2.1.5 3歳の誕生日
お祈りが終わってすぐには帰れなかった。
母とメリルディーナ公が神官様と話し合っているからだ。
話し合いの内容は聞こえないが、姿は見える。
メリルディーナ公が時々けわしい顔を見せる時もあったが、ようやく話し合いが終わったようだ。
帰りの馬車の中でメリルディーナ公が僕に話しかけてきた。
「メリーナ様が降臨されたのは100年ぶりだ。以前メリーナ様が降臨された時にその者は加護を得たと言われている。ジルベール、メリーナ様から加護について何か言われてないか?」
「確かに先ほどメリーナ様が加護を与えると言われました。でも何を貰ったのかわかりません」
ステータスが自分でわかると言ってはいけないという話だった。
なのでちょっと嘘をついた。
「そうか、本当は大神官様に鑑定でスキルを見てもらうと良いのだが、そうすると金眼の話をしなければならん。メリーナ様の加護があって悪いことはないだろうから、暫くは不明のままとしよう」
「そうですね。鑑定で見てもらいたいのは山々ですが、ジルベールの命のほうが大切です。両金眼を知られては大変ですからね」
「うむ、そうだな」
大人同士で会話がされていたが、両金眼が知られると命の危険があると言っていた。
この話でようやく少しわかってきた。
だから金眼を隠す魔道具をくれたのか。
そして今まで知らない人に会ってはいけない、と言われていたのも金眼だったからなのか。
両金眼は、神の眼をもらったせいだ。
片側が金眼はおじいさまだってそうだったはず。
片側と両側でそれほどの差が出るのか?
だからさっきアメリがあんなことを言っていたのか。
とにかく、両金眼を隠さなければいけない。
母もメリルディーナ公も僕の命を守るために手を尽くしてくれている。
僕も気をつけなければ。
せっかく転生したのだ。
こんな小さなうちに死にたくはない。
メリルディーナ公から魔道具をもらったし、普段の生活で忘れないに気をつけよう。
メリルディーナ公は、今夜は一緒に泊まり明日帰るそうだ。
家に着くと領主館にある図書室に行き、どの本を読んだか聞かれた。
図書室には100冊ほどの本がある。
そのうちの30冊は読んではいけないと言われていた本だ。
それ以外から50冊ほどの本を読んだと教えた。
メリルディーナ公から、残したい本があるか聞かれたので気に入った数冊の本を示す。
すると侍女が終わった本を片付け始めた。
どうやら本は交換で入れ替えてくれたらしい。
本は貴重品なので、同年代の子たちの家をぐるぐると回っているらしい。
僕が読み終わった本はメリルディーナ公の庇護下にある別の子の家に回される。
そして次に来る本も、子が大きくなり必要なくなった家から送られてくる。
なるほど、貴重な本だからこそ、そういう制度で何軒もの家を回っていた本だったのか。
読みたい希望の本があるか聞かれたので、植物や動物、魔物の図鑑に魔法、魔道具、魔法陣の本が読みたいと言った。
魔法に関しては学園で使うような初級は既にここの図書室の禁止と言われたところにあった。
中級以上は学園でも一般生徒が持ち帰ることはできない。
特に学園で覚えられる以外の魔法書は、代々伝わる魔法を専門とする人の家独自に伝えられている魔法が多く、かなり入手が困難らしい。
ただ手に入らないわけではない。
それに、普通はこの年齢でまだ魔法を使えないので魔法書は必要ないと判断され、手配はするがすぐに来ることはなさそうだった。
それ以外に図鑑はすぐに来るらしいので楽しみだ。