6.3.2 昇格試験
すぐに面会の時間が終わり、僕らは移動。その日の夕食はラルクバッハの王族や公爵様はばらばらに別れて国賓達の対応をしているそうだ。
僕らはそういった面倒ごとはなく、いつも通り子供達だけでの食事が始まった。
「ジル様、試験とはどのような物なのですか?」
マリアテレーズが質問をしてきた。
「剣王の試験は剣王を1名倒すか2名を引き分けになれば良いらしい。エイミーは当時の剣王を1人倒して、もう一人は引き分けで剣王になったそうだよ」
「では、エイミー様の剣帝は?」
「複数の剣王を相対して倒すこと、後は2名の剣帝と戦う。条件は剣王と一緒だね。剣王は2名と負けても内容次第ってこともあるらしいけど。剣帝は負けたらだめだって。ステパンとは引き分けに持ち込んでるから、シルビア様と引き分けになれば剣帝になれるんじゃないかな。時間制限あるし、なんとななるんじゃないかな」
「あれ、ジル様ってステパン様に勝てますよね?」
「今回は、魔法禁止だって。魔力による身体強化と検知系だけが許可されてる。他の魔法はダメだって。時間魔法が使えないと最速状態のステパンとは勝負にならないよ」
「そうですよね。あくまでも剣士の称号ですものね」
「ジルベール様は、明日で史上最年少の剣王になるんですね」
「そうなの?」
「はい、確か一緒に来ているクリスタと言う方が12歳の時に剣王になったと聞いています。歴代の剣神様や剣帝様は皆12歳の誕生日を迎えた後で試験を受けているそうですから」
「そうなの、エイミー」
後ろに護衛として立っていたエイミーに聞いてみた。
「さあ?」
「こほん。12歳より前で無理をすると怪我によってその後の成長が望めなくなる可能性があると、エルドラ国内では12歳以上にならなければ昇格試験を受けられないとなっております」
答えたのはトシアキだった。
「へー、そうなんだ。あ、ここがラルクバッハだからジルちゃんが試験を受けれるんだ」
「まあそれもありますし、ゴブリンキングを倒したことも伝わっていますし、エルドラ王国に婚約式の連絡をした際に、国王陛下が推薦状を書いていたようですよ。試験を受けれるように剣王の派遣をして欲しいと」
「お父様がそんなことを」
実は、そんなお願いとエルドラ内での事情もあってここで剣王や剣帝の昇格試験が開かれるようになったのか。
そうして、食事が終わり部屋へと戻った。
「エイミー、今日はしっかり休養してね」
「うん、じゃあおやすみなさい」
そう言って、入り口で別れトシアキと一緒に部屋に入った。
部屋に入ると、侍女姿のコハクが部屋で待機していた。
「あれ、今日はコハクがこっちなの?」
「はい、エイミー様が護衛をしないとお聞きしましたので、私が来ました」
「あ、そうなってるんだ。じゃあコハクがこの部屋に?」
「はい」
さも当然とコハクが返事をしたので、トシアキが返事をつづける
「では、私は従者部屋で控えておきます」
そう言って、トシアキはこの部屋にある扉を開いて隣の従者部屋に出て行った。
その後でコハクは狐の姿になり、そそくさと僕のベッドの足元で丸くなった。
その日の夜、寝ている時に突然、メリーナ様からのお告げがあった。
死者蘇生の魔法は説明にある通り死んでから5分以内しか有効ではない。
蘇生しない場合は、5分以内の条件で何度かためすことができる。
神格化してまで使ってはいけないと注意を受けた。
夢で警告されたのはメリーナ様が与えた魔法ではないから知らなかったそうだ。
アロノニア様かラキシス様からのプレゼントらしい。
僕が今日使ったことでスキルを持っていることを知り慌てて警告して来たらしい。
こんな夢でおつげなんて初めてのことだが、それほど緊急性の高い案件だったようだ。
コハクから危険性を聞いていたが、思い出したのは使った後だった。
神格化までして使わなくて良かった。