6.6.4 宝物庫の秘密
さて、部屋に着いたがどうすればよいのだろうか。
「ジルベールが最初に管理機を起動させて新規登録者を選んで頂戴、そうしたら交代よ」
なるほど、メニューから新規登録を選べばよいのか。
しかし、墓石と呼んでいたがエマーシェス様が管理機と呼んだ。確かにそういう機能はあった。ただ墓石にしか見えないのだが。
『ご用件はなんでしょうか。新たなメッセージの記憶が可能です。次に来訪者の履歴情報閲覧、登録者情報の閲覧。新規登録用の魔石排出、新規登録、登録者の削除が可能です。いずれの機能を使用しますか?』
「新規登録」
『新規登録を行います。登録者に交代してください。登録終了後再びこちらにお戻りくださり、登録者情報の確定を実行してください』
使い方を親切に説明してくれた。メッセージに記憶に、決められた言葉とは言え、流調に話すこのシステム、既存の魔道具は全く違う物だ。エルフ、すごい技術を持っているんだな。
墓石、じゃなくて管理機から離れてエマーシェス様と交代した。
しばらくすると登録が終わったらしい。途中で魔石も回収されていたようだ。
最後に、僕に交代して確定すれば良いのだな。
『新規登録者をエマーシェス・ラルクバッハの名で登録しますか』
ふと気が付いた、では僕の名前は何となっているのだ?
「登録する」
『続いて、新規登録者の権限について、下級宝物庫の扉、中級宝物庫の扉、上級宝物庫、聖剣の宝物庫、どこまでの権利を付与しますか?』
どこと言われても。
「王妃様、扉の権利と聞かれましたけど、全部で良いですか」
「ええ、そうして頂戴、権限が制限されると、私が新しい権利者の登録で権利が付与できないから」
「全部だ」
『すべての権利を付与しました。他に用件はございますか?』
「自分の登録情報を確認したい」
『了解しました。あなた様はシン・ラルクバッハで登録されています。保存されているメッセージは1件。来訪の履歴は同日の情報を除くと321年前になります。時間は内部時計を用いているので5%前後のずれが生じます。聖剣の宝物庫を含めすべての扉の開放権利を所有しています』
内部時計に安物のデジタル時計並みの精度があるのと言う事実に驚いた。しかし前回から321年も経過しているのか。そして名前がシンだった。
「登録者の名前を変更できるのか」
『できます。生きている間に名前が変わることは想定された機能です』
いや、普通にできますと答えれば良くないか。
ちょっと自慢げに言うところが、なんか機械ぽく無い。
さて、名前か、今変えても、もうすぐ苗字変わるし。
今は良いか。今の僕は王族じゃない。この後で消されるかもしれないし。
『名前の変更をしますか?』
「いや、今回は必要ない」
『他に用件はございますか?』
「いや、ない。これで終わる」
手を放して、墓石から離れた。
「出ましょうか、マリア達が待ってますから」
「その前に、聖剣の扉を開けて頂戴。中を確認しましょう」
「え、陛下が確認したのでは?」
「私も確認するように言われたのよ」
「そうですか、ってどこですか?」
声を出したら、墓石の奥にある壁が一部光った。
管理機が教えてくれたらしい。
壁の前に立ち、丸い石に触れると小さめの扉が開いた。
中に剣が入っている。
これが聖剣なのか?
「手に取ってみて」
「え、僕がですか?」
「わたくしに持たせるつもり?」
いや、カルスディーナ公爵の血筋でスザンヌの親なのだからバリバリの剣使いだと思うのだけど。
言われた通り、剣を取り出してみる。
両手剣、大きさは通常の件よりも少し大きい。
鑑定の結果は、勇者の剣
「あれ、聖剣って、鑑定では勇者の剣と表示されますけど、合ってるのですか」
「ええ、ラルクバッハ初代の王であったシン様が使っていた剣で間違いないわ。時を止める効果のある場所にあったから、痛んでもいないようね」
確かに、痛んではいない。そして、触った感じでわかる。これメリーナ様が作った神剣だ。
僕の神石と同じような感じがする。これはさっさと戻そう。
「確認が終わったのなら戻しましょう」
「あなたなら持って行っても良いのよ」
な、なにを言うのだ。いや確かに初代の剣なら僕の物なのかもしれないけど。
「いえ、今の僕には大きすぎます。成長しないと使えません」
「そう、なら成人したらあなたが使うと良いわ」
「王太子が継承しないのですか?」
「勇者の称号が無ければ使えない剣なのでしょう?」
そう言われて、もう一度確認をする。
確かに。
「勇者の称号が無ければ剣の効果は発揮されないみたいですね、攻撃力増大、速度増大、限界突破。攻撃系の高い効果が付与されるみたいですね」
さすがメリーナ様の作った神剣。すごい能力値だ。
「その剣は、使える称号を持つあなたが使えばよいのよ。代々の王が使っている剣と防具は別のところに保存されているわ。だから気にしなくても良いわ」
「そういのは宝物庫に入ってなかったんですね」
「ええ、国宝の宝石は役人が管理している所にあるし、王族しか入れない宝物庫は余所に見せられない物を優先して入れているのよ。今の新しい宝物庫は大半が機密書類よ」
「ここには絵画とかもありましたよ」
「歴代の王族達の肖像画が大半でしょう。捨てられないわ」
「なるほど」
僕は剣をしまって、王妃様の元に戻った。
「では出ましょう。マリア達が待ってますから」
「ええ」