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13話 鍛冶師ヴァーラ

俺は冒険がしたいんだ。―――と、とてもいい顔で決めたルフツであったが、ルブテーが流石商人と思わせる食い下がりっぷりを見せ、最終的にはルブテーを引きずるようにしてルフツは店を出ることとなった。

なんだかんだでちゃっかりルブテーはルフツに気が変わったらすぐに商談に移ることや、代替え案を考えることなどを約束させた。

ルフツはそんなにお金に頓着していない。だが、ルブテーの気持ちは分かるし蔑ろ(ないがしろ)にするつもりもないため、何かいい方法がないかは今後も考えていこうかと考えていた。


「おっと、もうルップア寝ちゃってるか…。」


代替え案と言ってもろくなことしか思い浮かばず、発想の貧困さに頭を抱えながら歩いていると、ルップアの家が視界に入る。

ルップアの家には明かりがついておらず、もう寝ていることが察せられた。

この世界には魔道具の明かりか、蝋燭(ろうそく)の明かりが夜を照らす。

しかし、お金に困る庶民に魔道具なんてものは入手できないし、蝋燭ですら使うのは(はばか)られる。

そのため、住民は基本的に日が落ちれば寝る。という習慣になっている。


「ルブテーのとこに居すぎたな…。」


日が落ちる前には帰ってお休みぐらい言えるつもりだったが、ルブテー宅で色々ありすぎた。

楽しい時間はあっという間、というのは異世界でも変わらないらしい。


「ただいまー。」


ルフツは寝起きドッキリを仕掛けるがごとく小声で喋る。

歩き方は抜き足差し足で、マスクに風呂敷があれば泥棒そのものであった。


ルフツはそのままルップアを起こすことなく、自分の部屋にたどり着くとそのまま床に着く。

今日は色々あった。

魔物を狩って、薬草採取して、新たなポーションを調合して…と、体に感じる疲れの正体を確かめながら、まどろみの中へ……。


「って、ダメじゃん!!火属性魔法の適正(メインイベント)忘れてるじゃん!!!」


とルフツははっきりと覚醒し、徹夜が確定した瞬間であった。



◇◇◇◇◇



翌日、ルフツはギルドへは向かわずに、街中へと足を運んだ。

今は目的地にたどり着き、壁に背中を預けて夢と現実の狭間でカクカクと頭を揺らしていた。


ガチコン。


ルフツの頭に衝撃が走り、ヒヨコが飛び回る。


「おい、坊主。ここで何してやがる。気が散る消えろ。」

「いってて…。」


ルフツの頭にほうれん草を食べたのかと思わせる拳骨を食らわせたのはヴァーラ。

ルフツは実年齢を知らないが、見た目は歳を取ってる割には元気すぎる爺さんといった印象を受ける鍛冶師の爺さんだ。


「ヴァーラの爺さん、俺が何したって言うんだよ。」


頭を撫でながらルフツは拳骨を貰う羽目になった理由を尋ねた。

なぜなら、ルフツはヴァーラの邪魔をしていないのだ。

ルフツは別に店の出入り口で寝こけていたわけではない。

ヴァーラの家の裏手。

そこの壁に寄りかかり、睡魔と戦っていたのである。

別段邪魔になるようなこともしていないし、気が散るようなこともしていない。

こんな痛い目に合うようなことをされる理由が分からなかったのである。


「あぁ?やってたろ。ここで。ったく、うるせぇんだよ。」

「うるさい…?いったいな―――――。」


いびき。

それ以外に心当たりがルフツにはなかった。

しかし、自分がいびきをかいているなんて自覚していないし、寝ていたつもりもない。

ウトウトしていただけで、起きてはいたのだ。ホントだよ?

だから、ルフツは詳細を聞こうとヴァーラを見据えた。

そしてルフツは絶句した。


「なぁ……、爺さん。これ…。こいつ!!!こいつって何かわかるか…?」

「あん?何のことだ?」

「これだよこれ!!このでっかいの。」


ルフツは空中を指さす。

先ほどの拳骨の当たり所が悪かったのだろう、ルフツには見えない何かが見えているらしい。

当然、ヴァーラには見えてはおらず、ルフツが指さす方を振り返る。


「ふん。見えんな。」


ヴァーラはいかれた奴を見下すように鼻を鳴らし、()()()()()()を強調する。

そんなヴァーラの様子がヒントになったらしく、ルフツは集中し目を凝らす。


――――火属性魔法の適正がlv8に上がりました。


ルフツが火の精霊を正確に捉えたことを脳内アナウンスが伝えた。


「爺さん、ありがとう!!」


ルフツは感極まってヴァーラに抱き着いた。

もちろん、ヴァーラは男である。


「おいコラ、やめんか!」

「精霊を感じることができた!やっとできた!!」


ルフツの行動により、辺りを歩いていた人々の注目を浴びる事となったヴァーラの抵抗は弱く、ルフツ感激のハグは収まらない。

そこには、街中で爺さんに抱き着く男の図があった。

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