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5.6.2 シドニアの学園見学

 ステパンは隷属されているはずだ。命令されたら断れない。

 だが今の会話を聞く限りではとても隷属されているとは思えない。命令に限りなく近い言葉に対して反論している。これは、どちらかと言えば隷属の逆。正しいことを言って諫めているように思える。どういうことだ。

 なんか変だと思うが、戦わなくて済むならその方向が良い。僕も今の話を適当にして平和的に解決しよう。

 しかし、さすがコハク。

 500年前に彼女が原因で世界が滅びかけたその美貌?

 欲望のままを口にすると、彼女が欲しいと言ってしまうのか。

 ラルクバッハの王城では平和に暮らせていたようだが、ラルクバッハの王族の理性が非常に高いということか。もっと気を付けた方が良いのかな。

 普段から治療の時に使う面を付けた方が良いのかもしれないな。シドニアでは他の貴族たちにコハクが見られないようにした方が良いのかもしれない。


「ステパン殿の言い通り。コハクのことは諦めてください」

「く、両金眼だけじゃなく『ハーレム』築いていい気になりやがって。だが金眼は持っているだけではダメだって知ってるか。知らないだろ。金眼は上手く使わないと意味がないんだ。持ってるだけじゃファッションと一緒。僕は金眼を使いこなしているんだ。だから僕の魔法の腕はすでにこの国で一番なんだ。すごいだろ。僕はすごいんだ。そうだ、だから剣じゃない。魔法で勝負だ。勝負しろ、ジルベール」

 一気にしゃべってきた。そしてさっきの話聞いてなかったのか、こいつ。

「あーあ、言っちゃった。ダメだって言ったのに聞き分けの悪い坊ちゃんだ」

 ステパンがだめだーってお手上げポーズ。諦めが早すぎるだろ、ちゃんと止めろ。

 しょうがない。

「トルステン様、ステパン殿は止めていますよ。勝負と簡単に言いますが、勝負事ができる状況ではないでしょう。警告はちゃんと聞いた方が良いと思いますよ」

「なんだと、いい気になるよな」

 しょうがない、これでも転生者だろうし面倒ごとも起こしたくない。しょうがない。

 魔法で僕ら二人だけを隔離。周りから見えない壁を作り声も漏れ出ないようにする。

『あなただけが転生者の特典を持っているわけじゃない。僕もです。解ってますか?』

 日本語で言ってみる。そのまま返事が返ってくるはずだけど。

『日本語。転生者なのか、お前も』

 やっぱり、転生者か。

『僕が転生する時に女神が過去最高の加護を与えることができたと言ってました。つまりあなたよりも僕が持つ加護の方が強いのです。あなたが前世を思い出したのは何時ですか、その時に女神から何か聞いていませんか』

『もしかして、転生者を導く者とはお前のことか』

『導く? それが僕なのかは判断できませんが、すでに数名の転生者が僕の元に集まってきているのは事実です』

『く、だが』

『僕も無詠唱で魔法は使えます。どうやら僕の転生は2度目らしいのです。メリーナ様だけでなく他の女神さまも協力して。おそらく前回の転生からレベルを継承しているらしくいくつかの魔法はすでに最大レベルまで到達しています。僕の能力には鑑定があります。あなたのステータスと僕を比べる限りではあなたが勝てる要素は無い」

「そんな」

「それと、転生者はこの世界で自分の欲望を満たすために力を貰ったわけではないでしょ。この世界を発展させるために貰った力。そしてこの世界に来てからも学んだでしょ。強力な力は、人々を守るために使うのです。私欲の為に使うのではありません。貴族が貴族としての特権を使うには、貴族としての義務を果たし、貴族としてふるまえなければいけません』

『女神は自分の思うように生きろと言った。そう、好きにすれば良いと言っていたぞ』

『そもそも綺麗な魂の持ち主でなければ転生者に選ばれないはずです。あなたが転生者として選ばれた魂の持ち主なら好きにしても良いことにしか力を使わないはずです。だから好きになさいと言ったのですよ。あなたは前世では善良な人だったはずです。その心はどこに行ったのですか。こちらの世界で小さい時に甘やかされすぎ、良心を失ってしまったのですか』

「う、うるさいぞ」

 おや、言葉が戻った。

「トルステン様の魔力操作のレベルは4。無詠唱で魔法を使えるぎりぎりでしかない。金眼を使いこなし、自分の力だけで無詠唱にたどり着いたのは確かにすごい才能だと思います。トルステン様は優秀ですよ。だけど残念ながら私の方が上だ。先ほどステパン殿が自分よりも強い者に挑まないようにと言ったでしょ。あなたが望む勝負は、おそらく一方的に僕が勝つ。貴方が勝てる確率は無い。

トルステン様がただの暴れん坊のわがままな男なら黙って勝負を受けても良かった。そして私が全てを奪うこともできます。だけどトルステン様は、ステパン殿を隷属しているにも関わらず、奴隷のように使ってはいない。

私にはトルステン様が噂されているほど愚かだとは思わない。

ただ甘やかされ、同世代に並ぶ者が居なかったから増長しているだけなのでしょう。ですから今から努力すればまだ間に合う。周りの大人がきちんと導けば。そして導く者が少なくとも側に一人いる」

「ま、まて、お前は何を言ってるんだ」

「幼いうちから才能を示し、それを周りが喜び貴方も増長した。そしてわがままになったのでしょう」

「そうじゃなくて」

 そろそろ黙って貰うか、トルステンの目の前に無詠唱で炎の塊を作り出す。

「これでも魔力を最小に抑えています。私の魔法のレベルが高すぎてこれよりも攻撃力の低い魔法は使えない。あなたが人よりも抜きんでた才能があったとしても、この魔法を受ければ無事では済まない。そもそも僕が勝負を受け魔法を放つとこの辺り一帯は簡単に吹き飛びますよ」

「う、う、う、嘘だろ。こんな、こんなに差があるのか、信じられない」



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