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最強ロリッ娘魔導士はそうして復讐を誓う  作者: はしばみ
第一劇 二人の高校生
5/18

二人の高校生Ⅳ

一応一つ目の節(?)終了となります。

あと文字数が11000文字で馬鹿です。

もっと配分を考える必要があると反省しました。

あと書くのに半日以上かかるし。

創が待ち合わせ場所に指定された駅前の噴水が見えるところにでると、既に彼女は到着していたようでこちらに気づくなり手を振ってきた。

創はこの関係性が現実であったならどれだけ幸せだったかを考えつつも彼女のもとに向かう。


「ごめん、待たせたみたいだね」


「ううん、わたしが早く着きすぎただけだよ。それに創くんも約束時間よりも早く来てくれてるよね」

そういって彼女ー及川夏希おいかわなつきは笑った。

ああ、この優しいところに俺は惚れていたのだと創は思い返していた。


最初に向かったのは映画館であった。その後は昼食。及川は初々しい感じながらも積極的に話しかけてきていた。異性との会話に慣れていない創は相槌をうつことが多かったが、それでも彼女は終始楽しそうであった。

その後二人は食後の散歩として近くの公園を歩いていた。ついこの間までは桜並木となっていた道も今ではすっかり散ってしまっていた。


「ちょっとのど乾かない?」

そう切り出したのは創だった。


「わたし買ってくるよ」


「いや、俺が行くよ。何が飲みたい」


「……」

そう尋ねると少し恥ずかしそうに袖をつまんでいた。


「遠慮しないでいいから」


「……じゃあ、創君と同じので」


「……」

ちょっとフリーズした創だったが、すぐに再起動し「じゃああそこのベンチで待ってて」といって走っていった。


「俺と同じの、か」

自販機の前でにやける創だったが、背後から呼ばれてびくっと反応する。


「随分楽しそうね」

シャウだ。


「見てたのかよ」


「いつ例の話を切り出すのかと思ってね。まさか忘れてたわけじゃないでしょうね」


「忘れてなんかねーよ」

憮然とそういうとボタンを押して、飲み物をとる。


「あたしの分は?」


「知るか」


「あれが飲みたい」

指した先にはミルクティーが。結構上のほうだ。

創は財布から100円玉を二枚だすと、シャウに投げて渡した。


「ほら、俺は見ての通り手がふさがってるから自分買えよ」


「仕方ない。あなたが買ってる間預かっててあげるから」


「なんだボタンに手が届かないのかおちび」


「えるぼ」


「あああああっ」

創はペットボトルを落として悶絶した。こいつわき腹に……っ。


「その便利な力でボタンくらい押せるだろ!?」


「こんなことで力を使うのは魔導士としてのプライドが許さない」

つんと顎を引くとシャウは落ちていたペットボトルを取った。創はため息をつきながら、コインを受け取ると目的のブツを買ってやった。


「ほら」


「ありがと」


「じゃあ俺は戻るから」

そういって創は及川の待つベンチへと駆けていった。


「ごめん待たせた?」


「ううん。大丈夫」


「飲み物これでよかったか?」

そう言って手渡したのは安牌なお茶だ。


「わ、ありがとう」

それでも嬉しそうに受け取るものだから創はやや照れていた。

それからは少し沈黙が続いたが、意を決して創が切り出した。


「そういえばさ、俺の友達が最近インフルにかかってさ」


「えー。この時期に?」


「そう。いっつもどこかずれてる奴なんだ。そいつ」

実際にはこれは作り話だった。


「あと数日もしたら出てこれるっていうんだけど、それまで暇だっていうからさ。何か持って来いっていうんだよ。でもさ俺ってあんまり人のお見舞いとかって行ったことがないんだよね。どうしたらいいかな?」


