6.5.2 妹が生まれた
食堂に入ると、リリアーナ母様と、その隣にアメリ、そしてレイブリングさん、それにヘイゼル夫妻も一緒だった。ヘイゼル夫妻は昨日の婚約式にも参加していたのでレイブリングさんと一緒にこちらに移動していたのだろう。
「かあさま、とうさま」
ティアマトから離れてクインさんのところにニナが走って行った。
エレノアは、その後をゆっくりと近づいて行く。
「「ニナ、淑女が走ってはだめよ」」
「はい、お姉様、お母さま」
二人から同時に注意されていた。
タイミングが一致するのは親子だからだろうか。
それを横目で見ながら、僕はリリアーナ母様の方へとマリアを連れて進む。
「リリアーナ母さま、戻りました」
「無事に戻って来て安心しました。マリアテレーズ様も、古い家で申し訳ありませんが、歓迎します」
「リリアーナ様、滞在中、よろしくお願いします」
そう挨拶をかわして、すぐに隣のアメリの方が見る。
うわ、めちゃくちゃお腹が大きい。破裂しそうだ。生まれる直前はこんなに大きくなるんだ。
「おなか、大丈夫なのですか?」
「ふふふ。ジルベールも驚くことがあるのね。ええ、大丈夫よ。これぐらいの大きさは普通のことよ」
「経過は?」
「順調よ。産婆の見立てでは、数日以内には生まれるそうよ」
「そうですか、間に合ってよかった。今日はマリアテレーズも一緒です」
「アメリ様、ご健康そうで何よりです」
「マリアテレーズ様も」
「はい、生まれるまではお近くにいますので」
「聖女様に見て貰えるなんて、嬉しいわ」
「私は、まだまだです。コハク様に教えて貰ってばかりで」
「いえ、残念ですが、わたくしは出産の経験はありませんし、人族の出産には立ち会ったことがありません。申し訳ありませんが出産に関してはお役には立てないと思います。ティアマト様はどうですか?」
「竜族の出産には立ち会ったことがある。だが、人間と竜で違うなら知らんぞ」
「竜の出産って、もしかして卵を産むの?」
「いや、我らはトカゲではないぞ。人の子と同じだ。そもそも私の母親は人間だ。人との間にそれほど違いがないから人との混血が成立するのだろう。他の竜族も出産の時は人の姿で産んでおるし、生まれた子供の人の姿をしている。だから同じだと思うぞ」
「え、そうなんだ」
「まあ、竜族のことは部外には知られておらんから、知らぬのも当然だ。我らは生まれて5歳から10歳ぐらいになると竜に変身できるようになるが、20歳ぐらいまでは1日の大半が人の姿だ。そして80歳を超えると1日の大半を竜の姿で過ごすようになり、100歳が竜としての成人だ」
「ふーん。じゃあ竜って爬虫類じゃなくて哺乳類なんだ。竜の姿の時に乳らしき物が無いから爬虫類側に近いのだと思ってた」
「なんだ、爬虫類と哺乳類とは?」
「正確な言い方じゃないけど、今の話に直結した分類を言うと、水中ではなく陸に住み、卵で産まれて、幼少期に乳を与えずに育つ種類を爬虫類。出産し、乳を与えて子育てをする種類が哺乳類」
「そう言えば竜の姿の時にはそのような物も含めて男女共に区別は無いな。せいぜい大きさぐらいか。ふむ。まあそういうことだ。ゆえに、私は仲間の出産に何度か立ち会ったことがある。竜族の女は少ないからな。皆で助け合って出産し、育児も皆でするのだ」
「あ、そうだ。リリアーナ母様、アメリ母様、報告です。エイミーが剣帝の昇格、僕も剣王になりました。で、後は予定外のことですがトシアキが師範として免許を貰ったので、残念ですが国の組織に取られることになりました。引継ぎ期間は1か月です。かわりと言えるのかよくわかりませんが、こっちがクリスタ。エルドラ王国の剣士でエイミーと同じく剣帝に昇格したばかりです。僕のところでしばらく面倒を見ることになりました。護衛の引継ぎは彼で良いのですが、それ以外の業務は別の人に引継ぎをした方がよいかと。なので、事務仕事ができる文官が欲しいです」
「そうね、トシアキには護衛以外にも仕事をしてもらっていましたね。わかりました。そちらの引継ぎは私に任せなさい。オブスレイ、候補はいますね」
「はい、大丈夫です」
さすがオブスレイさん、春に移動して来たばかりなのにすでに人事を熟知しているのか。
その日の夜は、楽しく食事を済また。
「じゃあ、クリスタは寮に。トシアキが案内するから。朝は訓練をするからここに集まって。午後は生活品とか買わないといけないだろうから、お休みにするよ」
「わかりました」
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