日替わりランチと翼のない会社員
俺に翼が生えてたらー。
こんなくっそつまんない世の中を見限ってどこまでも飛んでいくのにー。
「何言ってんだお前。生姜焼き冷めるぞ?」
同僚が冷めた目しながら俺の生姜焼を一枚横取りしていった。
くっそ。
早く食べよう。
むすっとした顔を隠しもせずに日替わり定食のプレートに視線を落とした俺。
生姜焼が消えて、開いていたスペースにトンカツが一切れ。
「それ、やる。」
優しいんだよな。
今日だって、仕事がうまくいかず落ち込む俺を気遣ってランチに誘ってくれたであろう同僚。
俺よりも要領がよくて、仕事にそつがなくて、正直かっこいい。
俺が日替わりランチを注文した後に、あいつがトンカツ定食を頼んで、ちょっとそっちにすればよかったと思ったことを気づいたんだとしたらエスパーだな。
「ありがと。」
不機嫌から一転、小さく礼を言う。
「どういたしまして。」
ちょっとだけ笑ったように見えた。
5年前に会社に雇われた俺の唯一の同期である同僚をちらっと見ながら、今度こそさっさと胃袋に掻き込むように箸を進めた。
少し斜めにかかった定食屋の時計は12時40分を示している。
午後からも、地に足つけて仕事やんなきゃなー。
「足、ぶらぶらしながら食べるのやめろみっともない。」
「へーへー。」
やっぱ俺の同期はくっそだ。
なぜか顔に熱を感じるがこれはきっと気のせいだ。
気のせい。