「あ、うん。そうだね……」

その時及川の顔が曇るのが見て取れた。


「えっと、ごめんね。わたしの友達もちょっと似たような事になっていて、少しその子のこと思い出してた」


「……その人も学校来てないの?」


「うん。でもその子自身が体調崩してるわけじゃないんだ。ごめんね。あまり詳しくはいえないんだ」


「いや……俺の方こそごめん」

その曖昧な笑みで創は察した。



**********



シャウと創はその夜、市内では有数の総合病院である遠西病院へと赴いていた。

総合ホールの席で座っていた。

「さっき例の彼女の姿が確認できたわ」


「……そう」

及川は詳細こそ明かさなかったが、友達である天宮新凪がとある理由でお見舞いに通っていることは示唆していた。


「おそらく彼女には未だ力の自覚症状がないでしょう」


「うん。俺もそうだったからな」


「ただあなたと違うのはそのエネルギー量。あの規模にもなると抑制するための訓練が必要となるの」


「それをしないまま無自覚に能力が発動するとどうなる?」


「……力が主を乗っ取ることになるわね。つまりは主従関係の逆転。あたしたちの世界ではそれを変性威へんせいいと呼称しているわ」


「力の暴走か。現実でもあるんだな」

人間が完全に抑制できない力を持つと碌なことにはならないのだ。


「変性威の発動条件をさらにいえば、感情の突発的な揺らぎがファクターになることもあるの。親しくしていた人が亡くなった時とかね」


「……」

学校を1週間以上休んで通い続けているのだ。ただ親しい間柄と呼べる以上の関係だろう。


「キミの力で何とかならないのか?」


「ごめんなさい。今のあたしはおろか全盛期の頃でも、病を根本的に治癒させる力はもっていなかったの」

そもそも魔導士の力は人を癒すものよりも人を傷つける力の方が多いともいった。


「そういう輩って大抵不老不死とか永遠の命ってやつを求めているもんじゃないのか?」


「中にはそういう人もいるわね。でも成功した者はいない」

つまらなそうに「それでいいの」と付け加えた。


「永遠なんて生き続けたら最後にはその一日がどれだけ退屈になってしまうかわかったもんじゃないもの」

その後、今日のところは一旦出直すという結論となり家路についた。


翌日ー創は学生服に袖を通していた。

「じゃあ、俺は学校行くから。何かあったら連絡してくれよ」

シャウが幸いスマホを持っていたので、電話番号を交換していた。


「はいはい、じゃああたしは病院で待機してるわね。あなたの学校からだとー」


「電車を乗り継いで30分といったところだな」


「そう。それでタワーと病院は目と鼻の先っていうわけ」


「……なあ、やっぱり予めタワーの中にいる人たちに避難を呼びかけておくことは厳しいのか?」


「場合によっては暗示をかけることもできるけど、それでも全員は不可能ね。人数が多すぎる」

シャウの予知夢には具体的な日付はでていなかった。それに確定している未来がただみえるものでもないらしい。そのような曖昧な状態では、タワーで働いている人間の職務をストップさせてまで、避難を促すことはできない。


