5.12.8 防衛戦後の始末
部屋に入ると、ラルクバッハの王妃と第1王子と第3王子が居た。
「ジルベール、よく来たわ」
エミリア王妃がこちらに来いと手招きする。
席に着くと、王妃様はいきなりのため息をついた。
「お忙しそうですね」
いつもの美人度はかわらないが、少し疲れが見える。
「まあね。あなたがゆっくりと寝ている間に救援の要請に物資の手配、いろいろあるのよ。直接書類を作るわけじゃないけど、決済できる人が私しかいないのが問題よね」
「もしかして寝てないのですか」
「それは大丈夫。少し寝たわ。それにこの後少し眠る予定だし問題ないわ」
どうやら僕が起きてくるのを待っていたようだ。
「修復した転移門の設置許可が出ていたでしょ。本当は帰りに設置するつもりだったけれど、あれ、先に設置できないかしら」
「ええ、良いですよ。予定どおりシドニアとラルクバッハの国境の町に設置するなら場所も解っていますから」
「ラルクバッハまで早馬を出してもかなりの時間がかかるけど、転移門があればジルベール君に頼まなくても私達であちらに連絡が取れるでしょ」
「設置は良いですけど、国境の方は行かなくても良いのですか?」
「そっちはなんとかなるわ。今回、アイテムボックスを大量に持って来ているから単機駆けで大量の物資が移動可能だわ。物資の移動が無ければ兵士の移動速度も速くなるわ。だからシドニアにいる歩兵部隊を1週間もかからずに到着させることができるのよ」
「ラルクバッハからの応援は?」
「今回は緊急時のマニュアル通りにするわ。国境に接しているゴヤロードの常駐兵をすべてこちらに送り込むわ。だからヤンロードとクロスロードの兵を一時的にゴヤロードに移してもらうことになるわ。その後でブルンスワードからシドニアに追加の兵を出せばしばらくはなんとかなるでしょ」
「そうですね」
「ヤンロード、ブルンスワードへの連絡はルカに行ってもらうつもりだけど、クロスロードへの連絡はあなたに頼んでも良いかしら」
「もちろん、転移門を設置した後でクロスロードに連絡しておきますが、王都への連絡はどうしますか、ルカディレック王子がそのまま戻られますか」
「ルカとサフィーナは王都に戻すわ。緊急時に国王と王太子が2人そろって隣国にいるなんてありえないのだから」
最悪、第2王子が国内に残ってはいるが、国王に第1王子、第3王子と3人もこっちに来たのは情勢が安定していたからだ。まさかこんな状況になるというのは誰も予想していなかった。
「まさか転移を駆使して兵力を集め、一気に攻めてくるのは予想外でしたからね」
「まあ、そうだけど。ジル君が居れば取れない作戦でもなかったのよね。でもあなたほどの空間魔法の使い手が帝国に居るとは考えていなかったから、油断してたわ。まさか20人近い転移能力者を育てるなんて」
「こちらで半分を確保しているし、あとは国境側で何名捕まえる事ができたかで今後がかわりますね」
「ええ、ティアマト様が動いてくださるから期待はしているのですけど、すでに逃げている可能性もあるものね」