている中で、愛する人を裏切った同士でもあったから。
「その様子では、覚えていますねリベリア」
「無論だ、皇奈瑞菜」
何故二人は互いを知っているのか。
それは知ってもおかしくはないが、二人───というより、九十九篝を愛していた七人は一度は協力相手でもあった。かつて九十九篝の妻であった自分達が共闘したのだ。けれども、その結末は悲惨なもの。
本当は、覚えてなどいなかった。
まるで、かつて協力し合った七人の誰かと話そうとすることが魔法が解かれる鍵の様に思い出したのだ。七人で九十九篝を守り、九十九篝のハーレムになろうと、成そうとしていた。誰一人協力を惜しまずに力を合わせてきた。
だが、結果は────。
協力し合い、九十九篝と徐々にいい関係になっていった矢先に全員あの男の奴隷となり、あの男のハーレムとなってしまった。要するに全員一気にNTRたのだ。
誰一人、九十九篝と恋人になることも叶わず。
そして、色んな所で九十九篝に見せ付ける様にあの男と偽りの愛を人目を気にせずに育んだ。九十九篝はそんな自分達を止めようとしたが────彼は、殺されてしまった。
国に最凶最悪と呼ぶべき、『五大属性』の水と地をどちらも行使出来る化け物が『暇潰し』に襲撃してきたのだ。あの男のハーレムとして動いていた彼女達は、命を狙われる。けれども、九十九篝が乱入してその化け物を止めたのだ。そして自分達を逃がして、その化け物と戦闘を繰り広げたらしいが───死んでしまった。相手の化け物もどうなったかはわからない。
しかし、九十九篝によって救われたのだ。彼女達七人も、国も。
それから、彼女達はあの男によってこの時の記憶を封じ込められつつ、無意識に協力をすることはなくなったのだ。再び、同じ結果になってしまうと理解して。考えてみれば、これはあの男からの警告のようなもの。どんな手を使おうと、あの男から逃れられぬということを再認識させられているような感覚であった。そして、自分達がどんな手段を打っても九十九篝を裏切ってしまう、と。
今更こんな事を思い出して、リベリアも皇も血の気が失せたかのように顔を真っ青にしてしまう。ハーツからすればその出来事は知らぬこと。『???』という感じである。
「篝様は───」
「それが……」
リベリアの向いた方に皇も目を向けると、狐の美少女がヒノカグヅチと戦っている姿があった。しかし、その狐の美少女の容姿と、そして服装が朝見送った九十九篝とあまりにも似ている。唯一違うのが九つの尾に、服の上からでもわかる大きすぎず、小さすぎない綺麗な胸だ。
「まさか」
「そのまさかだ。今戦っている女性が、九十九篝だ」
「───」
言葉に出来ず絶句してしまう皇奈瑞菜。
皇は直ぐに助太刀に向かおうと九十九の元へ行こうとするのだが、その前にリベリアが手を掴んで止めてしまう。血相を変えている皇はもう若干パニックになって、九十九の助太刀にいくことしか頭にはなかった。
「私達に、何が出来る」
「でも!」
リベリアは九十九に出来る事など無いと理解していた。だからこそ、皇が戦いに加わってもむしろ足手まといになり状況を悪化させてしまうのだ。それほど、自分達の戦力が───九十九篝にとって、何とも無力でしかないと物語っている。
皇は反論しようとしても、リベリアは事実を述べていた。反論出来る理由もない。ただ、あの方の力になりたいという思いさえ彼にとって邪魔でしかならない事を嘆くしかなかった。
このまま、ただ黙って眺めているしかない。けれども、もし九十九の使い捨ての盾にでもなれるのならばそれでもいいと思っていた。
だが、そんな彼女達の前に立ちはだかる存在が現れる。
「…………」
全身が漆黒に染まった鎧を纏う存在。
鎧から微かに黒き炎を噴き出しながら、リベリアと皇の前に現れたのだ。九十九篝が『黒騎士君』と命名した存在は、彼女達を九十九篝の元へ行かせまいと通せんぼをしている。
「報告で聞いている。九十九篝に襲い掛かった騎士だな」
「あれが───」
『許さないっ!』
「───────ッ!!!」
黒騎士君は咆哮を上げる。
怒り・憎み・悲しみを混ぜ合わせた痛々しい声でリベリアと皇、そして賢竜ハーツに襲い掛かろうとするのだ。が、謎に満ちた黒騎士君は大地を踏み込んだ瞬間に、トップスヒードで距離を詰めようとするのだが、新たな横やりによって吹き飛ばされてしまう。
「ったく……ただならぬ気配がしたと思えば」
「何者だ!」
「!」
「黙ってろ、ガキ共。先にソイツを片付けてからだ」
ヴァッカスは片手に銃を構えながら、吹き飛ばした黒騎士君が起き上がるのを確認しながら次々に撃っていく。反撃の隙を与えないように。リベリアはヴァッカスが救出した女神官の姿がない事に気付き指摘する。
「彼女はどうした」
「既に部下に任せて避難させてる」
ヴァッカスの部下───つまり、秘密組織『黄梅』である。彼等と合流し、状況説明をした後に女神官を任せ、今の状況も国に伝えていったのだろう。ヴァッカスは撃ち終えた視線の先に無傷の黒騎士君の姿を黙視していた。
「(なんだぁあの鎧。呪い、か?)」
黒騎士君が装備する漆黒の鎧に興味を示しながらもう一つの銃を取り出して不敵な笑みを浮かべながらヴァッカスは、最強クラスと呼ばれる彼は本気で黒騎士君を仕留めようとするのであった。
篝さん、副作用で女の子になっちゃいました(笑)
そしてリベリアと皇に関しては……うん、そういうとです。主人公が色々失敗した中で、その事も含まれています。
ハーツ……君は、どうしようかな?