1.13.2 後見人
「ようこそメリルディーナ公。遠い田舎までわざわざご苦労様です」
久しぶりのリリアーナは昔どおりの美しさだった。
35を超えているはずだが30前にしか見えない。
「うむ、リリアーナ。久しいな。元気であったか」
まずは、ありきたりの挨拶をして、様子を確認する。
「はい、子を産みましたが元気です。もう既に復帰して働いていますから」
当然のような返事をしてきた。だがその顔からは不安げな表情が見て取れた。
「そうか、体調が良いので安心したが、今日は手紙のことを確認に来た」
「ではすぐに確認されますか?」
諦めたような顔で答えるリリアーナ。
さて、少しびっくりさせてみるか。
「まず、最初に言っておくがジルベールの後見人だがワシが筆頭の後見人になる予定だ」
「あら、カルスディーナ公かオルトディーナ公ではなかったのですか?」
即座に返事が返ってくる。
それには答えずに、さらに質問をぶつける。
リリアーナとのやり取りではいつものことだ。
「それでな、ジルベールの本当の母親を確認したい。アメリであろうと予想しているが合っているかな。それ以外だと話を変えなければならん」
「まあ、メリルディーナ様、何を突然」
リリアーナはぎくりとした表情で返すが、私が暫く黙っているともう完全にばれているのが明白と諦めた表情に変わった。
「以前、アメリとは一緒に暮らしていたのだ。その時にアメリの親が誰か確認しておる。そなたに子がなかなかできなかった状況と生まれた子供の容姿から考えれば、お主とアメリのどちらが母親なのか、容易にわかる案件だ」
「では、かなりの事情をご存じなのですね」
リリアーナは完全に諦めたのだろう、駆け引きをやめたようだ。
「うむ、ジルベールの母親はアメリであろう。それは間違いないと考えておるが、腑に落ちんのは、血統的に両金眼が遠い。今までに無いとは言えんがそれにしても両方とはな。せめて父親が直接の金眼と言われた方が納得する」
リリアーナは、はーと息を吐き
「父親はアナベルです。それ以外はありえません。私も確認しております」
「そうか、では右目はアナベルの父親からか。では左眼はアメリの母親か」
「おばあさまの父親は左眼が金眼です。
アナベルの血には両方の金眼の血が入っています。
またアメリの方ですが、アメリの父は私の兄ですから、そちらの系統に金眼はいません。
アメリの母親は子爵家の令嬢です。
登録上の彼女の両親は共に金眼ではありません。
ですがアメリの母が生まれたのは婚姻後3ヶ月しか経っていない時期。
彼女は直前までオルトディーナ系の侯爵家で侍女として勤めていたそうです。
もちろん領主は左眼が金眼です。
彼女が婚姻後にすぐにアメリの母親を生んでいることから侯爵の手がついたために系統の子爵家に嫁がせたと考えるのが自然かと。
アメリの母親の親戚筋から得た情報です。その親戚共々侯爵家に良く行っていたそうなので確かだと。
ですが、どちらも血筋的には遠く先祖がえりにしても珍しいのは事実です。
私は左眼までが金眼になるとは予想していませんでした。
その可能性を排除して準備していたのです。
突然のことで情報も不足しています。
ぜひメリルディーナ様の手助けをお願いします」
「リリアは、仕事であればいつも冷静に物事をこなすが、さすがに子がかかわると形無しだな。だが頼られて嫌な気はしない。むしろ頼ってくれて嬉しいものだ」