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最強ロリッ娘魔導士はそうして復讐を誓う  作者: はしばみ
第二劇 六月の就活生
6/18

六月の就活生Ⅰ

4000文字オーバーですみません。完全に配分を間違えました。

二劇は息抜き回とイメージです。

次の節?に戦闘系?みたいな要素を盛り込むつもりです。

次回このお話は区切りになるつもりです。

陽が覆われたいかにもな曇天の下、無地のリクルートスーツに身を包んだ中村春樹はうつむきざまに道を歩いていた。下を向いて歩いていてもお金なんか落ちてないよとよく母親に窘められていたが、今はその教訓を汲む余裕がなかった。

その時背後から彼を呼ぶ声がして振り返ると、ある企業の選考会で顔を合わせた就活生が走ってきていた。


「おー、奇遇だな中村クン。そっちも帰りか?」


「うん。さっき説明会が終わったところ。キミは?」

尋ねると男は肩をすくめた。


「やー、俺は最終面接。ほらあそこ」

名前が出た企業の名前は以前中村も受けたところだった。そして一次面接の後お祈りメールが届いた。


「えっ? 最終までいったの? すごいな......」

僕なんて、と言いかけてやめた。


「多分内々定も出るだろ」

男はなんてことなしに話す。


「しかし内定なんていくつ出ようが意味ないよなあ」


「あ、うん」


「オンナと付き合うのと違ってひとつしか選べないんだからな

本気で言っているのだろうか、この男。なにか言い返そうとしたが、その前に男はデートだとか言い残すと消えて行った。

心にどうしようもなくささくれができた。



**********



創と新凪は憔悴しきっていた。

夜通し、というかさっきまでクーの遠隔操作をうけたジャック・オー・ランタンの大群に追われていたからだ。飲まず食わず走り回ってようやく撒くことに成功した。


「全く刺激的な夜だったわね」

シャウが創の背中で溜息をついた。


「…………」


「…………」

息を整えながら睨む二人。あくまで彼らはシャウの珍道中に巻き込まれた被害者なのだ。


「……いい加減降りろ」

創が眉をこわばらせながら腰を下げる。シャウは「せっかく美少女の柔肌を堪能するチャンスなのに」などとほざいているが素直に離れた。


「あのパンプキン集団は一体なんなの?」

新凪が尋ねると、

「本来は無機物のカボチャに生物の息吹の暗示をかけたの。まあ時間が経てばただの野菜に戻るわけよね」


「なんでかぼちゃを使ったのかな」


「クーの奴はハロウィンが好きなの」

シャウが肩をすくめていった。


「ハロウィンってもしかして魔導士の世界だとまた特別な日でもあるとか?」


「いや、ただあいつがその日に生まれただけ」


「そうでしたか……」

新凪が疲労からか口を閉ざすと、今度は創が「それでこれからどうするんだ」と訊いてきた。


「まずはこの汗を流すことが先決ね。お風呂を探すわ」


「賛成」

新凪も手を挙げた。


「えー。俺は腹が減ってどうにかなりそうなんだけど。先にメシだろ」

所持していた携帯食料もジャック・オー・ランタンどもに食べられてしまった。カボチャに夕食を食われるマヌケ供は世界を巡っても彼らくらいなものだろう。


「こんな状態でお店に入りたくないなあ」


「これだから男はまったくデリカシーがなくてよ?」

女二人は不満げだ。


「でも一方的に決めても不公平だから多数決をとってあげましょう」


「そうだね」


「もういいわ」

そうして数の暴力によって、温泉施設を探すこととなったが、いかんせん三人ともスマホのバッテリーが切れていた。


「おい、どーすんだ。俺この辺りの地理には明るくねーぞ」


「わたしも……」


「こうなったら誰かに聞くしかないようね」

シャウがそう言った時、前方から学生と思わしき男が歩いてくるのが見えた。


「もしもしそこの方?」

中村は一瞬誰に声をかけられたか理解できなかったが、ここよここという声の元から相手が小学生くらいの外国の子だというのを悟った。


「近くの入浴できる施設を教えてもらってもいいかしら?」


「えっと。キミ保護者は……?」

後ろでくすくすと忍笑いが起こるが、あくまで冷静にシャウは話す。


「同伴者という点ではこの二人がそう」

見ると高校生くらいの男女が姿が。兄妹だろうか?

