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15話 ギルド職員リロネ

昼の鐘の音を聞きヴァーラの家を後にしたルフツは、昼食を取ってからギルドを訪れていた。


「まぁ、お試しならこいつらか。」


ルフツはそう呟くと、掲示板からクエストをむしり取り、ギルド受付に提出した。

提出したクエストは前回と同じ、スライムの討伐とビッグフロッグの討伐の2つである。


「すみませーん。これを受けます。」

「はーい、スライム討伐とビッグフロッグの討伐ですね。少々お待ちください。受理いたします。」


ギルド受付らしい返事をしたのはリロネ。

フルローラと同じギルド職員である。

見た目はと言うと…。もちろん、ギルド職員であるから見目麗しい。

美人は美人だがフルローラとはタイプが違う。

フルローラを後輩っぽいと評すなら、リロネは先輩っぽい感じだ。


「あ、ルフツさん、お久しぶりです。珍しいですね、こんな時間に。」


リロネは受理中のクエストを受けたのがルフツだと気付き挨拶をする。


「お久しぶりです。まぁ、そうですね。ちょっと朝は用事がありまして…。」


ルフツは基本的に朝ギルドへ行き、クエストを受注。

夕方か夜までにはクエストをこなし、ギルドに訪れるというサイクルで冒険者をやっている。

ギルドの勤務体系は知らないが、昼間の勤務が多い様子のリロネとは利用時間が被っていないため、顔を合わせることがほとんどない。


「あ、寝てたわけじゃないんですね。」


リロネは笑ってそう言う。

冒険者は朝受注、夕方か夜に報告といったサイクルを取るのが一般的だ。

だが、冒険者には時間にルーズな者が多い。

金さえ稼げていれば強制力も必要性もほとんどないため、元の世界のように切り詰めて押しつぶしたような時間感覚がない。

前のクエストで懐が潤ったから今日は昼まで寝こけよう。なんてことは少なくなのだ。

ルフツは異常なほどに規則正しくギルドに訪れてはいたが、この世界の住人の感覚としては、遅れる=昼まで寝たになるのだろう。


「えぇ、そうです。ヴァーラの爺さんに顔を見せに行ってたんですよ。まぁ、そこでウトウトしてたのであながち間違いではないかもしれませんが。」


そういえば半分寝てたなっと思い出しながら午前中の用事について簡潔に述べた。


「あ、ヴァーラさんですか…。ちょっと意外です。」

「あれ、意外ですか?」


リロネはヴァーラの名前を聞き、何やら不思議そうにしていた。

そんなリロネにルフツは疑問を呈す。

ヴァーラは鍛冶師だ。

この街の冒険者であれば、まず間違いなく武具はヴァーラに頼る。

年の功。年齢通りかそれ以上の腕をヴァーラは持っている。

そのヴァーラに訪れるというのはこの街の冒険者としてなんらおかしいことではない。

むしろ、冒険者らしくすらある。

そんな行動が、なぜ意外なのか?

答えはリロネの返事によってしっかりと伝えられた。


「あぁ、すみません。てっきり女性絡みかと思ってました。」

「なんでリロネさんまで……。」


簡単な話であった。

ルフツのことだからどうせたらこんでるんでしょ?ということである。

それに対してルフツは全然違うと断言するはずだが、久しぶりに出会ったリロネが言うのだ。

諦める方が速そうだなとルフツは思った。

ルフツ=たらしは周知の事実らしいのである。


「ふふ。だってよく聞くもの。この前も公衆の面前でローラを口説いてたんですって?」


身に覚えのないたらしという評判に項垂れるルフツが面白いのか、リロネは笑う。

そして、とんでもないことを言い出す。

ローラ。つまりはフルローラをルフツが口説いていたと。


「え!?何それ。何がどうなったらそうなるんですか!」

「ローラを耳まで真っ赤にさせたとか。私も見たかったなぁ…。」

「あー。あの時か…。でもあれは……。」


薬草の需要が高まり、余分に取ってきていた分の薬草も欲しいとフルローラに交渉された時の話だろう。

確かにルフツは遠回しにフルローラのことをかわいいと言った。

ルフツ的にはそれは事実を述べたまでだし、その気がなかったことで気にしていなかった。

しかし、改めて言われるとあれは口説きになるような気もし、ルフツは頭を悩ませる。


「あれ?否定が来ないってことは…。」

「ちょちょ、ちょ、ちょっと待って。違う!確かに可愛いとは言いましたけど、事実…というか、思ってることを言っただけですから!口説くとかそんなことはしてないですって。」


否定できないルフツを見て、リロネは少し意外そうにしつつも肯定の意だと捉えた。

しかし、ルフツは慌てて全力否定に移る。

整理できていない考えを並べ立て、それを否定の論拠として。

しかし、それが墓穴。

ルフツはすっぽりと収まってしまう。


「本心から可愛いそうよ、ローラ。」

「え!?」


リロネが振り向いて誰かにそう告げる。

ルフツは血の気が引く思いでリロネの視線の先を見やる。

するとそこには、予期した通り顔を真っ赤にしたフルローラがいた。


「はわっ、はわわ。」

「あー、こうなるのね。」

「……。」


フルローラは前回同様、ポンコツ様相を呈している。

その様子を見て、愛でるような視線を送っているのがリロネ。

そして、初めて客観的にポンコツ状態のフルローラを見たルフツは、あぁ、こりゃそう見えるな。っと絶句していた。

今回は流石に可愛いと思う余裕はなく、どう否定したものかと頭を悩ませる。

チクチクと背中を刺す視線も数が多く、警鐘が鳴っている。


「だー、もう!そんなつもりないですから!!違いますから。」


ルフツはこの現状に返す言葉がなく、本意ではないという事を心から叫ぶしかなかった。

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