6.3.10 昇格試験
「ジルベール様、本日は剣王試験に合格されたとのこと、おめでとうございます」
「エリン、ずいぶん遅くに。いままで仕事してたの?」
「いえ、仕事では。先ほどまでコレットさんと一緒に王妃様の専属侍女の方々から様々な指導を受けておりました」
「もしかして、こっちに来てからずっと?」
「彼女たちも忙しいですから空き時間を作って指導してくださっていますので。ですから空き時間の方が多いのです。ですから早朝や遅い時間の指導になっているだけで」
「そういうことか。それで今日は?」
「はい、コハク様と一緒に今日はこちらでジルベール様のお世話をするようにと。エイミー様もご一緒殿ことですし」
「あー、そうなんだ。じゃあさっさと着替えて寝よう。僕も疲れちゃったし」
そう言って衝立の奥に入り、さっさと寝間着に着替えて出て来たエイミーは迷うことなく僕のベッドの端に入って行った。
コハクは狐の姿になり、足元側で丸くなる。
「ほら、ジルちゃんは真ん中ね」
ポンポンと布団を叩くエイミー。
まあ、王城のベッドは自分の家のベッドよりもさらに大きくて、3人どころかもっと沢山並んで眠れそうなほど広いけど。
まあ、気にしてもしょうがない。
僕はベッドの真中へ入り込み、目を閉じる。
消音の魔障壁を張り、いつも通り英知のスキルを使って異世界の知識を検索した。
今日は剣王の試験があり、多少の魔力を使ったがまだ魔力に余裕がある。
調べ物に集中しているとエイミーと反対側が動いた気配があった。
ちょっと横を見るとエリンが布団に入り、恥ずかしそうにこちらを見ていた。
「静かでしょ」
その声は反対側に居たエイミーからだ。
「え、そう言われてみると、柱にある時計の音もしません」
「でしょ。ジルちゃんの魔法なんだよ」
「防音の魔法を使っているのですか? ずっと」
「そう、寝てる間もずっと使ってるんだって」
「寝ている間も、そんなことができるのですか?」
「うん、ジルちゃんだけじゃなくて、コハクちゃんも寝てる間も結界の魔法を使ってるんだって」
「さすがですね」
「エイミーも無意識に気配探知してるでしょ」
「まあ、してるみたいだけど。まあだから余計に変な音とか気になってさ。ジルちゃんの横で寝ると、雑音がしないからやっぱり休めるんだよね」
「そうですか」
「エリンがいると、微妖精達が多く集まる。結界を張るのが楽」
狐姿では殆どしゃべらないコハクが足元で短い言葉で伝えて来た。
ふーん、やっぱりエリンがいると何となく空気が違う気がしてたけど微妖精が多く集まっているのか。
僕の目は、もう少し大きく成長しなければ見えないようだが、妖精の元と言われる物が近くにいるようだ。
「イシス様やガルダ様は?」
「さあ、今日はサフィーナ様も泊まっているみたいだから、そっちに行ってるんじゃないかな」
「ジルベール様と契約されているのですよね。イシス様とガルダ様は」
「まあね。でも僕が契約している他の魔獣達も勝手に生活してるから、僕の召喚契約はそんな感じのゆるーい契約なんじゃないかな」
「そうですね。ジルベール様とつながっている感じはしますが、特に制約は感じません」
コハクがそういうのだから、きっとそうなんだろう。
そろそろ魔力が減って来たし、寝よう。
「じゃあ、おやすみ」
「はい、おやすみなさい」




