2.5.2 王都の土産話
「そうそう、上級貴族だけが集う夜会があって、そこでクリュシュナーダ伯爵にお会いしたの」
「夜会に出たんですね。アメリ姉様」
「ええ、上級貴族だけが集まる夜会は、お年を召した方ばかり。
少しだけ若い方もいたらしたけど、カトレア様とルーナ様が近づかせなかったから大丈夫だったのよ。
それでそのクリュシュナーダ伯爵はレイブリング様と言うのだけど、将軍をされているの。
アナベル様が亡くなられた戦いでも全軍の指揮をとられていたそうなの」
ふーん、リリアーナ母様から何度か聞かされた指揮官のことか。
「見た感じ少しおとうさまのアナベル様に似ていたから、あれって思ったのよね。
そしたらおとうさまとは親戚なんですって。
なんとクロスロードの継承権も持たれているらしいわ。
そのレイブリング様が、リリアーナ母様に指揮の不備でお父様を救えず申し訳ありませんって謝られたのだけど、リリアーナ母様が謝る必要は無いと。
『将軍である貴方がミスを犯し、そのせいで亡くなったのなら謝罪を受け入れましょう。
ですが全力を尽くした結果であるなら謝る必要はないわ』
かっこよく言い放ったのよ。
さすがリリアーナ母様よね。
かっこ良かったわ」
アメリは立ちあがり、声の口調だけでなく、しぐさまでをまねてくれた。
なるほど、これを夜会でリリアーナ母様がやったのか。
内容的には僕に話していたいつもの通りだな。
指揮官を恨むなかれと僕に言ってたし。
「それでその後のレイブリング様がこう答えられたの。
『確かに全力を尽くし、その時の情報では最善の策を打った。
ミスではない。
だが後で集まった情報を整理すると打つ手を誤っていた。
その時に情報さえそろっていればアナベル様を失うことはなかった。
ミスはしていないが後悔はしている』
そう答えられたの、悲しそうな顔で」
またまた、ふりをしてくれた。
ワインを飲んだアメリ姉様のテンションがどんどん上がっているようだ。
やばいな。
「そうしたらリリアーナ母様がこう答えたの。
『わかりました。貴方は心に後悔の傷を負ったのね。
良いわ。
貴方の道を開いてあげましょう。
情報の必要性を理解したなら、次に同じ失敗をしない手を打ちなさい。
私への贖罪はそれで済ませます。
貴方は進みなさい。そのままで。
そして国民の為に、陛下の為に戦いなさい。
息子のジルベールが誇れるような武功を上げなさい。
アナベルが見せるべきだった男の姿を魅せなさい』」
いやー、リリアーナ母様は男前だなー。
「そしたら、レイブリング様はこう答えたわ。
『お任せください。同じ失敗をしないよう努めます。再び後悔をしないように。そして私はもっと強く成長しましょう。アナベル様のお子様方に胸を張ることができるように』
はー、かっこ良かったわ」
どうやらレイブリングさんは最後にこぶしを突き上げて天に誓ったようだ。
ちなみにアメリ姉様がやってもかっこよくはなかったとだけ言っておこう。
酔っぱらって足元がふらついていたからね。




