1.11.2 アメリ・フィロ・アインスロット
アメリとアナベルの子ができた。
あらためて、自分が子をなせなかった体であったことを認識し女性としての自信を失うも、よくよく考えれば自分は生粋の文官なのだ。
そんなことよりも自分のやれることをやらなければと、自分を奮い立たせ準備に奔走した。
もちろん生まれた子を私が産んだことにすることが決まっていたので妊娠したように見せるため、おなかに詰め物をして妊婦を装いつつ仕事をこなす。
ところが妊娠して八ヶ月になった頃、シドニアとの国境沿いで大規模な魔物の群れが発生した。
カイン様が怪我をし、前領主一家が亡くなった魔物の大規模発生。
それがそれほどの期間を置かず再び発生したのだ。
アナベルは軍の指揮ができる能力があったので、この近隣の領地から集めた兵で混成された討伐隊の指揮官を任せられた。
現地でアナベルは王都から来ている正規軍と合流し、将軍の指揮に入り別働隊として戦っていたそうだ。
だが、今回の魔物の量はとても多かった。
それに加えてアナベルたちが戦っていた魔物の中に高位の魔物が数体混ざっていたらしい。アナベル達の中には正規の訓練を受けた兵士が少なく高位魔物を討伐できる能力の高い兵士があまりいなかった。
結果、魔物の討伐は成したがアナベルは帰ってこなかった。
シドニアとの国境沿いのゴヤロードの被害は甚大だった。
父カインの時代に続き2度の大規模な魔物の発生でかなり疲弊してしまったようだ。
幸いなことにゴヤロードで魔物が止まったのでクロスロードは派遣した兵士の消耗以外に被害は無かった。
アナベルを亡くし悲しみにくれたが、やらなければならないことは山積だ。
幸いファール様が動けない私のために文官を数人派遣してくれたので行政はなんとか回った。
それに、臨月に近い状態と言ってあるが実際には動けるので領主館から指示はだせた。
そんな状況の中で2ヵ月後、ついに待望の赤ちゃんが誕生した。