九十九篝は困惑する
おまたへ☆
感想・評価ありがとうございますm(__)m
修羅場は控えめでした、ごめんちゃい(;>_<;)
何だ、コイツは。
それが今の俺の心境であった。
全身、黒き鎧姿のソイツは鎧から闇の様な炎を噴き出し、叫びながら俺に殺気をぶつけてきたのだ。
今まで何度もループしてきたが、あんなキャラは知らない。敵国にもこんなキャラクターは見覚えがない。むしろ、あんな奴が居たら直ぐにわかる筈。
どうなっている……?
敵キャラだけでなく、ラスボスや裏ボスにもこんな奴はいない。似ているモンスターもいないのだ。
だが、一つだけわかることがある。
────目の前の奴を、ここで消さなければならない、と。
不思議と心身共にそうしなければならない使命感があった。物語は何時も一年後に始まっていたのに……。まさか、何度もループしている内にゲームで言う"バグ"みたいなものなのか?
まあ、いい。
シャルロットとの戦いは拍子抜けだった。
楽しみにしていたこの高揚感は、完全に不完全燃焼に終わってしまうところだったから。
むしろ、俺に対して肌がピリピリさせる殺気を放てる者は中々の実力者。明らかにシャルロット───いや、このコロシアムにいる誰よりも、強い。
だが、念の為に試してみよう。
「え?」
俺は魔糸でシャルロットに浮かぶダイヤモンド五つを絡め、そして自分の魔力を送り込む。元々そのダイヤモンドはシャルロットの魔力が入っていたが、それを押し出して俺の魔力に染め上げる。そして残り一つだった俺のダイヤモンドはシャルロットのを頂戴して六つとなった。もう競技は続けても仕方がないからね。
「さて」
俺は更にダイヤモンドに魔力を送り込み、輝きを増していく。それと同時にダイヤモンド自身の形を作り変えるのだ。極限までに魔力を流したダイヤモンドは熱されて柔らかくなった鉄の様。それを俺は水晶の様に五つとも球体にしたのだ。
そして今にも破裂しそうな程の魔力を流した水晶を、あの黒騎士君(俺命名)に向ける。
「もう一度問おう。キサマは何者だ?」
「…………」
黙りかよっ。
大体察してたけど、ホントに何だコイツ。
と、思ってた矢先に黒騎士君は右手にいつの間にか握られていた黒い剣を俺の顔面に向けてぶん投げてきたのだ。それは一瞬のことだが……いゃぁ……俺じゃなきゃ、見逃しちゃうねっ♪
ギリギリで顔を反らして避けたけど、頬カスった。勿論油断していたけれども、気を付けないと!
「───いいだろう。ならばそれ相応の御返しをしなくては、な!!!」
攻撃してきたのはそっちだぜ、黒騎士君。
頬をカスっただけだが、お前が俺を殺す気満々なのは理解した。ならば宜しい、戦闘だ♪
浮遊する水晶の膨大な魔力を黒騎士君に向けて太いレーザーを放っていく。六つ一変に放ち、弾丸の様に次々撃っていくがどんな反応をするのだろうか。
「───!」
黒騎士君はまた黒い剣を出したかと思うと次は二刀流である。若干、日本刀っぽいのだけども己は武士か何かなの?あ、ちゃうわ、薙刀だわあれ。刀身が長いから勘違いしてたけど、柄も長い。しかも持ち方が日本刀みたいだから間際らしいわ!!!
いやまて……?
あれは薙刀というより、"長巻"とかいう武器じゃなかったかな?
しかもその扱いづらそうなその武器を難なくと使いこなして俺が撃ったレーザーを悉く防ぎきっている。周りからは爆音と爆発で具体的にどうなっているかわからないみたいだけど、俺には【千里眼】がある。うん、便利♪
「─────ッ!!!!!」
全てを防いだ黒騎士君は、俺に向けて咆哮を放つ。しかもその咆哮は俺以外にも被害を与えるものだ。と、いうかラスボスの技の一つ【最果ての咆哮】じゃねーか!!!
