1.13.4 後見人
その夜、連れてきたラオブールも含めて今後のことについて相談した。
第一にジルベールの安全の確保。
そのためにはジルベールを王都から離れたこの地から離さない方が良い。
まずは領内、特に役場の情報規制の強化。
これは明日の朝には、自ら役場に勤めている貴族に指示を出す。
そして連れてきたラオブールを、念のためにこの地に派遣しよう。
ラオブールは男爵位であったためか平民とも屈託なく話ができる男だ。
もともと中央勤務ではなく領地勤務の方が向いている。
なぜか本人の適性には合わない貴族相手の仕事で失敗し、さらに地味な部署を飛ばされた不遇の男だ。
この男と会ったのは、ある時に急に思いつきで地方の視察に出かけた時だ。
視察に行くのを嫌がった部下を諦め、誰を連れていくか文官塔をぶらりと歩いていた時だ、暇そうにしていたこの男を連れ出した。
確かそれがこの男との付き合いの始まりだった。
暇そうにしている男なので荷物持ち程度しか期待していなかったが、視察先で平民の工房主と話をするのに案外適任だった。
それから折につけ視察に行く時に連れていっていたのだが、ワシが目をかけた割に部署に異動もなく、似合わぬ仕事をさせられていた。
この男を暇にしておけば、自分が視察に行かなくてもいいと頭を働かせた奴が仕組んだ人事かもしれんが、ワシは細かい人事にはあまり口を出さなかったし、この男からの頼みも無かったので放置していたのだ。
ジルベールの戸籍登録の時にも見るなと脅した書類は、言われた通り見ずに処理をしたようだが、これで何があったのかは知ったはずだ。
今回ばかりは動いてもらうしかないだろう。
それに、リリアーナが進める商業ギルドは相手が平民だ。
そういった場面でラオブールは適任。
この男を相談役としてリリアーナに就けるのは最適だ。
領主代理の相談役ならば少なくとも子爵の地位も必要だろう。
昇格と引き換えに田舎への異動を進めることにしよう。