「最悪彼女を無力化すれば、被害は抑えることができる」


「……」

創は少し俯いたが、そろそろ時間が迫っていることもあって踵を返し部屋を出ていった。

今日は晴天だった。


「よお」


「おお」

創が学校に自分の席につくと、クラスメートの優が話しかけてきた。


「お前及川に告られたんだって? マジか?」


「は?」

おかしい。そのことは誰にもいってないのに。


「誰に聞いたんだそれ?」


「いいから、どうなんだよ?」

複雑な心境だったが、嘘ではないのでごにょごにょといって頷く。


「はーっ!? マジかしねしねっ」


「痛い痛い」

しばらくは長い付き合いなのに裏切りやがってとか恨み言をいっていたが、教室の隅に目線をやると「でもいいじゃん。及川、清楚でよ」と続けた。


「まあ……。……っ!?」

創がその方向を見ると途端に息をのむ。優の「どうした?」という問いかけにも反応せず、スマホを出して廊下に飛び出す。


『早速どうしたの?』

電話口からは不機嫌そうなシャウの声が聞こえた。


「来てるんだよ。天宮新凪が。学校に」


『そうなの。でもいつまでも学校を休ませてるわけにも行かないから家族に言われたんじゃないの?』


「おそらくはそうだろうと思うけど」


『だったらこれはいい機会になるんじゃない。あなた、彼女にコンタクトを取りなさい。あらかじめ話を通しておけば、変性威が起こる可能性も低下するかもしれない』


「……わかった。そっちは様子を見てくれないか」


『病室の前に張り付くのは無理よ』


「それでもいい。でも家族の顔は覚えてるだろ? その人達を見ていてくれないか? 何か胸騒ぎがするんだ」


『了解。もうすぐホールルーム始まるでしょ。もう切るわね』

それから創は教室に戻ったのち天宮と話せないかタイミングをうかがっていたが、今日に限って移動教室や体育が重なりまるで近づく機会がないまま昼休みとなった。


「おい、創。食堂行こうぜ」

いつものように優が誘ってきた。ああ、といって立ち上がった瞬間強烈な動悸が起こった。

(なんだ……これ)

目の前がかすみ、冷や汗が止まらない。

「おい?」


「悪い。俺今日はいいや」

いうなり教室を飛び出した。残っている中には天宮の姿を見かけなかったからだ。

(俺は何をしようとしてるんだ?)

