6.9.3 ジルベール12歳に向けて
翌日は、王宮に鏡の設置に行き、1日で3つの設置を行う。
夕食は王宮で国王陛下御家族とご一緒した。
フィリップ王子との婚約者は年上の二女クラリス様となった。
まあ、理由は察しがつくが。
僕同様、すでに婚約者が2人。
年上のルカレディック王子とマクシミリアン王子は1人しかいないのに、年下の僕とフィリップ王子には2人いる。不思議なめぐりあわせだ。
国王陛下によると、グランスラム帝国の侵略は止まり再度の話し合いが行われているが特別進捗は無いそうだ。
歴史を紐解くと、500年前の大洪水前は、現在のラルクバッハまで進行しブルンスワードの城が守りの拠点になっていた。もちろんその当時の国はラルクバッハ王国ではない。
それが洪水でいったん白紙となり、誰も住まない土地となった。
徐々に復興が進み、300年前には再びグランスラム帝国が侵攻してきたが、ラルクバッハが建国され、そのままシドニアとグランスラム帝国の間にある川を挟んだところまで押し戻し、シドニアが建国され、それ以降と10年と間を空けず戦いが起きていたそうだ。
ただ、今回の消耗はかなりあった。10年近くの時間をかけて育てた転移の魔導士、地竜の部隊、竜、飛竜とグランスラムの最大戦力が奪われたのは間違いない。だから、しばらく大きな戦いが起きることは無いと思っているそうだ。
そうした話を交えながら、食事会は平和に終わった。
いちいち、僕が居る時に毒の混入事件とか起きるわけはないのだ。僕はトラブルメーカーではない。
「エリン君だったか、明日の卒業式後半年ほど王宮で預かるそうだが」
「はい、そう聞いてます。よろしくお願いします」
「フィリップ王子に付けるコレットと共に王宮の教育プログラムを実施するそうだ。侍女教育の全容は余も知らんのだがこれほど近い国であっても、文化や習慣に少し違いあるらしいな。最終的な教育はラルクバッハで実施するそうだ。まあ解らんが、大変らしい、二人に会った時にはねぎらってくれ」
「わかりました」
そして翌日の卒業式を迎えた。
朝早くからエリンとグランフェスタ様が支度をして、いつもより少し遅めの時間に出発。
女性の支度時間に合わせて開会が昼直前になっているのだ。
もちろん、エリンの姿はとってもかわいかった。
年上なのだが、この半年でさらに身長が伸びた僕と殆ど同じ身長、すでに僕の方が背が高いぐらい。つまりエリンは12歳くらいの身長なのか?
グランフェスタ様?
もちろん綺麗に着飾ってました。立派な大人の女性です。エリンも部分的には大人です、ちゃんと。
学園に到着すると二人は会場へ、僕とオニール様は招待客の席に移動した。
学園長と思われるおじいさんの長い話を聞いて、卒業生代表としてグランフェスタ様がその数分の一の時間の話をして式が終了した。
あれ、卒業証書の授与とか無いんだ。
午後から、学園内に用意された会場でパーティが開かれ、僕とオニール様はパートナーと一緒に参加なので僕はエリンの隣にいます。
途中で1曲ダンスもしました。
1人としか踊らないのはルール違反らしい? マナーに反するのかな。なので、エリンは、同級生の弟さんたちと踊り、僕は妹さんたちと踊りました。
グランフェスタ様とか、ルビースカリナ様は、年上の殿方から大人気でしたので、僕とは踊ってません。
数曲踊ると疲れたので終了。
10km全力で走れるのにダンスで疲れるのか?
精神的に疲れるのです、相手の足を踏まないようにと、踏まれても痛い顔を見せずに踊らないといけないので。
夜は、2次会? 別途グループごとに呼ばれてパーティがある。
僕とエリンはグランフェスタ様に呼ばれブリューネワルト公爵派閥のパーティに呼ばれている。
卒業式関連の参加者は僕のように未成年が多いのでお城でパーティとはならないようだ。
そういったパーティは明日から行われるそうだが、婚約者が決まっていない人と決まっている人では参加するパーティが違うのだとか。
エリンも婚約者が決まっていないので、パーティに行くのかと聞いたら、専属侍女は、専属として雇った主がすべてを用意するらしいのでそんなパーティに参加する必要は無いそうだ。それよりも今はお仕事を覚えるのが重要だと言うことだった。
なるほど。
「あれ、じゃあ僕も専属護衛だからパーティで自分で見つける必要はないってこと」
「エイミーは探しに行ってたの?」
「一応、今でも毎年王城のパーティに1年に1回参加してるよ」
「そうだったんだ」
「じゃあ、ジルちゃんよろしくね」
「あ、私もお願いします」
クリスタまで頼んできたぞ。
だがよく考えると、エイミーとクリスタを婚約させれば2人同時にお仕事が片付くな。
よし、全く心が通ってない状態では進められないから、今後はそういう風に考えておこう。
「任せといて」
手っ取り早く近場で済まそうと考えたので、笑顔でそう答えておいた。