2.1.1 3歳の誕生日
明日、僕の3歳の誕生儀式が行われる。
この辺りでは誕生日ではなく、誕生月でお祝いをする。
異世界の誕生祝いは結構アバウトだった。
かあさまから明日は僕の後見人になっているファール・フィロ・メリルディーナ公が来ると伝えられた。
誰それ?
リリアーナ母様が言うには、母様が若いときに王都で働いていた時の上司らしい。
とてもとても偉い人なので失礼が無いようにと、挨拶の練習をさせられた。
そして朝、馬車で従者と共に我が家へ来た目の前にいるやさしそうなハゲたおじさんがどうやらファール・フィロ・メリルディーナ公らしい。
すごく立派な服を着ている。
かあさまから言われ練習どおりに挨拶をする。
「アナベル・クロスロードの子、ジルベールでちゅっ。きょおはとおいところからぼくのたんじょおいわいにおこしいただきありがとごちゃいます。いつもたくちゃんのご本をおくってもらってかんちゃしてます」
子供らしい言葉で挨拶をしてみた。3歳の挨拶として完璧のはずだ。
「おお、そうか、そうか。ジルベール大きくなったな。前見た時は赤ちゃんだったからな。ジルベールはもう本を読めると聞いているがどんな本を読むのだ」
ファール様は、自分の孫を見るような優しい言葉遣いで、ご機嫌の笑顔で話しかけてくれた。
とても感じの良いじいさんだ。
姿勢が良く、太ってもおらず、痩せすぎてもいない。
唯一つ。前頭部が残念な状態になっている。
ちなみに残された髪の毛は黒色だ。
「おーちゃまがとなりのくにのおーじょさまをたすけるおはなしとか、しんわをよんでまちゅ」
僕は、笑顔で答えた。
「ほう、あれは絵本ではなかったが、少し難しい字がよめるのかな」
あれ、少し難しい顔になったぞ、失敗したか。まあ適当に流すか。
「はいでちゅ。もらっているご本のもじはよめまちゅ」
「そうかそうか、ジルベールは賢いな、そんなジルベールに魔道具を一つプレゼントしよう」
メリルディーナ公が懐から小さな箱を取り出した。
その箱を受け取るとかあさまが開けるように指示を出す。
僕が箱を開けると中から黒い玉のついたイヤリングが出てきた。
それをかあさまが受け取り、僕につけてくれた。
「この魔道具で眼の色が変わるのですね」
つけた後に僕の顔を見てかあさまが答えた。
へー、色が変わる魔道具なんだ。
自分で見れていないのでわからない。
後で鏡を見たいな。
「ああ、目の色は茶色になるようにしておいた」
ニコニコした顔でメリルディーナ公が答える。
続けて僕に向かって話し始めた。