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17話 ファイア

「ふふふ。あーはっはっはっはっは。ファイア!ん~ファイア!!」


そう気持ち悪い笑い声をあげているのはルフツ。

人生初の魔法にテンションが上がりすぎていた。


普通に魔法を放ったのは、スライムに恐る恐る放った1発のみ。

後は我勝手知ったり。で、併用している気配察知を駆使して、ノールックファイアや、振り向きざまファイア。

股抜きファイアや五体投地ファイアなど、様々な魔法の打ち方をして楽しんでいた。

そして、的となったスライムはというと…。

溶ける。

この一言に尽き、ファイアの魔法が当たると、シュワーという蒸し暑い太陽にさらされたアスファルトにかけた水のような音を立てて消えていった。

切る場合はしっかりとコアを狙わなければいけなかったスライムが、ファイアの一声で消えるさまはとても爽快で、ルフツを狂わせる。


「精霊よ、我の力に応えよ。敵を焦がす高温の火となれ!ファイア!!」


ルフツはそう詠唱し、振りかざした手から火の玉を放つ。

放たれた火の玉はスライムへと迷いなく進み、ジュウっと蒸発するのであった。

ちなみに、この詠唱はルフツオリジナルであり、ルフツの厨二心(ちゅうにごころ)が満たされる意外の効果はない。

…魔法の質は精神状態に大きくかかわる。

そういう意味で言えば魔法の質に大きな効果をもたらしているとは言える…。

厨二心を満たし、十分な精神状態で放つ魔法の質は相応のもので、少なくとも今日放った魔法の中では一番威力が高かった。

詠唱とはルーティングやサブリミナル効果の要素が強く、現象をイメージできる方法であれば何でもいいし、無くてもよい。

ただ、この世界の住人は詠唱しないとできない。この魔法はこう詠唱する。という刷り込みが遺伝子レベルであり、ルフツのようなハチャメチャな詠唱ができる者がほとんどいない。


「ふぅ…。もうMPがなくなっちゃったか。あっという間だったな…。」


辺りスライムを手当たり次第に焼き焦がすと、ちょうどルフツのMPが尽きる。

ルフツは一休みと言わんばっかりにその辺にあった岩に腰を下ろし、懐からスライムポーションを取り出す。

今のルフツならMPは簡単に回復できるのだ。

ゴクゴクと瓶の中身を一気に飲み干し、ふぅーっと瓶を持っている腕で口を拭った。


「あれ、結構いけるなこれ。」


とルフツはスライムポーションの味について感想を述べた。

ポーションとは味が変わり、薬っぽさが消え、頑張ればジュースと言えなくもない味になった。

この世界の味については生活水準から察せるように、いいとは言えない。

もちろんこの世界に転生して今までこの世界に生きてきたルフツは、この世界の味に慣れてはいる。

だが、元居た世界の味も知っている。

それと比べてしまうとどれも劣ってしまい、残念な気持ちになってしまうのは仕方のないことだろう。

だから、ルフツは食べ物についてはこの世界の基準で美味しい不味いを決めている。

その基準で行けば、このスライムポーションは美味しい。ポーションではありえないと言い切れるほど美味しい。

この結果はスライムポーションの価値を高めることとなり、あぁ、これはますます売れなくなったな…と少しの間、遠くを見つめてから、ルフツはビッグフロッグの生息地へと歩き出した。



