九十九篝は、状況を確認する
お待たせしました。
さてさて、どうしたものか。
何故リベリアがいるか、と疑問に思うのは不要か。彼女は正義感溢れる、まさにヒーローだ。国の危機に逸早く気付いて、逸早く向かう。相変わらずだなぁ……。
「何者だ、お前は」
ぉん?
誰だ、あの美女。けしからんな、その胸!そしてミニスカから見える生脚!!!
是非共、今夜一度共に───とナンパしたい所だが、現状が現状だ。リベリアが誰かと戦ってるな───なんかでかい火の塊が火山から吹き出したぞ、とか目撃しつつ神殿内部へとこっそりヴァルカンと潜入していたんだ。勿論、【千里眼】で女性が複数の野郎共に犯されていたけど、とりあえず野郎共の首チョンパ。女性は無理矢理犯されて、助けた後も泣きじゃくっていたけどヴァッカスが気絶させて出てきたのが今である。
「おい!」
でも、なーんかムカつくな美女軍人よ。
凄く堅物というか、気が強いというか……。
身体つきは軍服から見てもエロいんだけどね。
そんな事より、問題は火の……龍?鳥?どっちだ、あれ。何か───火そのものじゃない?やべぇじゃん。しかも離れていても分かる肌が焼けそうな熱気はヤバいオーラを感じられるよ。
……そうか、『五大属性』の火を司っているんだな。まじかよ。ゲームのガチャシステムで0.01%よりも更に低い排出レベルだぞ!?てか、何度もループしてるけど、『五大属性』の火を司る奴って初めてだよ!?唯一知るのは国の第二王女様と王国宮廷魔導師長が"風"が使える位か。因みに第二王女さんは、これまたヒロインの一人であり、一つ下の後輩。NTRて何度も風の刃で首チョンパだぜ?……これは関係ないな、今は。
それよりも、『五大属性』って何ぞや!?ということなので説明しよう♪
『五大属性』とは、『火』・『水』・『風』・『地』・『空』の五つの属性のことだ。しかもその『五大属性』というのは魔法の中で最上位能力。
そもそも魔法には三つに分けられて希少が高い方から『属性魔法』・『具現化魔法』・『補助魔法』がある。『属性魔法』だけでも希少が高いのに『五大属性』は更に希少なのだ。例えるなら『属性魔法』を持つだけで国宝級。『五大属性』は世界級だ。
生憎、俺は『五大属性』や『属性魔法』等そんな大層な魔法は持ち合せていない。あったらあったらで最初から最強チートまっしぐらだ。
辺りを見渡した感じ、火の龍?鳥?を拘束しているのは目の前の女軍人の能力だろうな。『五大属性』の一つ、水を司るか。相性は……女軍人の方が有利だな。相性だけなら、な。
「!?」
火の龍?鳥?が咆哮した瞬間、拘束していた水の大蛇は一瞬にして蒸発してしまう。いやまあ、そうだよね。だって相手は『五大属性』の一つ。『火』そのものなのだから。
大抵の相手は、首を飛ばすなり心臓を貫く、又は脳天を吹き飛ばせば幾ら『五大属性』の使い手であろうとどうとでもなる。けれども、火そのものであるならば対抗策はほぼ無いだろう。
「面白いではないかっ」
そんな奴こそ、俺が追い求めていた相手。
にしてもモンスターなのか?
それはどうでもいいか。
さぁて、全く見向きもしない火の化身さん。俺と戦えよ。殺し合おうぜ?
お前の力は大体理解している。
"火の概念"そのもののお前は強大だ。何度もループしたが、お前程の力は見たこともない。何せ女軍人が操る水は自分の範囲と先程蒸発してしまった水の大蛇のみ。だが、相手は辺り一面を支配している。
天も、地も。
桁外れにも程々があるだろう?
今まで相手してきた敵が笑える位に、あの火の化身は壊れている。しかし、俺はその火の化身に向けて全身全霊の殺気をぶっ飛ばしたのだ。まるで空気の大砲だ。旋風を起こし、火の化身の顔面を吹き飛ばす。
……いやん、俺強すぎぃ?
≪何者だ、我を眠りから覚ます者は≫
あ、顔面復活した。
なんだ、喋れるのか。
まあ、これから戦う相手だ。
名前だけでも聞いておくか。……え、女軍人には聞かないのってか?必要以上の名前は覚えたくないんですよ。そもそも今俺が何をしているのか察知していない時点で、聞くに値しない。
「俺の名は九十九篝。火の化身よ、貴殿の名を聞かせてもらおうか」
≪我の顔面吹き飛ばしたのは主か……獣人。まさか獣ごときに目を覚まさせられるとはな。よかろう、我が神名は"ヒノカグヅチ"!この世の始まりの"火"であり、神々を恐れさせる"神殺し"である!!!≫
「ヒノカグ、ヅチだと……?」
その瞬間、数ヵ月前に馬鹿ドラゴンの言葉を思い出した。
『───"セクメト"・"ヒノカグヅチ"・"オルクス"・"クロウ・クルワッハ"』
『昔、大婆様から聞かされた話にその者等には一切手を出すな。目覚めさせるな、と言われてな。詳しくは知らんが───』
────あぁ、そうだ。
文献にも何もかも調べてみたが一切見つからなかった名だ。
"ヒノカグヅチ"。
よもや、この場で出会うとはな!!!
「本当に強いのか?」
≪あまり大口を叩くなよ獣。キサマごときにこの我を倒せると思うてか≫
「さてどうかな。やってみなければ分からぬだろう?」
≪ほう?≫
おいおい、まだ本気じゃなかったのかよ。
さっきより更に力が倍に上昇したぞ?
