7.4.3 余談:剣神アッシモの戦い
翌日、ティアマト様は魔力の使い過ぎで転移ができないと言うので、賢者様に転移で村へと連れて行って貰った。
竜の魔力回復は遅い。竜専用の魔力を回復させる魔法薬を発見したが毒が含まれているため緊急時以外は飲まないそうだ。その毒も竜には効かないそうだが、薬そのものがまずいらしい。
まあ、毒なのだかまずいのは良かったのかもしれない。
世の中、死んでも食べたい毒ありの食物もあるのだから。
ティアマト様のように綺麗な女性は無理をしないのが良い。
賢者マーリンは200年程前に剣神たちの村に行ったことがあるそうだ。
ジルベール殿も場所を覚えたいからと一緒に付いて来た。
バハムートからの話で、私の村にあったダンジョン内に封印されていたモノは今回の戦いで力を使い切り消滅したそうだ。
だからダンジョンは消えた。
それと共に長く守って来た縛りも無くなった。
まあ、そのために聖獣のクロエもいなくなったが。
成人して以来、妻よりも長い時間隣にいた女性?なのに。急に別れることになり残念だ。
一晩たったが、いまだに心の中にぽっかりと穴が空いている。
そういうわけで、守る盟約もなくなったので、違う場所に移動しても良いらしい。
だが、我らが守って来たあの地は「剣の聖地」として続いて来た歴史がある。
ダンジョンが無くなっても当面はこのままここが聖地として残したい。
過去の剣神たちが守って来たのはダンジョンだけでないのだ。私が消滅させる必要はない。
まあ、土地の縛りが無くなるのだから未来の剣神が場所を変えることはあるかもしれない。神の加護が消えるために、受け継げる者も出なくなるかもしれない。
だが、消えるのは今ではない。
「シルビア。この戦いで私は技の使い過ぎと治しては貰ったが怪我のしすぎで思ったように剣が振るえなくなった。聖女の診断では1年程休めば戻るらしい。だがそもそも、時を止めて切る技と、人ならざるモノを切る技。剣神となるにふさわしいと言われる二つの条件のうち私が取得できたのは人ならざるモノを切る技術だけだった。時を止めて切る技術はクロエから力を借りなければ使えん。だが彼女はもういない。1年の休みを経ても使える剣技は1種のみ、ならば、そなたが継ぐか、クリスタに剣神を継がせても良いと思うのだが、どう思う?」
「元々時を止めて切る技は、過去の私の代で途切れた技です。今代では剣神が受け継ぐ技術は人ならざるモノを切る技術しかなかったのです。私が転生したのは偶然。幸いなことに今世においては時を止めて切る技術をエイミーが継承できました。あなたは、あなたが持つ技術を次代に受け継がせなさい。剣神は義務がなくなり、飾りの地位になりましたが急いで引き継がせる必要はありません。それに今回の村の復旧をクリスタに押し付けてはいけませんよ。剣を振るうのに1年もかかるのなら、ちょうど良いではないですか、事務仕事に集中して体は休めてください」
「やっぱりだめか」
「良いことを教えてあげましょう。実はスザンヌ様が文官を派遣して下さると約束してくださいましたよ」
「なんだって、本当か」
「ええ、彼女はラルクバッハ王国第1王女ですからね」
「そうか、そうか。良かった。剣を使えないからここぞとばかりに事務仕事を押し付けられると思っていたが、良かった。うん、良かった」
「大丈夫ですよ。あなたにすべてを任せたら復興も延び延びになりますからね、それでも体を休めつつでも良いので、最低限の事務仕事はしてくださいね」
帰ってきたらダンジョンを中心にめちゃくちゃになっていた。
ダンジョンを破壊し、外にまで影響が出た。
数体の竜を含めた戦いとは言え、結果がすごすぎる。
ここでも相当な戦いがあったのは、戦いの後を見れば解る。
今回、バハムート様から保障として金銀を沢山貰っては来たが、復旧は大変そうだ。
その後、賢者と共にジルベールが一緒に移動して転移場所を覚え、ラルクバッハから文官と共に剣を学びたいと言う騎士を数名連れて来た。
数年後、クリスタが剣神の技を受け継ぎ剣神となり、ジルベールとは別の隊で魔物の討伐隊を率いて活躍した。
アッシモも剣神の立場を退いた後は、外の世界を見たことが無かった反動なのか、一人自由に世界を回り魔物の討伐をして回ったそうだ。