1.2.3 転生者A
「どうしますか? 異世界に行きますか?」
「それは、断れば元の世界に戻れるということですか」
「いえ、あなたはあちらで既に死んでいますから、元の世界に魂を戻せば消滅します」
どうやら答えは1択だ。
そのまま死んで消えたい人もいるだろうから聞いてくれたようだが、もう一度チャンスがあるなら生きたい。
それが自分の望みだった。
「異世界に行きます。お願いします」
「ああ、良かった。たまにいるんですよ。断る人が。では異世界への移動についてもう少し詳しく説明しますね」
そしてこれから行く世界について説明してくれた。
もちろん転生者が何人もいたのである程度の文化レベルもあるし、貴族の住む家では魔道具があるのでそれなりに暮らしやすい世界になっているようだ。
下水などの仕組みは伝わり街づくりとして伝承されている。
冷蔵庫の代わりをする魔道具はあるが、テレビなどの情報機器それに車は無い。
総括すると鉄が貴重品らしく、そういった分野はあまり発展していない。
おおよそ今まで住んでいた世界に対して数百年遅れた社会で停滞している。
そして最大の違いが、魔法だ。
魔法がある世界なのだ。
しかし、かつてかなり魔法が進んだ時期もあったが、それらの技術はとある事件で失われ最近は少し後退したらしい。
そのために、現代社会の科学に置き換えできるレベルにはなっていない。
メリーナ様が送り込んだ転移者や転生者が便利な魔道具を開発し多少住みやすくなってきたらしい。
「おー、魔法があるのか」
生粋の理系人間にとってはものすごく興味のわく話だった。
転生後の人生は、魔術学者を目指したいと新たな人生設計を思い描いた。
「興味を持てそうですか。それは良かったです。さてそろそろ加護を与えようと思いますが、加護は、私との相性が良いほどたくさんの力を渡せます。あなたは私と相性は良い気がするのでたくさんの力を渡せそうです」
そう言ってメリーナ様は眼を閉じて何かを始めた。