疑問を感じながらも階段を下り、ある番号へとかけていた。それは昨夜調べていた市内のタクシー会社の連絡先だった。


「あの、すみません。そちらから西高校に着くまでどのくらいかかりますか?」


『大体2分程度ですけど? おたくどちらです?』


「西高の生徒です。遠西病院まで―」

そこでキャッチホンが入った。


「すみません。かけなおします」


『あ、ちょっと―』

一旦着ると、シャウからの着信を受けた。


「どうした?」


『今さっき、天宮さんの家族の人が急いで病室に入っていくのが見えたわ。それと誰かに電話しているようだった』


「くそっ。そうかよ」


『天宮さんには会えたの?』


「今探してるところだ。おそらく電話の受け手が天宮さんなら……!」


『もう向かってるかもしれないわね』


「俺もすぐにそっちに行く。シャウは」


『もう一度様子を見てくる。あとで玄関で落ち合いましょう』


「わかった」

息も絶え絶えに下駄箱付近に行くと、青い顔をしている及川を見つけた。


「あ、創くん……」


「及川……、天宮さんは見ていないか?」


「さっき電話で、お婆さんが危篤だって聞いて……。そのまま外へ」


「出ていったのはさっきか?」


「……ううん。もうちょっと前」

駅までは徒歩では20分以上かかる。事情を説明して車を出してもらった方が早かったのだ。


「わかった。ちょっと俺も抜けるから先生に言っておいてくれ」


「え、ちょっと。創君!?」

靴に履き替え、グラウンドを横切る。正門近くには一台のタクシーが止っていた。


「あなたが連絡をくれた人?」

創を見るなり、呼びかけてきたのは初老の男性ドライバーだ。


「焦るのはわかるけど、電話口ではもう少し落ち着いてね。こっちも混乱するから」


「あ……すみません」


「さあ、乗って。急いでいるんだろ?」

そういうと彼は後部座席のドアを開けた。


「遠西病院だと波松駅で降ろしてもらって、電車を使った方が速いですかね?」


「悪いが次の路線の時間までには間に合いそうもないな」

そうなると次は20分後だ。


「それにどうやら乗り換えの遠野線は接触事故が起きたようでまだ動いていないんだ」


「えっ!?」


「だからこのまま直接遠西病院に向かった方が速いかもしれない」

そうなるともし仮に前の路線に天宮さんが乗れたとしても波松駅で足止めを食うことになる。


「あの。僕のほかにもう一人、西高の生徒を乗せてもらいたいんですが」


「その人も遠西病院に用があるの?」


「ええ。ただ、僕よりも早く出てしまったので、おそらくは前の路線の時間に間に合ったと思うんですけど」


「そうなると波松駅か。わかった、そこで一旦降ろすよ」


「お願いします」


息を整えた創は再びシャウに電話を掛けた。

「……」

しかしすぐに電話はつながったがなかなか彼女の声が聞こえない。


「シャウ? おいシャウ!?」

何回か呼びかけるとようやくシャウが応答した。


『はい、シャウよ』


「やっと出たか。さっきから呼びかけてんのに全然反応しなかったぞ」


『そう? 電波がうまく届いていなかったのかしら』

病院では医療機器に影響がでないようにスマホが使えなくなっているところもある。


「ああ、そうだったな。それで容体はどうなんだ?」


『……家族のちゃんとみているし、医師の方もいらっしゃるようだから』

シャウはあくまで部外者である。あまり近くまでは行けなかった。


「今は手術中か?」


『ううん。病室にいるみたいよ。そっちはどうなの?』


「ああ。今はタクシーからかけてんだ。途中で天宮さんを見つけて一緒に行くつもり」


『……うん、わかったわ。こっちも少し立て込んでるからこれで切るわね。じゃあ病院の玄関前で』


「ああ」

そう最後に言い残して電話は切れた。

運転手の人が「もうすぐ駅に着くよ」と言ってきたので、創は降りる準備をした。


「じゃあ、ここで待っているから」


「はい、よろしくお願いします」

波松駅の周辺はやはり混んでいた。しかし目標は創と同じ制服を着た人間だ。平日のこの時間ならあまり制服を着ている人間が駅周辺にいることも考えにくい。目立つはずだと思っていた。

北口。南口。さらに入場券を購入し、ホームも探したが一向に見つからなかった。


「駅員さん。すみません、俺と同じ制服の女子を見かけませんでしたか?」


「すまないね、ちょっと他のお客さんの対応に追われててそれどころじゃなかったよ」


「ありがとうございます」

目につく駅員すべてに尋ねたが、知る人はついぞ現れなかった。


「あれ、見つからなかったのかい?」

手ぶらのまま戻ると、ドライバーの人は目を丸くして訊いてきた。


「ええ、どうやらすれ違いになったそうです」


「だったら急ごう。もし走っていったのなら途中で見かけるかもしれない」

事故の影響でタクシーの待ち列は長くなっていた。これに並んでいたとは考えにくい。


「どうだい?」


「駄目ですね。もしかしたらもう着いてしまったのかもしれません」

とうとう道中もその姿を見かけることなく、病院の近くまでやって来た。


「料金はまあ……千円でいいよ。先に払ってくれるかい?」


「え……でも」


「さっき駅で止めた時にメーターも消してしまってね。僕のミスだよ」


「すみません」

創は急いで財布から一枚、札を抜くと運転席の横に置いた。

もう一度礼をいって、玄関口まで向かう。シャウの姿はない。


「……」

昨日シャウが天宮を見たといった病棟へ向かうことにした。部屋の番号も分からなかったが、なぜか脚を迷わなかった。そして止った先の扉に掲げられたネームプレートには『天宮』と記してあった。


