2.8.8 5歳ごろ
農地の他に、孤児たちのいる孤児院と婚姻男性のいない成人女性が暮らしている施設を見た。
孤児院は教会に併設して作られている。
この話は成人女性の為の寡婦施設が必要な理由と直結する。
嫁に出たはずの妻がどうして独り身に戻るのか?
1つは旦那が魔物に殺されたり、病気や怪我で死んだりする場合だ。
だが、旦那が死んだだけの場合は集落で面倒を見ている。
つまり寡婦施設に住む成人女性は未亡人だけではないのだ。
では彼女たちはなんのか?
簡単に言えば、旦那に捨てられたのだ。
ラオブールさんから聞いた内容によると、聞けば聞くほどに非人道的で理解しがたい異世界の現実を目の当たりにして開いた口がふさがらなかった。
教会があるのだから神の教えに道徳観を教える教本があるかと思ったら、そういった物は無い。
いわゆる教義が存在しない。
この国の宗教は、ただメリーナ様に祈る、感謝すると言うお祈りをするだけで生活に縛りを設けるような教義や教えがないらしい。
貴族の教育は親から子へ、領民を愛し領民がいるから領地が成り立つなど民を大切にする思想を教える教育がある。
平民の間で教えられることはあまり多くない。
もちろん人殺しは悪いことだ。
国のためや民のためでなければ人は殺さない。
そういった教育はある。
だが弱者を守る、じいさんやばあさんと言った老人をいたわると言った基本的な道徳観を教える教育がない。
それは領民達と話していてそういう風に感じる事もあった。
結局、妻が妊娠しない、もう産めない年になった。
そういった理由で妻をポイと捨てる村長や商人が多かったらしい。
それが平民社会で許されると言うのが信じられない。
これは流石に納得できない風習だった。
あまりに非人道的な処遇に、リリアーナ母様は寡婦施設を作り、妻を捨てれば罰する規則を作ったそうだ。
それで捨てられる女性が減った。
それでも領内で増える捨てられた女性達。
捨てられた人はどうやらこの領地の人では無かった。
一時期、通行税廃止にあわせて街道を開放した。
結果、女性を捨てる為に入領する者達がいたらしい。
現在は捨てられる女性を守るために門番を置いて監視するようにしたそうだ。
ただ、境界の穴は沢山あるので抑制効果はあるが、完全ではないそうだ。
いたちごっこが続いている。
それと、領内では新たな問題も起きていた。
どうも村長の妻が早死にする事件が相次いだ。
そしてそういった村長はすぐに若い妻を迎え入れていた。
どうやら役所の調べで妻を殺していたことが判明し、その村長は市中引き回しの上で処刑となった。
それも一つや二つでは無い。
そういった摘発を何度も繰り返し、現在では村で女性が亡くなった場合、隣村の村長が死因を確認するようになった。
もしも女性の死因が不明であればすぐに自警団を呼び出すことになっている。
リリアーナかあさまは、人口を増やすために人頭税をやめて地税に変えようとしていたが、このような事件があったので人頭税を下げ、地税の両方とした。
人頭税は、支払いたくないから領民を隠す村が多かった。
流石に働き手の数を少なくするとばれるので、子供や老人を隠していた。
それに対しても、リリアーナ母様は、老人や子供の人数が多いと補助金として人頭税の返金制度を導入した。
これが実質的な人頭税の値下げだ。
そして、人頭税の確認として、年に1回、戸籍の確認もされる。
その時に、亡くなった人については、死因調査書の提出も義務付けられた。
それが正しく処理されていないと、村長が罰せられる。
こういう地味ーな取り組みで、ようやく女性の立場が少しずつ向上しているらしい。




