6.6.3 宝物庫の秘密
扉の前に来ると、入って来た時と同じ丸い球が見えたので、そこに触って魔力を込める。
すると一瞬で扉の外出たようだ。
国王と王妃達が待っていた。
「どうであった?」
「魔石は取って来ましたよ。二人も出てくるので扉から離れましょう」
スザンヌ、マリアテレーズも無事に出て来た。
「陛下、穴と言うのは、前世で登録された人が入れると言うことですね」
「ああ、そうだ」
「陛下は僕らが入れる思っていたのですか?」
「うむ、エマーシェスが完全ではないが前世の記憶があるのは知っておる。そなたら3人も前世持ちなのは間違いがない。エマーシェスの前世は王族ではなかったが、3人のうちいずれか入れることを期待しておった。この宝物庫は、成人した王族が登録するのだが、前代女王の時からこの宝物庫は閉じられたままだったからな」
「どうして?」
「誰か入れる者が居なければ、新規の登録ができんだろう。前女王は毒殺によって生き残った成人済みの王族として戻ってきたが、婚姻によって一度王家を出ておるからこの宝物庫の登録が消されていたのだ。つまり、全ての王族登録が途絶えたのだ」
「なるほど。では、部屋に入るとまっすぐ奥に登録の魔動具があります。両手をつけば動くはずです。魔石は3つですが、誰が入るのですか?」
「一度行けば、もう一人増やせるのだろう」
「新規登録後は1年間登録者用の魔石は出せないそうです。僕らも1年間のインターバルがあります」
「そうか、ではわしと、エマーシェス、それにアンジェリカが登録しよう」
「エミリア様ではなく」
「私は妊娠したばかりだから、動けないわたくしが急いで登録する必要はないでしょう」
「え!」
「お母さま、妊娠されたのですか」
「ええ、今度こそ女の子を産むわ。待ってなさい、かわいい妹を」
「お、女の子ですか?」
「もう、男は2人育てたもの、次こそは絶対に女の子よ」
「エミリアは、スザンヌを自分の子供のように育てていたし、マイアーロッセも着せ替えを楽しんでいるじゃない。まだ満足してなかったのね。自分の子供だからと言って、今以上に構えるわけでは無いのよ」
「もちろんよ。マリアもシミュットも含めてかわいい子は何人いても良いわ。男の子はだめよ。ほんと、何を着せてもかわいくないのだから」
「お母さまは、フィリップにも女の子衣装を着せて楽しんでいたでしょ。それを似合わないなんて、かわいそうに」
「そうね。でもしょうがないでしょ。着せたかったのよ。でも似合ってなかったのよ」
「わかっていたのなら、男物を着せれば良かったのでは」
「それはそれよ。良いじゃない。とにかく次は女の子よ」
こういうことを言うと、必ず男の子が生まれるような気がするが、言うのは止めておこう。
さて話が横にそれでなごんでしまったが、誰の生まれ変わりとか言う必要はないような雰囲気になったので、このまま黙っていよう。
「では、わしから登録に行ってくる」
「3人で行かないのですか?」
「前の登録者共に、新たな登録者は1人しか入れない。登録者は一人いれば良い。スザンヌ付き合ってくれ」
「はい、お父様」
「じゃあ、次は私ね。ジルベール一緒に入りましょう」
そう言われたので、僕の魔石はエマーシェス様に渡した。
しばらくすると、スザンヌと国王陛下が戻って来たので、僕と第2王妃のエメーシェス様が中に入った。
中に入ると、その空間がゆっくりと明るくなっていく。
「ここが古い方の宝物庫なのね。今の物とは少し違うわね」
「もう一つあるのですか」
「ええ、前女王の時に入室できなくなったから新しい物をエルフから購入したそうよ」
「その時に、古い方に入出できるようにできなかったのですか?」
「作成者が残って居たら入れたそうよ」
「300年前に作られたから存命ではなかったのですね」
「いえ、この設備は他国で使われていた中古品だからもっと古い物だったのよ。前の登録者を削除して再利用したらしいわ。建国当時のラルクバッハは貧乏だったはずよ。それにシドニアの宝物庫は建国から100年後に導入しているのだから、エルフが建国の記念に中古を譲ってくれたのは、運が良かったのよ」