「……」

手が震えていた。開けることはできない。大体自分は部外者だ。

何か口実を考えようとしたとき、中から嗚咽が聞こえた。


「あ……」



**********



『おかけになった電話は、電波の届かない場所にある、または電源が入っていないためかかりません』

何度シャウの電話にかけてもこのメッセージが流れた。

あの幼女は本当に実在していたのだろうか。

いろいろなことが起こりすぎて少し脳が疲れた。

創は昨日まであったことがすべて幻であったかのような錯覚に囚われていたのだ。


『あのタワーが崩壊するわよ』


今思い起こせば眉唾物の話だ。どうして俺はそれを信じてしまったのだろう。


「あんなロリちびが勝手に言ってることなのにな」

そう独りごちたとき創はラクトタワーの前に立っていた。


「取り敢えず屋上だな」

エレベーターを使って最上階へと昇る。中は特に不審な様子はなく、通常の営業を行っている。

「屋上行って何もなかったら帰るか……」

呟いて、エレベーターの扉が開くと。


「……は」



一本に続く廊下の壁に亀裂が入っていた。一か所が大きくひび割れそこから何本もの筋が入っている。そしてそのひび割れの中央に人がはりつけにされていた。


「……ぁ、う」

男がうめき声をあげると、我に返った創が急いで駆け寄る。


「大丈夫ですか? 意識はありますか?」


「あ、ああ……」

答えられるようなので、創は男の肩を持ち壁から慎重に離した。


「頭うってませんか。いやとにかく急いで救急車を」


「ああ……うちつけたのは幸い背中だけだ」

いうと男はよろよろと立ち上がろうとする。しかし危うい。


「ちょっと!」

バランスを崩しかけた男を慌てて支える。


「なにやってるんですか。じっとしててください」


「しかし……急いで……助けに行かないと」


「助けにって……」

男が指した先には階段があった。


「屋上につながっている……。さきほど小学生くらいの子どもが昇っていた。……そこには私を吹き飛ばした……女の子が」


「それって」


「ちょうどキミと同じ制服を着ていた。……あの子は危険だ」

創はくしゃりと顔を崩すと、男に肩を貸した。


「状況はわかりました。ただあなたもここにいると危ない」

そういってエレベーターに乗せる。


「……救急車は呼びました。ちょっと揺れがきついかもしれませんが、地上まで降りてください。それとこのビル内の人たちに避難するよう誰かに伝えてもらってもいいですか?」


「……いや、でも」


「彼女は俺が迎えにいきます」


「なんだってー」


「俺の役回りなんすよ」

まだなにか言おうと男性は口を開きかけたが、創が奥に入れ扉を閉めた。

それが閉まりきる前に創は後ろを振り帰り走り出した。


屋上に出ると真っ先に目に入ったのは、倒れている少女の姿だ。長い髪のせいで顔が窺えないが天宮で間違いないだろう。そしてその向かい合って反対のフェンスにシャウが磔にされていた。