そのうちの女子が申し訳なさそうに尋ねてきた。


「わたしたちここに来るの初めてなんですが、生憎スマホが使えなくなってしまっていて途方に暮れていたんです。このあたりに詳しいようでしたら道教えてもらってもいいですか?」


「ああ、なるほど」

中村は頷くと顎に指を当てた。


「えっと、温泉施設っていうと近くにはあるんだけどそこまでの経路がちょっと入り組んでて、口頭だと伝わりにくいかも。僕もこのあと予定ないし、よければ案内するよ」


「本当ですか!? ありがとうございます」

女の子に続いて高校生らしき男子も頭を下げた。


「最初に訊いたのはあたしなのに……」

幼女は納得いかないように口を尖らせていたが。



**********



お互いに軽く自己紹介をしていると、あっという間に目的の施設が見えるところまでついた。看板には九泉の湯とある。


「ねえ、創」


「ん?」

主に大学生の中村の相手をしてもらっている新凪の後ろをついていた創はシャウに呼び止められ足を止めた。


「前の中村さんのことどうにか繋ぎ止めておいて。お礼がしたいとか口実をつけて。なんならお風呂に引っ張ってくれても構わないから」


「無茶いうな」

一蹴した創だったが、一応理由を尋ねると、


「異端の力の数値が一定以上の検出された。彼も所有者よ」

所有者とはシャウの力を譲渡された不幸な人間を指す隠語だ。


「なんちゅう偶然だ」


「探す手間が省けたってもんよ。パンプキンに追われた甲斐があったわね」


「それは関係ないやろ」

ぼそぼそと話していると、前方の二人が怪訝な顔をしてこちらを向いているのが見て取れた。


「なに話してるの? もうすぐそこだって」

隣の中村は曖昧に笑って「じゃあ、あとはわかるよね」といって帰ろうとしている。


「あ、はい。ありがとうございました」


「いけ、創。ゴー」

シャウに突き飛ばされ創が飛び出す。


「あ、はは。あ、あの俺たちこのあとご飯食べていくつもりなんですけど、近くに美味しい処とか知ってます?」

愛想笑いを浮かべていた創は内心でシャウあとでぶっ飛ばすと思っていた。


「あんまりこのあたりでは外食はしないんだ。ごめんね」


「あ、そうすか。で、でもそれってよく自炊なさってるってことすよね?」

ぐいぐいくる創に中村は引き気味に頷く。


「いやー。実はちょっと手持ちが心もとなくてできるだけ倹約したいんすよね。もしよかったらご相伴に預かっても……?」


「ちょっとなにいってるの!?」

上目遣いで見た瞬間、新凪には「なに図々しいこといってるの」と睨まれ、中村は「人に振る舞うほど上手くないし」とやんわり拒絶され、ついでにシャウには呆れられていた。


「まーまー。ここで会ったのも何かの縁だろうし、折角だからここはひとつ奢らせてくださいな。さーさー」

シャウはそういって無理やり中村の背中を押していくと、施設の中まで連行していった。


着替えも持っていなかった中村はやはり断ろうとしたが、先に四人分の料金を支払われてしまっては断るに断りきれなくなってしまった。


「なんかごめんね。タオルまで買ってもらちゃって」


「いやいや、強引にお連れしたのは俺たちなので。……こちらこそすみません」

大浴場には人気が少なくゆったり脚を伸ばせた。創はタオルを乗せた頭でこれからどういった具合に話を進めていこうか考えていた。


一方、女湯。こちらも閑散としている。

「へえー。これって貸切ってやつ。いいねえ」

シャウはきょろきょろとあたりを見回してテンション高めに頷いている。長い髪はタオルで纏めていた。


「だからって泳いではダメだよ」

体をお湯で清めている新凪がやんわりと窘めると「そんな子供みたいなことしないわよ」と返す。