【最果ての咆哮】───相手を高確率で1から3ターン、行動不可にさせた上にスタンさせた相手のステータスをも同じターン数下げられてしまうヤバい技。
ラスボス戦なら繰り返していると予備動作があるけど、唐突すぎるよ黒騎士君……。でも、今の俺には五月蝿い位にしか効いてないけどビックリしたよ、やるねぇチミィ。
しかし、俺以外はほぼ行動不能だ。
シャルロットも耳を塞いで座り込んでいる位だしな。
「────!!!」
へぇ、そのまま突っ込んでくるか。
何の躊躇も無く、その場の空気まで吹き飛ばしてしまいそうな突撃は気圧されるものがあるのかもしれないが、俺からすればこんなに強い奴が自ら仕掛けてきたのだ。楽しいったらありゃしない。
ま、馬鹿正直に突っ込んで来るなら……態勢を崩してみるか。
「フッ!」
俺は右足を一歩踏み込んだ瞬間に【震脚】をする。これは"八極拳"の技の一つだが、前世では一通りの技を教えられただけで達人とかそういうのではない。が、唯一まともに体術で戦えたのが"八極拳"だった。けれども、俺は何度もループして恐らく本当の"八極拳"ではないかもしれないが自分なりにアレンジしてきたんだ。
この"震脚"だってそう。
俺の【震脚】は、己が立つ大地を広範囲に揺らす。しかも相手からすれば突然突き上げられたかの衝撃を襲い、態勢を崩す技。本当の【震脚】はこんなことにはならないけど……なんか、ごめんなさい。
態勢を崩した黒騎士君に目掛けて、魔力の流しすぎで今にも破裂しそうな六つの水晶となったダイヤモンドをぶつけていく。まあ、当然大爆発が起こるんだけどもね。
しかし、それを避けるかぁ……。
左右に避けるのではなく、先に二本の長巻を投擲して水晶を突き刺して相殺した上に桁外れな跳躍力で真上に飛んだのだ。身体能力は俺と同じ位、かな?にしてもただ突っ込んでくる猪の様に野生染みたところがある。恐らく何にも考えず、ただ俺を殺そうとしているだけ。細かい事は全く気にしてないな黒騎士君よ。
「───!!!」
何度叫べば気が済むんだよ。
次は……えーっと、両手剣クレイモアか。俺を真っ二つに斬ろうとしているのかね。しかし、だ黒騎士君。そんな大振りに両腕を上げてはいけないな、隙だらけ。
「馬鹿め」
俺はギリギリのタイミングで黒騎士君の剣を避けて、がら空きの鳩尾に向けて【発頸】でぶち込む。掌で放った【発頸】は黒騎士君が身に着ける鎧を押し潰れる感覚はあった。黒騎士君は何も考えず馬鹿力と速さのみで技術的なものは欠けている。だからこそ、俺はそこに体術で突いたのだ。
「ガ───ッ!?!?」
流石に急所はキツイだろう。
俺はそのまま【発頸】で吹き飛ばしたのだが、黒騎士君は態勢を立て直すものの鳩尾という人の急所は効果抜群だったらしい。鎧では解らないが、恐らく苦痛の表情に染まっているだろう。その証拠にふらつきが見える。
しかし、相手はまだまだヤル気だ。
いい。
実にいいぞ!!!
さてさて♪
正直、鳩尾を食らってもまだ立てるなんて……今までにはいなかったぜ?どんなループでもこの技を諸に食らえば超人だろうが、モンスターだろうが地に伏していたんだ。
あぁ、黒騎士君!!!
お前こそが、俺が求めていた───俺を殺せる者かッ!!!
もう、周り等どうでもいい。
さあ、さあさあさあ!!!
始めようじゃないか、俺達の闘いを!!!
「!」
「ハッ!」
俺と対峙する黒騎士君に蒼天の矢が被弾する。しかし、そんな矢は黒騎士君にとって、手で払うだけで弾き飛ばした。黒騎士君は今まで俺のみを見ていたが、矢を放った人物───シャルロットに顔を向けたのだ。
…………おぃ。
マジ、かよ。
お前、さぁ……。
何やってくれんだよ、シャルロットよぉ!!!
俺と、黒騎士君の戦いに横槍を入れんじゃねぇよ!!!
「篝く───」
「───!!!」
あ゛~~~、くそっ!!!