「おい、シャウ嬢!」

近くによって急いでフェンスから引きはがすと、ゆっくりと目を開けた。


「……来てくれたのね」


「キミこそなんで独りで行った。俺の力が必要だったんじゃないのか」


「予想以上に展開が早くてね。誰かが時間を稼ぐ必要があったのよ」


「……バカ野郎」

創はシャウを抱えると、改めて天宮を見た。


「彼女はどうなったんだ?」


「痛み分けってところね。やっぱり危険な力だわ」


「……力が使えるようになっていたのか?」


「ええ。思った通り超能力ね。念動力で吹っ飛ばされたわ」

それは最低でも意思の力でものを動かす力を有しているといっているような言い方だった。


「彼女、病院には行っていないのか?」


「おそらくね」


「……タクシーの中」


「……え?」


「タクシーの中で俺と電話したろ? でもさ、彼女のお婆さんはその時もう……」


「……ええ。彼女も家族からの連絡で知ったのでしょうね。そしてその時のショックで能力が目覚めた」


「……」


「死に目に立ち会えなかったショックでね」


「誰が……死んだって?」

創たちのどちらでもない少女の声に背筋が凍った。

ゆっくりと立ち上がる少女の瞳には光がない。


「教えてよ……誰が、死んだっていうの?」


「……あなたのお婆さんよ。天宮ひろ子さんが亡くなったっていったの」


「お、おい!」

シャウの発言に思わず創が声を荒げる。

「もうこうなったら、正しく現実を知らしめるしかないの? いわゆる荒療治よ」


「なんで……おばあちゃんが死ななきゃならないの? なにも……悪いことしていないのに」


「寿命よ」


「なんで……わたしは……おばあちゃんが、死んだのを電話で聞かされたの?」


「最後を看取れなかったから。今日は学校へ行ってたからでしょうね」


「なんで……おばあちゃんは……わたしの居ないときに……死んだの?」


「ひろ子さんは最後まで懸命に生きてなさったわよ。それに最後の言葉遺してくださったのでしょう?」


「わたしが……悪かったの?」


「違うわ」


「おばあちゃんが……悪かったの?」


「それも絶対に違うわ」


「だったら、なんで、死ななきゃいけなかったっていうのよっ!」

俺の目の前で、シャウの小さな身体が吹き飛ばされた。


「シャウっ!」

急いで手を伸ばすとシャウはその手を取った。しかし風に飛ばされるようにシャウの体には横薙ぎに強力な力が働いている。


「まったく会話が通じない相手と話すのは疲れるわね」


「お前が言い方が悪い。もうちょっと気を使え!」

そういいながらも出力が高まり、足を引きずられた。


「創。以前変性威の話はしたわよね」


「はあ?」


「断言するケド、彼女のあれは断じて変性威ではないわ。実際にはもっとたちが悪いただの現実逃避もしくは八つ当たりね。大好きだったおばちゃんを奪った不条理な世界に対して駄々をこねてるの」