「それにしても新凪ちゃん」


「なに」


「あなたスレンダーかと思っていたけど、意外と恵まれた身体してるのね」


「値踏みするように見るのはやめてほしい」

新凪はさっと身体の前で腕を組んだ。


「やっぱり着痩せするタイプ?」


「あーもういいから。はいろはいろ」

つるりとした素肌を押して入るように促す。


「でも元のあたしの方がずっとスタイルはいいわよ」

胸を張って話すシャウ。


「まあシャウって外国の人っぽいもんね。そういえば結局何人なの?」


「あら話していなかったかしら」

とぼけた風に首をかしげた。


「そのあたりのこと訊くとはぐらかすよね大抵。ね、教えてよ」


「また今度ね。あまり他人には聞かせられない話もあるし」


「えー」


「こんな公衆の場ではいえないもの。誰に聞かれるかわかったものじゃないし」

ちらりと上の視線を向けた。実はここの浴場を区切る壁は天井まで届いておらず、わずかに隙間ができている。


「ま、まさか……」

新凪の顔が一気に青くなり向こう側に呼びかけた。


「ねえ!? まさかと思うけどさっきの会話聞こえてないよね?」

一瞬、遅れて創の返事が届いた。


「おう、聞こえてないぞ」

よかった……。


「ってよくない!? 聞こえてんじゃん!」


「あ、やべ」


このあとシャウと創と新凪は本当に中村の家に上がりこむのだった。普通の人間にできないことでも、シャウという魔導士が居ればなんだってできる。


「本当にごめんなさい」

謝る新凪に笑いかけながら、中村は「まあ簡単なものしか作れないけど、リクエストあるなら聞くから」

そういって別の部屋へ向かった。風呂上がりにスーツは辛い。着替えにいったのだ。哀れ。


「俺はラーメンかな。醤油、塩、豚骨、味噌なんでもオッケー。天宮は?」


「えー、本当にご馳走になるの……?」


「中村さんも了承してくれたろ? そんなことより何希望?」


「わたしは何でも大丈夫だよ。とにかく中村さんの負担にならなければ」

優しい女である。

一方優しくない女の意見はどうだ。


「じゃあシャウ嬢」


「断固オムライス!」

いつになく目が据わっている。「とにかくオムライスがいい!」


「俺はラーメンの方がいいな」


「どっちかに決めなよ」

ため息まじりに新凪がいうと「じゃあ、じゃんけんだな」と拳を取り出す。


「魔導士に勝てると思って?」


「はっ、ほざけ。じゃーんけん……チョキ」

パーを出して硬直するシャウ。


「俺の勝ちだな」


「ううう……」

このあと大いにシャウが駄々をこねたため、オムライスに変更になった。

こうして創のストレスは際限なく溜まる。


「何かお手伝いしましょうか?」

キッチンで作業をする中村に遠慮がちに新凪が訊くと、


「じゃあ、戸棚にティーセットがあるからそれを二人に淹れてくれるかな?」


「あ、でも」


「こっちは大丈夫。すぐにできるから」

確かに要領はよさそうだ。謎の敗北感を感じ、戻っていく新凪。

完成したオムライスはきれいな形をしていた。

以下それを一番早く食べ終わったシャウの感想である。


「素人の方が拵えたものにしてはなかなか良かったわ。120点」


「おい、こいつめっちゃ気に入ってんぞ」

次回投稿予定日は5月7日(月)です。

一応毎回1000~2000字に抑えたいと考えているので、あまりに文字数が多くなってしまうようであれば、話を区切って同時に投稿します。

その場合、同じ日に二つ投稿されることになりますが、ご了承ください。

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