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6.2.8 アルフォンス王国の王子

「おい、なぜカップを換えたんだ」

「殿下、ご説明申し上げますが、少し体調が悪いのです。座ってもよろしいでしょうか?」

「どうした、珍しいな。まあ不敬であるが許そう」

「ありがとうございます」

 執事は、サークリンド・リーシェス王子の前。さっきまでジルベールが座っていた場所に腰を下ろし、目を閉じる。

 そして、そのまま話を始めた。

「ふー。殿下、わたくし今日ほど寿命が縮むような思いをしたことはありません。いえ、そうではありませんね。実は私、先ほど一度死んだのです」

「何を言っているんだ。ではそなたは死人なのか?」

「いえ、死んで蘇生したのです」

「はあ? 意味不明なことを、何を言ってるんだ?」

「眠ったわけではありません。確かに死んだのです。心臓が止まったはずでしたが。その次の瞬間にはきちんと動いていて。勘違いかと思い自分に鑑定を使いました。すると自身の状態に威圧による恐慌、心停止、死亡、蘇生と出ていました。ええ、勘違いではなく確かに事実なのです」

執事は、いったん言葉を切ってつづけた。

「一瞬ですが、ジルベール様から威圧を受けたのです。それも高濃度の威圧でした。神を前に裁きを受ける子羊がごとく。今までの人生、これほどの恐怖を感じたことはありませんでした。一瞬ですが体はそれを受け止めきれず、こと切れました。死んだのです。確かに。

……

殿下、ジルベール様は危険です。あれほどの威圧にも関わらず殿下も、侍女も何も感じていなかった。つまり人を指定して実行でき、誰にも気づかせずに蘇生ができるほどの回復魔法を使えるのです。噂で聞こえていたゴブリンキングの討伐もおそらく真実でしょう。あの年齢であり得ないほどの才能を発揮しております。それですら力の一部。間違いなく彼は神に近しい存在。両金眼とはこれほどに恐ろしい存在だったとは。間違いなく敵対は危険です。どうやって味方に付けるかを考えるべきでした。すでに遅いのでしょうが」


「じい、今日は珍しく良くしゃべるな。まあ、お前がそこまで言うのなら信じるしかないな。そうなると、僕はスザンヌのことも王位も諦めるしかないんだな」

「殿下、以前にも言いましたがラルクバッハ王国は身内の王女を嫁がせたからと言って他国の王を決めることに助力もしなければ意見を言うことはありません。どこのどなたからの意見なのか知りませんがそのお考えはお捨てください」

「うむ」

「しいて言うなら今回、ジルベール様と仲良くなっていれば個人的に助力を得られたかもしれせん。彼は間違いなく、たった一人だけで国家規模を超える戦力でしょう」

「そういう分析なのか? じいは鑑定で確認したのか?」

「鑑定は防がれました。逆にこちらが隠蔽した情報まで見られたと思います。わたくしは今後は監視対象となるでしょう」

「じいよりも高いレベルの鑑定を持っているのか?」

「はい、おそらく。それと精霊のイシスとおっしゃっていましたが、おそらくはあれは聖獣のイシス様のことだと思います」

「聖獣? 伝説? いやおとぎ話だろうあれは」

「先日のシドニアで起きた戦の報告書に書かれていました。あの戦いはアルフォンス王国の兵士も常に警備の担当をしていますから。兵士から報告書に巨大な水龍が敵の土竜を押し流した。いえ洪水規模の水魔法を放ったとの報告があり、そこに聖獣イシスの存在と、使役したのがラルクバッハの少年であると書かれていました」

「その少年がジルベールだと?」

「はい。他にはラルクバッハ側の魔導士が竜のブレスを防ぐ結界を張ったとか、竜を倒した者もいると書かれていましたが、おそらくはジルベール様で間違いないでしょう」

「あとで報告書を読ませろ」

「はい」

「だが、それほどの力。年を考えればいつ爆弾するかもわからぬのではないのか」

……

「そうですね。ですが、基本的は争いを好まぬ性格なのでしょう。最初に椅子のやり取りでも一切怒ることもありませんでした」

「ふむ、そうすると、よく考える僕はとても危険なことをしていたのではないか?」

「そうでしょうね」

「とりあえず、その力の一端をみたいな。ジルベールが実際に戦うところが見れると良いのだが」

「明日の朝、訓練場で剣王や剣帝の試験があるそうですが、もしかしたらそちらに参加されるかもしれません」

「まだ現段階では10歳だろう彼は、いやそうだった、強いのだったな。事前情報で参加者は誰だ。おそらくこの国でわざわざやるのだ。この国にいる剣王はエイミーだったか?」

「はい、エイミー様の剣帝昇格試験があるのは公表されております。あとはエルドラの剣王も一人剣帝を受けるとのことです」

「エルドラ王国からわざわざ試験を受けに来るのか?」

「昨年急に剣帝が倒れ、現在の剣帝はエルドラ王国に1名とシドニアにいるステパン殿の2名です。剣帝の昇格試験を受けるには剣帝2名と剣王が5名必要です。現在のエルドラ王国には剣神様と、剣帝が1名。そのお二人で昇格試験を行うよりもステパン殿を呼び戻して試験を行いたかったそうですが、彼も主と契約中ですから長期の不在は避けたかった。そこでこのラルクバッハで昇格試験を行うことになったと聞いております」

「残っている剣帝はシルビア様だったか」

「はい。シルビア様は赤い髪を持つ高速剣の使い手。現剣神様の二人目の妻で、彼との間に2人の子供を授かっております。30歳ほどの年のはずですが、子を産んだとは思えぬほどの容姿に、剣もまた優れております。彼女は光の剣を放てると聞いておりますから」

「あらゆる防御を無視した見えざる一撃だったか」

「はい」

「他の情報は?」

「すでにエルドラ王国の者は到着されましたので情報はあります。現剣神の3人の妻には、8人の子供がおります。その長男が来ておりますよ。そもそもその長男の剣帝の試験が本来の目的ですから」

「長男はまだ15では無かったか? 僕と同じ年だったはずだ」

「剣王になられたのは12の時です」

「そうか、その長男の試験を父親と直接の子ではなくとも妻の二人で昇格を決めたら。それも最年少で。それでは本当に実力があっても批判がでる。そういうことか」


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