「今はそれどころじゃないだろうが」


「新凪ちゃん!? もうやめない? おばあちゃんだってこんなこと望んではいないでしょう?」


「馬鹿! それは言っちゃいけないやつだ!?」


「あんたがおばあちゃんを語るなっ!」

案の定出力が上がり、今度こそシャウが吹き飛ばされる。

フェンスに打ち付けてもなお、力を加えてくる。


「いったー。ちゃんと握ってなさいよ」


「無理だっつーの。っていうかそろそろフェンスが折れそうだ」


「あらそうなると235メートルの自由落下?」


「馬鹿死ぬぞ?」

創はヤケ気味に自分のローファーを脱ぐと少女に投げる。少女は躱す様子もなく、念力で靴は彼方へ吹っ飛んだ。その一瞬、シャウにかかる力が弱まるのを見逃さなかった。

手を掴み、抱きかかえると屋上から逃走した。


「なに逃げてんのよ?」

創は答えず、エレベーターのボタンを押す。


「ちょっと!?」


「無理だあれは。職員に避難を呼びかけながら俺たちも逃げるぞ」


「そんなことしたら途中で叫ぶわよ。痴漢に誘拐されるって」


「ふざけんな!」

創の怒声が反響した。


「……キミだって煽ることしかできなかったじゃないか。俺たちであの力にどう対抗するっていうんだよ」

弱音を零した瞬間、ビルが揺れるのを感じた。上から土埃が落ちてくる。


「なんだよ!?」


「どうやらビルの側面に力を働かせているみたいね。このままだと真っ二つよ」


「だったらなおさら早く非難しねえと」


「もう全員を屋外に逃がしてる時間なんてないわよ」

どうしてこうもあっけらかんというのだ。肝が据わっているためか。


「だからあたしたちがここで叩きましょうっていってるの」


「そんなボロボロの状態でなにいってんだよ」


「でもあなたがいる」


「……は?」


「力を貸して」



**********



創たちが屋上に戻ると、天宮はまるで踊っているようだった。破壊を美しそうに楽しそうに行っている。コンクリはミシミシと音をたてて崩壊が始まる。

まったくSFもここに極まったな。


「あら、また来たの?」

天宮は後ろを向きながら、話す。まるで創たちのことは眼中にないように。


「ねえ、このビル割るのやめてよ」

シャウが淡々と話す。


「それは……おばあちゃんがいったの?」


「あたしがいってるのよ」


「じゃあ……駄目ね!!」

天宮は振り返ると、再びシャウを吹き飛ばしにかかる。必死に手を掴むも凄まじい威力だ。指を一つ離れた。


「今度こそ地面まで吹き飛ばしてあげる……!!」

また一本指が離れた時、

「今よ」

シャウの合図。


「…………っ!!」

俺は意識を集中させる。

ここに来る前シャウは言った。


『あたしたちには付け入る隙がいくつかある』


『あるか?』


『一つはあの子が力がまだ全開ではないこと。そして人を吹き飛ばす念力は一つの目標にしか適用できないこと。最後にあなたにその力を見せてしまったこと』


『最初の二つはわかった。でも最後のはなんだ? 俺に力を見られたからってどうなるわけ?』


『いい? あなたの持っている力っていうのはねー』


初めて天宮が驚いたような表情をしている。

それと同時に創たちに掛かっていた圧が消えた。


「ど、どういうこと……?」


「『俺が実際に視認した相手の力を、俺を介してシャウが行使できるようになる』、か。もう少し早く教えとけって話だよ」


「いったでしょ。あなたはいるだけでいいって」

つまりシャウが天宮と同威力同性能の念動力を使っていることで力が相殺されている状態だ。


「そして―」

創は右足を大きく後ろに構えた。脱げかけのローファーを履いている。


「念力の対象は一つ」


「……っ!」

蹴りだされたローファーを咄嗟に対処しようと力の出力先を一瞬、天宮が変更する。

その瞬間、シャウの力が上回り均衡が崩れ、天宮の体は宙を舞って、フェンスへ打ち付けられた。


「……がっ」

天宮が崩れると、シャウはその手を取りフェンスから引きはがした。


「思うところはあったんだろうけど、このくらいで終わりにしようよ」


「……わたしは、」

シャウがすっと手を構えた。嫌な予感がした創は訊いた。


「おい、どうする気だ」


「まだやる気みたいだから、一応失神させておこうと思って」


「そこまですることないだろ」


「甘い甘い。魔導士の恐ろしさを骨の髄まで知らしめておかなきゃ」


「お、おい」


「かくー」

今まさに手を降ろそうとしたシャウの姿が音なくして消えた。いや、飛ばされたというべきかー。


「……テレポート」

創が呟くと同時に少女が立ち上がる。


「終わりね。あなたは何処へ飛ばしてほしい?」



**********



俺にできることはない。悟った創は両手を挙げた。

「……なに?」


「……降参します。俺は戦わない」

そういって明後日の方向をみた。そこにはさっきまでいた病院が見えた。


「最後にさ、命乞いじゃないけど。俺の話聞いてくれない?」


「……いいよ。くだらないと思った瞬間飛ばすけど」


「ありがと」

少し息を吐いて続けた。


「実はさ。さっきまで俺遠西病院にいたんだよ」


「何しに。何しにいったの?」


「平たくいうとシャウとの待ち合わせだった」

言った瞬間、逆鱗に触れたのか後ろのフェンスの一部が吹き飛んだ。

構わず続ける。


「でもシャウはそこに居なくてさ。あとキミもいなかったな。それでどうしようか迷った末に、キミのお婆さんの病室へ向かった。当然入れなかったけど」


「おばあちゃん……元気にしてた?」


「中からは泣き声が聞こえてきたよ。おそらくキミの両親だろう。それで状況を察した俺は立ち去ろうとした」

そこで言葉を区切り、天宮を見る。


「キミさ。お婆さんの最期の言葉って本当に聞いた?」


「……なにを」


「電話口でお母さんが話そうとしたとき、切ったそうじゃないか」


「……いきなり死んだなんていわれて、落ち着いて聞けるわけないでしょ……!」


「そうだと思う。それで話は戻るけど、俺病室の前でちょうどキミのお母さんと会ったんだ。当然素性を聞かれたから、キミを探していることを伝えると『伝えてほしいことがあるって』ある言葉を託された」

