教師のいない学校Ⅰ
第三劇一話目。
今回は章の中でさらに節に分かれます。かなり長くなります。
車内でうたた寝している感覚は何ともいえないものだ。特定の振動は人間の眠りに誘いやすいとも判明している。
創は長らく続いていた揺れがおさまると次第に意識がはっきりしているのを感じた。
「…………」
寝ぼけ眼であたりを見回してみる。どうやら自分は軽トラで運搬されていたようだ。
ドアが開く音がしたかと思うと、無機質なロボットっぽいものが手際よく軽トラのアオリを倒した。
「……何だお前?」
それに尋ねてみるが、返答がない。ただ創を見つめるばかりだ。
「降りろって?」
「…………」
頷きもしないが、どうもこのまま視線で訴え続けられても居心地が悪いので創は一度荷台から降りる。
下にはよく乾いた土が広がっている。視界を広げてみると、白線が楕円状に引いてあった。そしてその反対には古びた校舎が構えている。
「……廃校か、これは」
ブロロロロッ。
しばらく呆けているうちにエンジンのかかる音が傍らから聞こえた。
運転席にはロボットがハンドルに手というかアームをかけている。
軽トラは一度バックし、創から離れると来た道をUターンし学校の門から出て見えなくなってしまった。
「…………」
声をかける暇もなかった創はそのままグラウンドへ置き去りとなった。
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まだ陽が高いこともあり、取り敢えず創は学校探索を行うことを決めた。夜だったら絶対にお断りだ。
それにしても状況が把握できない。
まず記憶が断片的に欠けている。確か昨夜は長旅の疲れもあってか宿でゆっくりしようという話になったものの。
『なにこれ?』
『ビジネスホテル』
不満顔のシャウに対して苦笑いをする新凪。
『何でこんな貧しいとこに泊まらなくちゃいけないの? リーマンの出張じゃないのよ?』
『だって、路銀だって限られてるワケだし……。ちょっとでも倹約した方がいいでしょ』
文句たらたらの幼女に懇切よく説明する女子高生の図。
『あたしはこう見えても上流階級ですのよ』
『でも肝心の口座が凍結されてる、と』
『うっさい』
創が口を挟むと、シャウが枕を投げてきた。難なくつかむ。お子様の力じゃふんわりタッチだ。
ニューヨーク銀行に小国を傾かせるくらいの資産をため込んでいると豪語していたが、当然クーに抑えられていた。
『多少はは裏口座にプールしてあるんだから、問題ないわよ』
カードを取り出し見せるも、
『その見た目で使えるの?』
新凪の素朴な疑問に押し黙る。
その様子を見てニコニコしながら頭を撫でる新凪。この子に子供扱いされるのはいいんかいと内心で呟く創だった。
『それじゃあ、俺の鍵ちょうだい』
そういって創が手を差し出すも、彼女は首をかしげた。
『いやもう一部屋借りてるんでしょ? そこの』
『え、ここだけだよ』
天然さんっぽく答える新凪に創は頭を抱えた。
『いやいや……だったら俺どこで寝ればいいの?』
よりによってツインルームを借りおって。
『シャウ抱いて寝れば』
『きゃー』
シャウはほっぺに両手を当ててもじもじとぶりっ子ぶった。
なんて白々しい。
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さてそこまでは憶えている。
「……ああ。結局、シャウ嬢抱いたのは天宮なんだっけか」
廊下は声が響きやすい。創の独り言は反響してまた聴覚野へと戻る。
途端に寂しくなってきた。しかしまったく人がいない様子はなかった。
外見こそ老朽化が進んでいるものの、中は小綺麗なもので誰かが定期的に掃除していなければ保たれないクリーンさだ。
「…………」
創が立ち止まる。
わずかな物音を耳がとらえた。間違いないどこかの教室から床をこするような音が聞こえた。
一応警戒し、足音を忍ばせて音の発信源たる教室の前に立つ。窓は不透明だったが、人のシルエットが映っている。
一つ息を吸って吐くと、ガラガラと扉を開ける。
「失礼しまー…………すう? えっ」
創が入った瞬間、中に居た一組の男女が慌てて飛び退いてお互いの距離をとっていた。
二人とも顔が赤い。
……お取込み中でしたか。
次回投稿予定日は5月16日(水)です。
余裕があれば複数話投稿したいです。