「おいっ!狐の者!」
あ~、まだ居たのね女軍人ちゃん。
なになに、私の獲物取らないで~ってか?
そんなレイピアを構えて……しかも『五大属性』の水で生み出した竜で食い殺す気かね?だが、残念だよ。君がもう少し辺りに警戒してくれれば多少は楽しめたのかもだけど、ヒノカグヅチと戦う前の前菜にもならない。
「ぐっ、からだが──?」
無論、俺の魔法さ。
『具現化魔法』の一つだけども、彼女の身体は俺の魔糸で身動きが取れない。手も足も、指も頭も首も。全て拘束してもらっている。
まあ……邪魔だな。仕方がないけど、頼もうか。
「ヴァッカス、その女を連れてここから離れておけ」
「クソガキ、あれと戦うのか?」
「無論だ。あれほど面白い奴など早々におらんだろう」
「……俺が手を貸して──」
「許さんぞ?」
「はぁ……ったく」
ヴァッカスはため息交りで眠る全裸の女神官を連れて離脱する。まあ、俺に何を言っても無駄だと思っているんだろうな。
実はヴァッカスさんはめちゃくちゃ強いキャラの一人だ。と、言っても仲間になる訳がなく、むしろ敵側として登場する。けれども、敵は主人公なのだけど。ヴァッカスさんと戦うには条件があって、商店のアイテムを強奪を三回してしまうと現れるのだ。そしてほぼ即死技でぶち殺されるので、これがある意味バッドエンドの一つ。勝つことは不可能。死ぬのは確定である。
……ヴァッカスさんと戦わないのかって?
バァかなこと言っちゃぁいけねぇよぉ。
確かに俺を殺せるかもしれない強者と戦うのが目的だが、戦う気もない者とはやり合うつもりもない。と、いうか戦えば周りに被害が出るし、人に迷惑をかけてまで殺し合いはしないさ。
それに、同じ料理仲間だからなー。
ヴァッカスと初めて出会ったのって料理教室だからね。暇潰しに行ってみればマフィアのボスみたいな人が料理してるから流石に驚いたわ。なんかそこから仲良くなって、採取した薬草とか色々高値で買取してくれるから助かってるのサ!しかもちょこちょこ依頼出されるから協力したりもする。
ま、そんな事は置いておいて次はっと!
「わっ!?」
お次はリベリア。何ほぼ裸なんだよ。エロいわ、くそが!服だけ溶けるスライムに襲われて下着まで見え───いや、下着も半分燃えてんじゃん!とりあえず、魔糸で俺の元に移動させて上着を着させる。パーカーなんだけど、許してよねっ!
「え、あの……」
えー、何でもじもじし出すのサー!
控え目に言って───可愛いけども!
「女、そこの女軍人を連れて賢竜と共にここから離れよ。いいな?」
「でも───」
≪話をしている暇はあるのか?≫
その瞬間、ヒノカグヅチから灼熱の山を貫く光線が放たれる。俺はリベリアを抱えて強引に賢竜と女軍人を魔糸で引っ張ってその光線を回避する。
やべぇやべぇ、あと少しで消し炭だぜぇおい。
リベリアはリベリアで何か言っているが、どうせ学生を守るのが~等々を言うつもりなのだろう。けれども、そんな格好じゃ無理でしょ。────流石に何度もNTRたかつての妻には興奮とかしないけど。
「邪魔だ、女。さっさと───」
「はな、せ────」
「ふんっ!」
とりあえず、女軍人眠っとけ。うっさいわ。
「こやつもついでにだ。ここにいられると純粋に邪魔なのが、わからんのか?」
「っ!───わか、った……」
そう言ってリベリアは気絶させた女軍人を抱えて賢竜と共に空に飛び立つ。
よぉぉぉしぃ!
≪キサマ一人で戦うと?≫
「不満かヒノカグヅチ」
≪……まあよいか。しかし、獣風情に何処まで保てるだろうな?≫
「!」
鷲の様な口を開いたかと思うと、巨大な火の塊───いや、あれはもう太陽そのものだ。おいおい、さっきの灼熱光線より桁違い過ぎるだろ!もう暑すぎて辺りにあるもの全てが燃え、溶けている。『火の神殿』に関してはオベリスクとかその他もろもろ溶解して原型がないぞ!?
あっちぃんよぉ!?!?
≪所詮は口だけか。消えよ、獣≫
回避しか───と言いたいが、避けたら国に一直線なんだよなぁ!狙ってる?ねぇ、お前狙って放ってるのかよ!
ったく、ちんたらちんたら、避けてばかりじゃぁいられねぇよなぁ!!!
「すぅぅ────」
ヒノカグヅチのブレスは、間違いなく俺の糸や鎖では防ぐことは不可能だ。良くて軌道を逸らすことくらい。けれども、それが今できるのも疑問だ。あまりにも相性が悪すぎる。糸も鎖も、既に燃やされた。
今の俺の能力では、勝てない。
───今の状態では、な。
さてさて、皆様ここで問題です。
何度もループしていて、何度も戦争で戦って。
絶対勝てない相手にも戦って。
何も編み出さなかったのでしょうか?
答えは、勿論一つ編み出したさ!『五大属性』の一つ、水と地を同時に操る最強最悪の裏ボスキャラを倒せる技!!!
────しかし……これは、その、な?
デメリットが一つ、存在する。
けれども、四の五の言っていられない状態だ。
正直、あまり進まないけども、な!
よしっ、やるか!!!
次回
九十九篝VSヒノカグヅチ
感想・評価ありがとうございますm(__)m