少女の顔が真っ青になった。


「それじゃ……なに? あなたはおばあちゃんの最期に言葉を知ってるってこと? しかもなんで、お母さんが、初対面のあなたに話したの?」


「キミのお母さんはキミを傷つけたかもしれない。配慮が足りなかったかもしれないってずっといってた。あの電話のことじゃないの? わたしから伝えたんじゃ聞いてくれないかもしれないって」


「だからってそんなのおかしいでしょ!!」

あたり一面、彼女を起点に同心円状に強い力が働いた。創は飛ばされそうになるがなんとかこらえる。


「……それでこれからその言葉をいう。聞きたくなければ耳でも塞いでくれ」


「えっ、ちょっとっ」


「5秒待つ」

創がカウントを取る間、彼女は狼狽していたが、耳を塞ぐ様子はなかった。


「……じゃあ、いうな」


「……」

天宮は少し怯える様子を見せていた。しかし目はそらさない。


『最後まで傍に居てくれてありがとう』


彼女は信じられないとでもいいたげだった。


「それが、え、そういったの?」


「そう聞いた」


「だってわたし、今日あばあちゃんのところいってないんだよ!!」

その怒声は大きく響くと、余韻を残してゆっくり消えた。


「今日行けなかった! そしてそういう日に死んだ! それで最後まで居た? どういう皮肉よ!」


「……でも先週はずっと病室に通っていた。お婆さんとキミってさ、あまり会う機会がなかったんじゃないのか?」


「……」


「これも聞いた話だけど、家も離れていたし部活動も始まってちょっと音信不通気味になっていたそうじゃないすか。でも入院がきっかけでまた顔を出してくれるようになったって。お婆さんの言いたい最後っていうのは、最後の最期っていうわけじゃなくてもっと……なんていうんだろ、人生の終盤っていうか。もっと長い期間を指しているんじゃないか」

考えがまとまらないまま話すと、ふっと天宮が笑った。


「なにそれ。テキトーいわないでよ」


「……」

結局俺もシャウと同じことをしていたわけだ。

死者の言葉や遺志、気持ちを勝手に第三者に解釈されるのは、遺族にとっては時に不快だろう。

でも天宮は笑っていた。


「これで俺の話は終わり。さあどこへでも飛ばしてくれ」

手を広げていうと、天宮は首を振った。


「おばあちゃんを……飛ばせるわけないじゃん」


「はあ……?」


「思いっきり泣ける場所へ行きたい。ねえあなた連れてってよ」


「知るか。んなもん」



**********



後日ーとある墓地にて。


「あなたの精神系の能力は回収できたけど、もう一つの方はまだ約定が解けてないの。そういうわけであたしの旅について来てもらうことになったからよろしくね」  

シャウが馬鹿をいっている。


「どういうわけだ。了承しねーから絶対」


「あと彼女も連れてくから」

指した先には祖母が眠る墓石の前で手を合わせている少女の姿。


「あの超能力を回収できなかったの。彼女も制御できるようになりたいって言ってるし、問題ないわよね」


「大ありだ。俺たちは高校生だ」


「それについてなんだけどね。新凪ちゃんのもう一つの力が精巧な人間のクローンを作るっていう能力でー」


「クローン人間の作製は法律で禁じられてるんだぞ」


「クーが作った法律なんてクソ喰らえよ」


「彼女が総理に就く前からあるんだぞ」


「いつまで馬鹿話してるの?」

いつの間にか天宮が近くまで来ていた。


「やー新凪ちゃんのクローン能力の方の首尾はどうかと思って」


「上々だと思うよ。まあ、弊害として適用するクローンのオリジナルが中学生相当の身長まで縮むんだけど」


「は、馬鹿なの。え、マジでそういう流れ?」


「早速創で人体実験ね」


「よし」


「おいやめろ」



第一劇 了 

次回投稿予定日は5月4日(金)となります。

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