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三歩 ドワーフ一家

どうやらこの世界にはドワーフやエルフ、獣人、他にも種族がいる。もちろん異種族に差別的な国もあり奴隷制度なども普通にあるらしい。

貨幣の価値も教えてもらった。


銅貨:1モナ

銀貨:銅貨10枚

金貨:銀貨10枚

大金貨:金貨10枚

白金貨:大金貨10枚


銅貨1枚が大体100円位の感覚だと思う。


あと、この世界には魔法があるらしい。もしかして俺にも使えるのかなと思うとワクワクしてきた。


「おっ、村が見えてきたぞ」


華麗に魔法を撃つ自分を妄想しているところをグワンダの声で現実に引き戻された。

うん、村だね。のどかな空気が漂う平和そうな小規模な村だ。


「ようこそ、小麦の産地ヒツメ村へ」


ニカッと笑いながら自分の村を紹介してくれた。

広大な小麦畑が何とも穏やかだ。


「俺の家はあそこだ」


指をさしたのは村の奥にある一際大きい煙突がある家だ。

荷馬車が進んでいくと住人が増えてきた。誰しもがグワンダに「おかえりグワンダさん」と声をかける。ほとんどが筋肉隆々のドワーフだ。


「人気者だな」

「一応このちっちゃな村の村長だからな」


ドワーフ村の村長だったんだ。そう言われると貫禄が…特にないかな。

ドワーフって鉱山やら洞窟やらで暮らしていると思っていたがそんなことはないらしい。ハンマーや斧でなく農具を持って畑作業に勤しんでいる。


「ほら着いたぞ」


通り過ぎた家よりも少し大きな家の前で荷馬車が止まる。


「嫁にはおれから言うから口を挟むなよ」

「わかった、頼む」


バンっと大きな音をたてながらグワンダは扉を開く。


「帰ったぞー」


大きな声が家の中に響く。

さすがドワーフ、一家の大黒柱感が凄い。これは亭主関白ってやつかな。

バタバタと足音が聞こえグワンダの奥さんらしき人が現れた。

俺の知識にあるドワーフの女性の姿はそこになかった。

背丈は普通の人よりは低いが筋肉ダルマというより、むしろ華奢。幼さの残る顔がとても可愛い。思わず守りたくなってしまう。なによりも目を引くのは主張の激しすぎる胸だ。ロリ巨乳、そんな言葉が頭をよぎる。

