16話 台頭
逃げるようにしてギルドを出たルフツは慣れた足取りでスライムのいる湿地帯まで来ていた。
そして、いよいよである。
異世界に来て初めての魔法!
とはいかず、まだlv10に達していない火属性魔法の適正をlv10にするところから始まる。
やるべき内容はというと、火の無いところで精霊を感じる。である。
あれ、lv7の精霊を感じてみよう。と一緒じゃない?とルフツは思う。
ヒントとして火のある場所に精霊が多いとはあったが、別に火の有無はlv7の段階から指定されていなかった。
であればなぜ、もう一度同じことを要求されるのだろうか…。
そう不思議に思うが、答えが出ない。
そして、おそらくこの世界にその答えを知る者はいない。
答え合わせのできない問ほど不毛なものはないため、ルフツはまぁいっかと考えるのをやめた。
「精霊を感じる…ね。」
両手を体の両横で広げ、天にかざす。
瞼を落とし、頭を重力に預け、意識を体の奥へ、奥へ。
一瞬にして静寂に包まれ、視野情報のうるささを実感する。
心安らぐ静寂のまま、湿地帯の草木の音といった自然の音が耳を撫でる。
そして、体から徐々に広がる感覚。
身の回りの情報が白黒で伝わってくるようなそんな冴えを感じる。
次第にその冴えは加速度的に増え、まるで春一番のように一気に辺りを駆け巡る。
「見つけた。」
白黒の感覚にぽつんと浮かぶ赤。
この赤色こそが、火の精霊に違いない。
その赤を自分に近づけるように寄せ付け、目を開く。
――――火属性魔法の適正がlv10に上がりました。
火属性魔法の適正は昇格し、火属性魔法lv1になりました。
それは間違いなく、火の精霊を感じ取ったことを意味し、そして、ルフツ待望の瞬間であった。
「よっしゃあああああ!!!」
ルフツはそこが一応魔物の出る危険地帯ということを忘れ、声をあげガッツポーズで喜ぶ。
泣きそうなほどに。
ルフツはようやく異世界ファンタジー、剣と魔法の世界という大舞台に台頭したのである。