次は俺ではなく、シャルロットに向けて闇の剣を新たに生み出して突撃していく黒騎士君。俺はここでシャルロットに戦いの邪魔をした怒りをぶつけてしまいたくなるが、黒騎士君も黒騎士君だ。狙いは俺だけじゃねーのかよっ!
「仕方があるまい!」
「きゃっ!」
俺は直ぐにシャルロットを抱えて叫びながら突撃してくる黒騎士君から離れて回避する。思わずお姫様抱っこであるが、正直このまま手を離して落としたい。
俺、おこだからね?
激おこプンプン丸だかんなっ!
まあ、俺も事前に手を出さぬ様に言っておけばよかったな。次から釘を刺しておこう、いやマジで。
「あ、あのっ、か、かがりきゅん……」
何が"きゅん"じゃ、ボケぇっ!
何顔を真っ赤にさせてんだよ、状況わかってんの?しかも何その初そうな反応。初めて見たんですケドー……前はこんな反応してたっけ?涙目で上目遣いとか───どんだけ、俺嫌いやねん。そこまで嫌がるのは……ま、どーでもいっか。俺には関係ねーしっ♪
「───……」
黒騎士君?
え、どったの。
何剣を下ろして殺気消してんの!?
何か帰る雰囲気出てません!?
叫び声も何か弱くなってない?
「……」
俺とシャルロットを眺めていた黒騎士君は何やらヤル気を無くしたかの様に黒き炎を弱めながら背を向けて何処かへ行こうとする。いや待って、待って下さいマジで。
「おい貴様、何処へ行く気だ!!!」
「……」
黒騎士君は背を向けたまま炎と共に消え去ってしまう。
……マ?
いや、嘘ぉん……やっと全身全霊戦って俺を殺せるかもしれない運命の人と出逢ったのにぃ。運命の人、だったのにっ!!!
……全て俺の落ち度だ。シャルロットが横槍を出してきたから怒って、興が覚めたのだろうか。
あ~……ちくしぅ……。
「篝君」
「……なんだ、女」
何時まで私に触ってんのよっ!?でも言いたげな冷たい声だな。てか、お前が余計な茶々入れるからだわ、あほっ!本当に黒騎士君、カムバ~ック。
「それ、どうしたの?」
「?」
それ?
何俺の乱れた服を見て…………あ゛。
服が乱れている、理由ですね?
それは、ですね……。ギャル達とこの試合ギリギリまでハッスルしてまして、その……急いでシャワーを浴びたんですよぉ。そう言えば、ギャル達に首や肩にキツく噛まれたからな。しかも血が出るのは当たり前で、くっきり痕が残っている歯形をシャルロットがジーッと見ていた。
「それに、女の匂い。しかも一人じゃない……篝君、これどういうこと?」
……いや、ごめんさい。
試合直前までハッスルしてたら、そりゃー怒るわな。
にしても匂いで解るとか……ある意味エスパーだな!
「ねぇ……何シてた、の?」
「キサマには関係なかろう、女」
「へぇ、ヤってたんだ。酷いなぁ……」
はい、仰有る通りです。
戦う直前までハッスルするのは自分でもどうかと思いました。確かにムカつくけど、シャルロットからすれば怒るのも当然だ。けれども、俺も怒ってるからな?
俺は抱いていた手をシャルロットから離すのだが、シャルロットは怒りの目をしながら俺の服を掴む。いや、そこまで怒るか普通。まあ確かに俺は女の敵なのかもな。複数の女性とハッスルしてるから、同じ女としてシャルロットは許さないのだろう。
「誰なの」
「なに?」
「その女、だれ」
……うん、やめて?
ギャル達と関わらせると嫌な予感する。多分俺みたいな屑野郎と関わらせない様に説得するつもりか。一応俺達はそういう関係で割り切ってるからな。と、いうかそんな事言わなくても近い将来他の男に行くでしょ。
それに、もう会うことは無いだろうからさ。
あの御弁当で引いて、俺と関わる事は無いだろうからね。
もうギャル達とはお別れなのさ。
シャルロット、お前が心配する必要はない。
「ねぇってば!!!」
「五月蝿いぞ、女」
もうここにいる必要はない。
さて、家に帰って夜は着替えて風俗街へ向かうとしよう。
う~んっ!楽しみッ♪
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