イカン、人妻に対して失礼だったな。


「あら、おかえりなさい」


見た目通り優しそうな声。

ドワーフ舐めてたわ。そう思っているとグワンダが急にジャンプして床に額を打ち付けた。


「何も言わず当分コイツを家に泊めてやってくれ」


キレイな、とてもキレイな土下座だった。

この世界にも土下座ってあるんだ。


芸術的土下座に呆気に取られていると奥さんの手がグワンダに伸びた。


「あっ…がっ」


グワンダの顔を掴み持ち上げるラブリー巨乳ドワーフ。


「帰ったらただいまでしょ」


微笑みが怖い。優しい声が怖い。


「で、お名前は?」

「はっ、ハイッ。ハヤトです」


恐怖のあまり自然と姿勢を正してしまった俺がいた。


「私はバンナ、よろしくね。自分の家と思ってゆっくりしていってくださいね」


グワンダを無造作に部屋の端投げ捨てながら、優しい言葉をかけてくれた。


「ひゃい…ありがとうございますっ」


ガタガタと足が震える。我慢しているが俺はもう涙目だ。


後に聞いた話だがドワーフの女性は見た目では筋肉がわかりづらいが、実は男よりも力がある場合が少なくないらしい。

ドワーフ舐めてたわ。危うく泣いてしまうところだった。


「ほら…大丈夫だっただろ」


ボロボロになりながらグワンダは復活してきた。


「どこがガツンと言えばだよ。ガツンと尻に敷かれてるじゃねぇか。この座布団グワンダが」

「座布団ってのが何かわからんが、ガツンと男らしく土下座しただろが」


男らしさとは一体なんなんだろうか。

土下座の後にもみくちゃにされたのに虚勢を張る姿が可哀想に見えてくる。


「そんなことよりお世話になるんだから荷下ろしやっちゃいましょうよグワンダさん」

「なんで優しい表情してんだお前?まぁ、さっさとやるか」


不思議そうな顔をするグワンダとともに木箱を家の隣の倉庫に運ぶ。


「これでぇぇラストぉぉ」


最後の木箱を運び終え、その場にヘタれこむ。


「おいおい、だらしないぞ。まぁ、人族にしては頑張った方だな」

「ところで、これ何が入ってるんだ?重すぎたぞ」

「何って、ただの鉱石だぞ」

「は?鉱石?俺木箱に詰められた石運んでたの?」


おかしい。いくらなんでも鉱石を詰め込んだ木箱を持てる力なんて俺にはない。召喚の影響なのか?わからん。


「で、鉱石なんて何に使うんだ?」

「言ってなかったか?俺は村長しながら防具職人やってるんだよ。これでもそこそこ有名だぜ」

「恐妻持ちの防具職人って有名なのか?」

「バカ、お前絶対にバンナにそんなこと言うなよ。頭蓋骨握り潰されるぞ…俺が」

「ハハハッ、それは一度見てみたいな」

「バカ言うな。そんときゃ道連れだ」


馬鹿な冗談を話ながら家に戻るといい匂いがしてきた。


「おっ、そろそろメシだな。バンナのメシは旨いぞ」

「それは楽しみだ」


二人でいい匂いの元へ向かう。

テーブルには料理が並べられており、可愛い幼児が二人並んで座っていた。


「だれー?」

「だれなのー?」


俺の姿を見ながら二人が尋ねてくる。


「そういや紹介してなかったな。息子のグラドと娘のバルナ、双子だ」

「ぐらどだよー」

「ばるななのー」

「で、こっちはハヤトお兄ちゃんだ」

「「はやにー?よろしくー」」


なにこの子たち、カワイイ。


「さぁ、食事にしましょうか」


バンナさんの一声でテーブルにつき食事が始まる。

よくわからない食材ばかりだったが旨かった。


「よし、ハヤト飲むぞ」

「いや、俺まだ未成年…」

「なんだそりゃ、よくわからんが飲め」

「「のめー」」


グワンダはともかくカワイイ双子にお酌されたとあっちゃ飲まない訳にはイカン。

差し出されたグラスを煽る。

初めて酒を飲んだが、なんだこれ喉が熱い。しかし、旨い。料理にも合う。世の中の大人たちはこんな旨いモノを飲んでいたのか。


「いい飲みっぷりだな。そら、もっと飲め」


グワンダと双子ちゃんが、もっともっとと言いながら酒を注いでくる。




気づけば世界が揺れていた。


「なんで勝手に召喚して、放り出だされなきゃいけないんだよー」

「わかる、わかるぞ。俺もバンナによく放り投げられる」

「勇者なんかなりたかった訳でもないのに、召喚したのはバカ王なのにー」

「わかる、わかるぞ、。じゃぁ、俺が勇者だっ」


よくわからないが口が勝手に動いて話をしてる気分。


「こんな世界で1人きりにされてもどうしようもない」

「わかる、わかるぞ。何言ってやがる俺たちはもう家族じ(ねぇか」


グワンダの言葉に目に何かこみ上げてくる。

でもな、グワンダが話してるの俺じゃなくて椅子じゃね?


「あらあら、二人ともよっぱらっちゃって」


双子ちゃんを寝かしつけに行っていたバンナさんが戻ってきた。


「二人ともそろそろ寝て下さいね」

「わかる、わかるぞ。でもなハヤトど大事な話してるとこ…ろ」


ドンッ。鈍い音とともにグワンダの体がゆっくりと崩れ落ちる。

崩れるグワンダの前で拳を突き出したまま微笑むバンナさん。


「あらあら、やっぱり眠かったのね。さっ、ハヤト君も」


近づいてくるバンナさんの圧力で足が全く動かない。

ドンッ。鈍く重い衝撃が体を駆け巡る。


「オヤスミなさい、ハヤト君」


意識が落ちる直前に見たものはバンナさんの微笑みだった。


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