6.8.3 ゴブリンの襲撃
急いで街に戻る。
こちらはほぼ同数の騎士を運び込んでいたので問題なくオークたちを倒せたようだ。
数は一緒だが新人たちが混じっていたので少し不安だったが、こちらは剣と盾を持った騎士であちらは持っていても木の棒なのだから負けるはずはないのだが、数匹の上位種もいたようなので気になっていたのだ。だが、こちら側優勢で終わったようだ。
そして、こちらもゴブリンの死体が残っていたがオークの死体は消えていた。
つまり、ゴブリンは迷宮産ではなく、オークは迷宮が生み出した魔物だったようだ。
数名の怪我人の治療を終わらせ、隣町に行くことにした。
10㎞なら、馬で行くよりも自分で走った方が早いか?
そう思い走った。
全速力に近い速度で10kmを走り抜けるのは少々きつかった。
到着後、息を整えながら魔物が居そうなところへ移動。
見ると、先ほどと同じようにゴブリンの死体。そしてところどころに大きな穴があった。
どう見ても魔法による攻撃後だ。
「お、ジルちゃーん、こっちこっち」
声がした方を見ると、エイミーとクインさんだった。
「エイミー、終わったの?」
「終わっちゃったよ。コハクちゃんは怪我人の治療中ね」
「エレノアは大丈夫なの」
「外傷はないよ。多分魔力切れかな」
「魔力切れ、戦ったの? え、これはクインさんじゃないの?」
「いくつかは私ですけど、大半がエレノアの攻撃よ」
「へー」
大半がエレノア?
「あれもエレノアの土魔法での攻撃でね、みんなが集めた石を混ぜ込んで無詠唱でバンバン撃ってたんだよ」
「へー」
無詠唱でバンバン?
「でね、あっち側の上位種は僕が倒して、こっちの方はタロウちゃん。で、この大きな魔石の上位種は、なんとクリシュナ様が首を落としたんだよ」
「へー」
クリシュナって素振りぐらいしか見てなかったけど、そんなに実力あった?
「ジルちゃん、さっきからへーしか言わないね」
「へー っていやそうじゃなくて、それで、クリシュナ様は? 大丈夫なの」
「彼女も外傷はないよ。身体強化の使い過ぎだと思うけどね。あと魔力も使いすぎたかもね。魔剣使ってたから」
魔剣、なんでそんな物持って10歳式に来てたんだ、意味不明だ。
うーん、良くわからん。
「それでジルベール様、この後どうすれば良いのですか?」
「クリスタから状況は聞いているの?」
「隣町も襲われたのでしょう、大丈夫なのですか?」
「そっちは倒してきたからもう良いよ」
「クリスタ様からは1000体ほどと聞きましたけど」
「ああ、大半は僕の攻撃魔法使って倒したけど、ここみたいに土地がぼこぼこになったから、最後にイシスの水で全部流して平坦にして終わらせたよ。小屋は全部壊れたよ。後でいろいろ言われるかもね」
「1000体の魔物をお一人であっという間に。さすがですね」
「ここも綺麗にしておかないと、来年、麦を育てられないよね」
「そうかもしれませんね」
「大丈夫、直しておくよ。このぐらいならイシス使わなくても大丈夫だから」
僕はそう言って、ぼこぼこの土地を魔法で修復した。
そうして、休憩所へと足を運ぶ。
エレノアは、魔力不足でダウン。
クリシュナ様は身体強化の使い過ぎで筋肉がボロボロ。
コハクによると、全回復させると鍛える効果が無くなるし、痛みを覚えないとまた上限を超えるような事をするので痛みが残る状態で回復させたらしい。
「どうする? 皆戻るのなら王都に連れて行くけど」
「どうだろ、お嬢様達は怪我をしてないし、続けるんじゃない。明日の朝に出発できれば1日遅れなら挽回できると思うけど」
「そうなの?」
「うん、エレノアちゃんとクリシュナちゃんは前に立ってたけど他の子達もエレノアちゃんが使う石をぎりぎりまで集めてたし、割と近いところから応援の声が聞こえてた。皆、心構えもしっかりしてるし、度胸あるし、強い子達だよ」
「そうなんだ」
「それより、危険は無いと思って参加してた数合わせの護衛の方が心配かな」
「進めない護衛がいるなら集めておいて、明日、また来て王都に連れて行くよ」
「わかりました。では、ジルベール様。ガルダ様で近隣の状況を確認して頂いてもよいでしょうか」
「ああ、そうするよ。ガルダ行こうか」
「僕は?」
「エイミーは休憩しておいても良いよ。クリスタはそのままコハクの護衛に付けておいて」
「わかったよ」