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最強ロリッ娘魔導士はそうして復讐を誓う  作者: はしばみ
第三劇 意味と起源と新世界
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イーストシティⅡ

店内が混雑していたため、それなりに焦らされてようやくありつけた餌を食べ終えた創に女性の声が聞こえた。


「お水のお代わりはいかがですか?」

机にはピッチャーが置いていなかったために、グラスの中は空になっていた。


「あー、お願いします」


「かしこまりました」

グラスを渡すと慣れた手つきで、水を注いでいく。

トプトプトプトプ……。

小気味のいい水音が続く。しかし長すぎる。気になった創が見ると表面張力が形成される手前まで注がれていた。


「ちょ、こぼれる!」

そういって初めて店員の顔を見ると―


「……あれ?」


「いかがしましたお客様」

ウェイトレスのヒラヒラした衣装に身を包んで、心なしか凄味がある笑顔を張り付けていたのは天宮新凪その人であった。


「天宮じゃん」


「あー知りませんねー。そんな人。あ、よろしければそちらもお注ぎしますか?」


「お願いします」


「おい、スルーすんな!」

手織のグラスに適量を注いだ後、新凪は「わたしはやられたことはそのまま返しただけ」といって不機嫌になっていた。


「だからわたしが料理持ってきたとき、シカトしてくれたでしょ?」


「あー、そうだったの?」


「やっぱりそうじゃん」

追撃に笑ってごまかす創。


「でもあんなに待たせるのにも非はないか? なんだってこの店はこんなに混んでるんだ」


「住民割引があるからでしょう」

アイスティーを飲みながら創にメニューを渡してきたのは手織だ。

確かに料金表が二つあり、通常価格と都市に住む住民とで価格が異なる。


「へえ。でも地元民は随分優遇されるんだな。料金なんて半額以下じゃねえか」


「それだけここで暮らすのは大変なの」

愚痴るかのような口調で新凪は創らと同じテーブルの空席に座った。

おい、仕事中だろうが。


「まずホームレスは許可されてないし。宿も連泊は禁止。あと基本的にはアパートやマンションといった部屋貸しも扱ってないわけ」


「じゃあどうするんだ」


「家を買うか、借りるか」


「あれさっきアパートはないっていってなかったか?」

創が疑問を呈すると、答えたのは手織だ。


「部屋貸しはないけど、借家は取り扱っているってことでしょうね。まあそれなりに高額でしょうけど」


「なるほどビンボー人には冷たい街だな」

他人ごとにような感想を述べた創は、再び新凪の身形を見た。


「それで、天宮は今どういう状況なの?」


「見ての通りこの店のスタッフとして働いてますよ。ま、労働者には優しいから格安で部屋を提供してくれるけどね。ま、不本意だけど」

嘆息ながらに話すところ訳アリのようだ。


「わたしがここで最初に会った人からさ。都市なら人が多くいて、情報も集まるって助言をもらったわけよ。でもさー、ここまでに道のりが長いのなんの」

同じ東部といっても、学校があった辺境部から東の都市まではかなり離れている。


「俺たちも一日がかりだったね、原付で」


「はあ!?」

原付というワードを出すと素っ頓狂をあげて身を乗り出してきた。


「なんでそんなの持ってるワケ!?」


「いや、俺の持ち物じゃなくて……」

視線を向けると、手織がぺこりと頭を下げた。


「初めまして、百浦手織です」


「あ、これはども。天宮新凪です」

遅まきながら自己紹介をしていた。



**********



「つまり創くんは。この食事代を含めてもろもろ百浦さんの世話になっていると。ちょっと見ない間にヒモに成り下がるとはびっくりだよ」


「ちょっと待って弁明させて」


「ねえ、百浦さん。あんまりこの人を甘やかしたら付け上がられるよ。ほどほどに突き放さないと」


「手織でいいですよ」


「あ、ほんと? わたしのことも新凪でいいから」


「おーい……」

創の声はゆっくりと沈んでいった。


「でもそういう事情ならシャウちゃんのこともお願いできるかもね」


「シャウ嬢とはまだ?」


「うん。随分聞いて回ったんだけどね」

少なくともこの町にはいないようだ。


「創くんはシャウちゃんを探してもらってもいい? 多分あの子ならこの世界のことも何か知ってるかもしれない」

シャウ魔導士は別名、異能の力を振りまいた災厄だ。遠因となっている可能性は高い。

それに彼女は常日頃から「魔導士は全能全知。万能な存在」だと謳っているのだ。


「そのつもりだけど、天宮は来れないのか?」


「わたしはここでの労働の拘束期限がまだ溜まってるの」

実は天宮は「ロビーに最寄りの都市まで無料で送迎させる代償として、一定期間強制労働させられる」通称都市タクを利用してしまっているそうで、この店での労働も途中で辞めることは許されていない。


「それにペナルティも加算されちゃって」


「何かミスでもやったのか?」


「いや、あそこの奥にマスターいるじゃない?」

少し大型のロビーを指しているのだろう。

エプロンをつけていた。


「あの人この店の管理者でもあってさ。前一度逃げるようと思って、マスターをテレポートで飛ばしたら治安部隊に取り押さえられて、強制労働が延長になった」


「なにやってんだお前」

次回投稿予定日は6月3日(日)です。


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