5.12.9 防衛戦後の始末
王妃様に頼まれたので、トシアキとエイミーを連れてシドニア側の国境の町に転移した。
会談の最初に議論し許可証を送って貰っていたので予定よりも少し早かったが転移門を設置する予定の教会は場所をちゃんと空けてあったので、すんなり転移門を設置する事ができた。
転移門を起動し、トシアキを先に設置済みのシドニアの王都にある教会へ送った。
トシアキは、そこから第1王子へ連絡に向かったので帰りを待たずに僕とエイミーはクロスロードへ転移した。
「ジルベール、どうした」
「お父様、緊急事態が発生しました」
クロスロードの屋敷に着くと出迎えてくれたのはレイブリングさんだった。
「緊急事態、何があった」
「シドニアの国境を視察中にグランスラム帝国が攻めてきました」
「何、陛下達は無事なのか?」
「人的被害はほとんどありません。でも国境の壁は一部が壊れ建物にも被害が出ましたが、すでに鎮圧済みです」
「鎮圧済みか。ジルベールが出たのか」
「微妙です。実はシドニアの王都も同時に襲われたのです。スザンヌが予知をしたので、僕は王都側にいました。大きな閃光が見え、国境に移動し竜の襲撃は防ぎましたが、再び王都に戻っている間にワイバーンによる攻撃を受けて被害が出たのです」
「シドニアの王都へ直接攻撃を。警備がある中で軍をどうやって。いや竜の襲撃事態、隠せるものではないだろう、国境から監視しているのだから」
「転移者が20人ほどいました。彼らを運用した作戦です」
「転移者が20人。空間魔法の使い手で転移ができるまで育てるのは大変なはずだが。まあ状況は解った。それで緊急時のマニュアル通りに派兵の要請か?」
「はい。王妃様からの命令でゴヤロードの常備兵をシドニアに送るそうなので、クロスロードとヤンロードで不足分を補って欲しいと」
「シドニアに派兵するわけではないのか、戦いが終わっていると言う判断なのだな」
「はい、追加はブルンスワードの兵を回すと言ってました。こちらが書状です」
書状を開けて、レイブリングさんが一通り確認する。
「ふむ、了解した。クロスロードの常備兵は殆ど回さんといかんな。臨時兵の招集が必要だな」
クロスロードの常備兵は他領に比べると少ないので、平時以外では臨時兵の招集となるのが常だ。そのために訓練だけは受けているのだ。
「この件は私が準備をしよう。ジルベールはアメリに会っていきなさい。もう数日中にも生まれるはずだ。顔を見せれば安心するだろう」
「はい、お父様」
侍女長のコリンナに案内されたのは庭だった。
そこにテーブルがあり、そこでアメリ母様が休憩していた。
「お母さま、体調はいかがですか」
「ええ、大丈夫よ。まだ運動をしないといけないのだけど、大変なのよ」
お腹はずいぶんと大きくなっていた。
「お父様は数日中に生まれると言ってましたが、予定では来月出産でしたよね、確かにずいぶんと大きくなっていますが」
「ふふふ、あの人は不安がっているだけよ。予定通り出産まではまだ3週間ぐらいはあるわ。それに、まだ大きくなるわよ。あなたの時はもう少し大きくなったはずよ」
「そうなんですか。お父様が不安がるのもわかります。僕にも明日に生まれてもおかしくないぐらいに大きいように感じました」
「順調に育っている証拠ね。大丈夫、貴方の時もこんな感じだったわ。あの時は目立ってはいけなかったから家の中しか運動できなかったけど、今回は庭の花を見て回れるから、ずいぶんと気が楽よ」
それから少し話をして、コリンナがそろそろと、アメリ母様を家の中に連れて行った。
「ジルちゃん、どうするの。シドニアに戻る。それとも王都まで行くの?」
後ろからエイミーが声をかけて来た。
「第1王子が転移門で連絡に戻るとは言ってたけど、先にファールじいちゃんには言った方が良いと思ってるんだけど、王妃様からは頼まれてないんだよね」
「健康優良児のジルちゃんが、1日寝てたから後だからね。王妃様は無理させたくないんだろね」
「そうだろうね。魔力が完全に戻ったわけじゃないけど、残量だけで言うと王宮魔道10人分以上は軽くあるんだよね。だから何かあっても対処は可能だし、体も不調部分はないんだけどさ、さすがに王城に行って第2王妃様に説明するのは気が重い」
「ふーん、ジルちゃん、第2王妃様が苦手なんだ」
エイミーの事は無視して、別の答えを口にする。
「と言うわけで、メリルディーナ公爵家に行ってファールじいちゃんが居たら伝えておこうかな」
「了解」
僕はエイミーの手を取ってメリルディーナ公爵家の自分の部屋に転移した。