5.11.2 ディックハウト公爵家攻防戦
大型の馬車でディックハウト公爵家に向かう。
コハクも調子が悪そうだったので一緒に馬車に乗せて貰い、僕とエイミーは太郎に乗って後ろから付いて行った。
トシアキは現地の手伝いをして後、一部の兵をそのまま連れて後で合流することになった。
公爵家に付くと沢山の執事と侍女が出て来た。
連絡が行っていたらしく、侍女たちはルビースカリナ様の家から来ていた。執事はトルステン様のお世話係だったらしい。
エリンとコハクを別々の部屋に案内しようとしていたがそれを断る。
「悪いけど、護衛と護衛対象は一緒にしておきたい。エリンとエイミーを同じ部屋にしてほしい。コハクは僕と一緒で構わない」
「失礼ですが、ご命令でもジルベール様はご令嬢と同じ部屋で眠る年ではございませんでしょう、簡単には承諾しかねます」
指摘してきたのは、年かさの女性で、この公爵家の侍女長さんだ。さすが侍女長さん。責任を負うべき立場の人は、間違いは間違いとちゃんと指摘するようだ。
なんで、こんな人がいてトルステン様が残念王子になってしまったのか不思議だ。
「コハクは銀狐の幻獣だ。眠るときには小さめの狐の姿に変わるから大丈夫だ」
「もめている所申し訳ありません。わたくしは人型の維持も困難になって来ました、先に眠ります」
そう言って狐の姿に戻り、眠ってしまった。
「あっコハク。今日は無理をさせてしまったな、ごめんよ。エイミー、コハクを頼む」
「コハクちゃんはこのまま、僕とエリンちゃんの部屋に連れて行こうか、ジルちゃんこれから国境の陛下達のところに行くんでしょ」
「ああ、そうだね。一人で眠らせているよりもその方が良いか。じゃあ頼むね。僕は一度国境に戻るから」
「うん、でもコハクちゃんがここまで疲れたのを見たのは初めてだね」
「そうだね、エイミー。精霊魔法のことは殆ど知らないからコハクの状態も良くわからない。精霊の力で治すと言っても本人の力を全く使わないわけじゃないのだろう。魔力も神石からの供給があったと言っても彼女の魔力はかなり減っていたし。大丈夫なのかな」
「コハクが聖女と言っても人の為に自分の身を削ることは無いと思うけど」
「そのはずなんだけどね。マリア達との交流が良い影響を及ぼしているのは喜ばしいことだけど、それはそれで不安だね」
「うん。それで襲撃は夜中だと予想してるんだよね」
「そう思ってる。本体の部隊は消耗してないはず。準備に時間をかけている感じがあるから失敗した場合の手は考えていると予想するよ。そう考えると合間の時間は短い方が成功率が高い」
「わかったよ。僕は夜中の襲撃に備えて休んでおくよ」
「そうして。じゃあ行ってくる」