5.8.4 エミリアの母と
突然、侍女がやって来てロマーニャ様に話しかけた。
「ロマーニャ様、予定は無いのですが訪問者が」
すでに訪問者が居る中で伝えると言うことは緊急、あるいは重要な案件なのだろう。
「あら、誰?」
「グランフェスタ様です」
「あら、今日は学園の休みの日ではないわよね」
「早めにお伝えする必要があるとか。ですからこの時間の訪問のようです。お約束も無いからお断りしたのですが、中に居られる方々とも関係があるからと」
「あら、中にいる? そう、しょうがない子ね。エミリア。グランフェスタが来たのよ。私の兄の娘がブリューネワルト公爵家からカルーステン侯爵に嫁いで、そこの娘なのだけど、ここに呼んでも良いかしら」
「ルカ、グランフェスタ様のことは知っているかしら?」
「お母さま、昨日報告したジルベール様が目を付けた子の後見人です」
「ああ、あの件ね。お母さま、お呼びしても良いですわ。きっとジルベールがらみよ」
それからすぐにグランフェスタ様が来られた。当然だが後宮とは言え、王宮に来るのだから制服ではない。お茶会の時とは違う水色のドレスを着ていた。
「グランフェスタ、急な用事と言っていたけど、どうしたの」
「おばあさまにお願いと報告があって来ました。先にお願いからしても良いでしょうか」
「ええ、貴方はかわいい私の孫の一人ですからね」
「おばあさま、ラルクバッハから来られているオルトディーナ公爵家のオニール様の件です。今回のご訪問は、シドニアの第1王女との見合いの為だと聞きました。ですがリアン様とは相性が良くなかったと聞きました。だからわたくしとのお見合いを設定して下さるようにお願いしてほしいのです。ルビースカリナ様の前に」
「あらあら、だそうよ、エミリア。この子は貴方の親戚よ。任せても良いかしら」
「その程度でしたら。王女との相性が悪ければルビースカリナ様、その次にグランフェスタ様の順に顔合わせする予定でしたが、順番を変えるぐらいのことですから大丈夫でしょう」
「ありがとうございます。エミリア王妃」
「ですが、結果については保証しませんよ」
「それは大丈夫です。自信があります。わたくしリアン様とはタイプが真逆ですから。それに昨日、オニール様はルビースカリナ様から合格と言われなかったそうなので」
「まあ、あの子から合格などと言われる者がいるのかい」
あ、言われた。でも関係ないから黙っておこう。
「そうかい。それで報告の方はなんだい」
「おばあさまがジルベール様に会えばシドニアとの繋がりを欲すると思ったのですが、どうでしたか」
「そうだね。否定はしないよ」
「でしょ。ですからわたくしの派閥からジルベール様の専属侍女を出そうと思っていますの。昨日スザンヌ様からも許可を貰えたそうですし」
「おや、そこまで進んでいるのかい」
え、スザンヌからの許可?
昨日の近くいても良いっていったあれか?
不思議に思いスザンヌを見ると、うんうんとうなずいている。あれ、専属侍女なんて話したか?
「学園でできたわたくしのお友達なのですが、男爵家の子なのです。王宮侍女として雇われることが決まったので、ちょうど後見人を探す約束をしていました。王宮を辞めた後に我が家でわたくしの侍女にするつもりだったのですが、その子がジルベール様に気に入られたようなのです」
エミリア王妃が僕のことをにらむが。僕はそんなことを言ってない。
「ほう、そうなのかい。いちど会ってみたいね、その子に」
「そうでしょう。連れて来たのでこちらに呼んでも良いかしら」
「あらあら、ジルベールが気に入った子なんて、どんな子かしら」
エミリア王妃が興味津々で話す。さっきまで睨んでなかったか。
「待っててください。連れて来ます」
そう言って、グランフェスタ様が後ろに居る自分の侍女にサインを出した。すぐに侍女が下がる。
「スザンヌ、どういう子なの」
「かわいい子ですよ。すごく、私よりもマリアテレーズの方が近い感じね」