2.4.8 女王崩御 留守番中のジルベール
「ところでバーニィはいつぐらいから魔法の基礎練習を始めたの」
「王宮魔道士になれるほどの優秀な魔道士でも最初に魔法が使えるのは最年少でも5歳ぐらいです。
私もそのぐらいから教えられていたと思います。
5歳か6歳かは覚えてません。
基礎の練習で魔石に魔力を込めはじめたのはもっと小さかった気がします。
その頃は理由も教えられずにやっていたので。
あれが基礎の練習だったと知ったのはだいぶ後ですね」
「ふーん。ところで無詠唱って珍しいの。
バーニィは普通に使ってるけど」
「ええ、よくぞ聞いてくれました。珍しいのですよ。
ラルクバッハ王国に無詠唱で魔法が使えるのは3人だけです。
私以外のふたりは特定の魔法が無詠唱で撃てるだけだと聞いてます。
私のように複数の属性を無詠唱で撃てる魔道士は他にいないそうですよ」
「それだけ少ないって事は、じゃあ、無詠唱の魔法は使い方も教え方も確立してなんだね」
「そうです。見せて覚えたみたいなので、見て盗めで正しいのかも知れませんね。
それに気になるのは魔力操作ですね。
言われて気が付きましたが」
「そうか。なるほど。
遠回りだけどまずは魔力操作のレベルを上げた方が無詠唱に近づく気がするよ。
あ、魔力庫の魔力がいっぱいになったみたいだ」
「え、本当に私よりも魔力が多いのですね。
魔力庫にある魔石半分を満たしても、まだ余裕があるなんて。
ジルベール様は魔法の才能があるようですから明日からはちゃんと基礎訓練からやりましょう。
と言っても私が基礎訓練したのは10年以上前ですから残念ながら練習方法を覚えていません。
きちんと初心者の本を調べなおします」
「うん。そうだね。基礎は大事だし。
一緒に勉強だね。
それに危ない魔法はメリーナ様に使うなって言われたし。
もうすぐアメリ姉様達が帰ってくるから攻撃魔法は封印だね」
「え、さらっとすごいことを言いましたね。
そうですかメリーナ様とお約束しているなら守りましょうね。
アメリ様を別にしても」
「はは。そうだね。でも発見があって良かったね」
その後でバーニィが調べて基礎訓練に使える魔道具も見つけてきた。
一つは魔力を受けると動くおもちゃの魔道具だ。
魔石のついていない魔道具で、触ると魔力が流れ、魔法陣の丸の上をおもちゃが動く。
魔石が付いていないので手を放すとおもちゃが止まる。
これは、遊びながら魔力の流れを感じられるようになる練習用のおもちゃだそうだ。
とても簡単な魔法陣の構成でできるらしく、初心者用の練習キットを作る書物に書かれて物からバーニィが作ってくれた。
このおもちゃが簡単に動かせるようになったら、魔石に直接魔力を流し込む訓練を始めた。
単に机に置いた空の魔石は、触れただけでは魔力を込める事はできない。
魔力を意識して流し込む必要があり、これで魔力操作の訓練になるらしい。
これが冬の暇つぶしになった。
だが、残念ながら3歳の僕はあまり集中力が無かった。
それほど長い時間魔力操作で遊び続ける訳ではない。
すぐに飽きて本を読んだり、貰った木のおもちゃで遊んだりする。
まだ幼児なのでしょうがないのだろう。
想定よりも魔力操作のレベルアップに時間がかかった。
前世の記憶があるとは言っても、現世の性格は現世の年齢が占める割合が多いようだ。
どうやら年齢より少し上ぐらいの精神年齢になっているようだ。