1.13.6 後見人
「まあまて、早急に決めるでない。せっかくじゃ、ワシの話も聞いてから判断してくれ。さて、ジルベールの母であるリリアーナは知ってのとおりワシの庇護下に居る。以前女王陛下からも表彰をされたこともある。知っての通り彼女は女王陛下のお気に入りだ。それは良いな?」
「ああ、それは知っている。子を見に行った時に気がついた。女王陛下自ら紹介した女性はそういないからな」
オルトディーナ公爵が言う。
だが何を言い出すんだこの爺と顔にはっきりと書かれている。
それを無視し何も答えないカルスディーナ公爵を見る。
「知っておる。領内にいるのだ。把握しているにきまっておる」
意外にもカルスディーナ公爵は冷静だった。メリルディーナ公は話を続ける。
「彼女は、学園でもトップの成績だった。ワシと同じくフィロのミドルネームを持つ。そして文官として秀でた能力を持っていた。女王陛下のお気に入りで王都商業ギルドを成立させ税収も増え商業も安定させた。現在の王制安定への貢献材料の一つでもある」
「なにが言いたいのだ、ジジイ」
オルトディーナ公爵がいつもの調子で話しかけてきた。
恐らくは、今までの数多くのワシとのやり取りでこの話の結末が先ほどの結論から逆転されるのだろうと察しているのだろう。
奴がワシにジジイと言う時は降参した時に使う合図なのだから。
カルスディーナ公爵よりもオルトディーナ公爵の方が年上で、当主としてワシとのやり取りをした回数が多い。幾度となく繰り返されそのたびに返り討ちにされたオルトディーナ公爵は最近すぐに降参するようになった。
そして、オルトディーナ公爵とカルスディーナ公爵の2人ともに第2夫人がワシの子供だ。カルスディーナ公爵はセルニアに早々に尻に敷かれ、ワシに反論する事も無い。
「では、結論を言おうか、そのリリアーナの子であるならば、ワシの後継者となれるだろう。成人してから選ぶと言うならばワシも混ぜてほしい。そしてお主たちは侯爵の爵位を用意すると言うが、ワシの場合はワシの後継者つまり公爵位じゃ。金眼であるならば公爵の地位になるには十分な条件であろう。つまり筆頭後見人はワシということじゃ。文句はなかろう」
そう言い切り、2人にニヤリと笑ってみせた。
オルトディーナ公爵はやっぱり、という顔。カルスディーナ公爵は、やられたという顔に変わった。
ふたりはいきなり公爵位を譲ると言われては格が違うと早々に降参し話の続きを黙って聞いた。
結局3人の話し合いで、筆頭の後見人はワシ、メリルディーナと決まった。
最終的にはジルベールの意思がはっきりとしてから決めることになった。
期限は10歳までだ。
ここで支援を打ち切れば選択肢にすら入らない。
ならばそれまでは3人が後見人として協力する。
リリアーナは現在の女王陛下のお気に入り。
無意味に騒いで女王陛下の機嫌を損ねてもまずい。
ふたりは即座に妥協し決着がついた。