◇◇◇◇◇



「ファイア!」


ルフツの手のひらから火の玉が発生し、ビッグフロッグへと飛んでいく。

ビッグフロッグに火の玉が当たった瞬間ジュウと焼いた音が聞こえ、魔法が命中したことが分かる。

しかし、ビッグフロッグを倒すには至らず、ビッグフロッグの舌が勢いよくルフツに飛んでくる。

ルフツはその舌を避けない。

いや、避けられない。

ビッグフロッグは討伐難易度が格段に低い魔物であるが、舌の攻撃速度だけに関しては格段に速い。

駆け出しの冒険者のレベルでどうこうできるものではない。

しかし、舌の攻撃を防具で無効化してさえいれば無害と言っても過言ではないため、ルフツも攻撃を受けるというリスクを低く見積もっており、避けようとすら思わない。


舌に捕まったルフツは全く動じる事無く、ビッグフロッグに引きつけられた後、素早く剣を振るいビッグフロッグを剣の錆びと化す。

ルフツに見合った難易度であるビッグフロッグは何度も狩っている魔物であり、かなり手馴れている。


「んー、やっぱりビッグフロッグは一撃とはいかないか。まぁ、そもそもこいつら火属性に強そうだもんな。両生類だし。」


ルフツは剣に着いたビッグフロッグの血を振り飛ばしながら、ファイアの使用感を確認していた。


ビシュッ!


「おっと。」


ルフツが休む間もなくビッグフロッグの舌に捕まる。

ルフツが今いる場所はビッグフロッグの群生地。

ルフツは引く手あまたで、ビッグフロッグにモテモテな状態だった。


我先にと舌を伸ばし自分のところへと引き寄せたビッグフロッグにルフツはニヤリと笑みを浮かべた。


「さすがに0距離(ゼロきょり)()らやァ、ちょっとは()てえだろ?」


ルフツはキメ顔でそう言うと、少し間をおいてからファイアの魔法を発動させる。


赤火砲(ファイヤ)


セリフの通り、ビッグフロッグの喉元に手のひらを押し当て、火を灯した。

パァン!!っと甲高い音が鳴り響き、辺りが赤に染まる。

そして、ルフツを締め付けていた舌は力を無くし、地面に落下した。


「げぇ、これは流石に気持ち悪いな。」


そうげんなりした顔で言うルフツ。

冒険者をやっているのだから、臭い、怖い、汚いなどといった感情は制御出来ていなければならない。

それは試合をやるというのにユニホームがないなんてことと同じで、冒険者にとって身に着けていて当然のことである。

しかし、流石に限度というものがあり、嫌なものは嫌なのである。

また、こういう度を越したものは経験が必要なもので、ある程度慣れが必要なものでもある。

ルフツにとってここまでのものは初めてで、ルフツが思ってた以上に精神的なダメージを受けていた。

だが、魔物は待ってくれず、ルフツの体にビッグフロッグの舌が巻き付く。


「流石にファイヤはやめだ。切るっ!」


一閃。

こちらは慣れたもので、ズバリときれいに決まる。


しかし、間髪入れずにまたもや舌が伸びてくる。

そんなビッグフロッグフィーバーはしばらく続き、辺り一帯のビッグフロッグが一層されるまでルフツに休む暇はなかった。


「ふぅ…。少し調子に乗りすぎたかなぁ。」


多少乱れた息を整え、反省をするルフツ。

ルフツにしては無警戒でかなり攻撃的であった。

おかげでビッグフロッグに連戦を強いられ、周りにいたビッグフロッグすべてに付き合う羽目になった。

ルフツの実力的に問題はないとはいえ、ルフツの考え方からすると無計画すぎたなと反省点が多い結果であった。

それほどに魔法に浮かれていたのだ。

ゼロ距離ファイアで目が覚めたのは逆に幸いだったのかもしれない。


「けど、発動の距離に応じて威力は変わるみたいだな…。」


反省点は多いが、見えてきたものは確かにある。

ファイアはビッグフロッグを1発で倒せない威力だが、至近距離の場合は倒せる。

つまり、距離によって魔法の威力が変わる。

これが先ほどの戦闘で得た情報だ。


「後は、属性相性が気になるかな。」


水属性っぽいイメージのカエル相手だと威力不足で倒すに至らなかった。

これが木属性っぽい魔物相手だとどうなるのか…?

そんな疑問を抱きつつ、ルフツは明日のプランを思い描いた。


「よーし、最後にスライムの体液を回収して帰るか!」


ひとしきり整理が付いたら、ルフツは気合を入れなおして足を前に踏み出した。

カエルだけに……っと心の中で呟きながら……。

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