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6.2.3 アルフォンス王国の王子

 ルカディリック王子は、執事に案内され素直に中へと進む。

 僕が見守ったまま立ち止まっていると、隣から声がかかった。

 「私達も入りましょう」

 スザンヌが僕に声をかけてくれたのだ。僕は、彼女の手を取りエスコートして続く。

 部屋の奥へと進むと中で待っていたのは金髪で青い目。第1王子よりも少し年上に見えた。学園の最終学年か卒業している感じだ。

 僕らは、すたすたと進み部屋の中央へ進み待っている人物の前に進み出た。

「久しぶりだねリン」

「ああ、ルカ、それにスザンヌも」

 二人が軽い口調で声をかけ合い握手をしながら答えた。

 そしてルカディリック王子は話をつづける。

「とりあえず、今日の主題を済ませよう。紹介するよ、妹の婚約者ジルベール・クロスロードだ」

 ルカディリック王子の話し方は、友達に対しての話し方だった。同じ王子同士だし、昔からの知り合いなのだろう。

 軽い口調に騙されそうになるが、僕も同じように答えてよいわけではない。ここはしっかりと礼節を踏まえてきちんとした対応が必要なのだ。

「スザンヌ様の婚約者となりました。ジルベール・クロスロードです」

 僕は、教えられた通りの礼儀正しい挨拶をした。

「ふむ、私はサークリンド・リーシェス・アルフォンス。現国王の孫になる」

 それで自己紹介が終わったのだろうか、彼はにやりと笑い、言葉をつづけた。

「ところで君の父親はレイブリング将軍なんだってね。彼にこんな年の子供がいたとは知らなかったよ」

 情報源が戸籍ならば、養子と書かれたいはずだが。裏読みで実は実子を後で養子にしたとでも思ったのか?

「僕は前領主アナベル・クロスロードとリリアーナの子です。レイブリング父様が結婚した相手はアメリ・クロスロード。彼女はリリアーナ母様の血筋の子ですが、子供のいなかった二人のところで実の子のように育てられました。僕が生まれて家督が決まったのちに養女となった女性です。その二人は竜の討伐時に知り合い恋愛結婚することになったのです。レイブリング父様がアメリの旦那となったのは偶然で、レイブリング父様が過去のクロスロード本家から連なる人で偶々継承権を持っていました。偶然が重なってレイブリング父様が一時的に現クロスロード家を継いでくれることになりました」

「成人男性が家に入り家督を継いだなら奪ったとも思われる。それで君が継承権を放棄していない証明のために養子になったと。なるほど」

 うーん、そんな解釈もできるか。

「レイブリング将軍が急に領主になった状況が理解できた」

「君は年の割に、信じられない武勇があるみたいだが、将軍の隠し子だったのではと思っていたが、実情は君のその姿が示す通りということか」

 ああ、ゴブリンを倒したことが伝わっていたのか。

「まあ、立ち話もなんだ、ルカ、スザンヌも座ってくれ。ああ、もちろん君も同席を許可しよう、座りたまえ」

 座るように示されたところは僕だけ席が違うようだ。

 2人は王族で同格だけど、僕は侯爵位だからやっぱり格下扱いで良いなと言う判断だろうか、そう疑問に思ったとき、奇妙な感覚が。

 あ、誰かが僕に対して鑑定を使った。

 魔力の流れを追いかけると鑑定を使った人が判明した。それはサークリンド王子の後ろに立っていた執事からだった。

 逆にこちらから鑑定で確認をするとレベル5の鑑定を持っていた。

 世間の感覚で言うとかなりの高レベルスキルの保持者だ。かなりの高位神官と同じレベルで、神官で無い場合でもかなり位の高い役人になれる。王位継承権の低い王子の執事には勿体ないほどの人物だ。

 王子の態度からすると、今回の訪問時に情報収集の一環で一時的に付けたようには思えない。

 不思議に思い、他の情報も探ろうとしたが、執事さんはちゃんと偽装も使えるらしく表面的に張り付けた情報と裏の情報がかなり違った。

 裏側の情報をしっかりと読み取ったが暗殺者などの変なスキルは持っていないようだ。

 そんなことをしていたので、座席のことを忘れボーと立っている状態が続いたらしく、横からの声でようやく意識がスザンヌへと戻された。

「サークリンド様、わたくしの婚約者なのにこのような扱いをされるのですか?」

 意識をそちらに向け、改めて彼女を見ると、少し、いやかなり怒っている感じだった。

 あれ、なんで怒っているんだ?

 怒っている理由が解らず、質問された王子の方を見る。

「いや、すまない、すまない。これでも私はあなたに対して本気で婚約を申し込んでいたんだ、

その相手が同じ王族でもなく、侯爵家の人間なんだ、ちょっとぐらいのいたずらをしても許してもらえないかな。悪かったなジルベール君。ただの冗談だ、冗談、ルカ、君がそっちの椅子に座って貰っても良いかな」

 そこでようやく座席のことで怒っていたのかと理解した。

 鑑定をしていた執事と別の従者二人、豪華な一人用の椅子を抱えて持って来たので、そこにアルフォンス王国の王子が座った。

 ルカディレック王子が一人用の椅子に座り、スザンヌが二人掛けの椅子の前に移動し、僕に隣に座るように促した。僕は言われるままにスザンヌの隣に腰かける。


 用意された椅子やテーブルは、よく見るとラルクバッハではあまり見ない形の物だった。

「この椅子とテーブルはアルフォンス王国の物ですか?」

「ああ、そうだ」

「実は5年前にサークリンド王子の兄上がラルクバッハに留学されていてね。彼はラルクバッハの上級文官コースを受けていたんだ。その勉強期間中の2年。その後も実務経験を学ぶべく2年間ここに住まわれていたんだ。その時に用意したのがこの部屋なんだ。調度品まで用意されていったからね、そのまま置いてあるんだ。リンは彼の兄上と一緒にここに2年程住んでいたんだ」

 なるほど。

「アルフォンス王国の学園に通う年に戻って、今年が最終学年のはずだよ」



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