4.16.8 フィンレワードにて
「赤子の成長を願って額に触れ、子の成長を願う言葉をかけるのだ。
ありきたりでは、『この子の健康を祈る』や『たくましき成長を祈る』とかだ。
ジルベールは赤子に触れたことがなかったか」
「はあ、そういえば無かったですね。チャンスがあったとすると、メイド長が子供を産んだ時だけど、家には連れてきてはくれなかったので。トシアキもバーニィも結婚すらしてなかったから」
「ふむ、では私が先にやるので真似をしなさい」
次にマリアテレーズ様がやって、僕もレイブリングさんの真似をした。
『たくましき成長を祈る』と祈りながら健康状態を確認するために診断をかけてみた。
あれ?
診断結果に違和感があった。せっかく祝福を贈ったのに、あまり状態が良くないぞ。
「コハク、この子を診断で調べて」
「はい、失礼します」
「どう?」
「軽いのですが毒を与えられた状態に似た反応があります。
耐毒の訓練には早いと思いますが、もう行っておられるのですか」
「いえ、そのような。毒を与えるなどそのような事はしておりません」
「ご希望なら、治療や解毒はできますが、症状は持ち直していますが原因が解らなければ治療をしても一時的なもので終わります。わたくしの医療技術は500年前に人族から教わったもの。その当時に存在した病気しかわかりません。これは、新しい症状だとおもわれます」
「新しいか。僕の予想通りなら治療はしなくても大丈夫だろう。それよりも症状をもう少し調べたい。ちょっと部屋を借りれませんか」
僕らは、会場に併設されていた夫人たちが休憩していた小部屋に移った。赤ちゃんをベビーベッドに寝かす。
「まずはこの子に食べさせた物が残っていれば持って来てください。
マリアテレーズ様、恐らくですがこの症状は食物『アレルギー』じゃないかと」
「『アレルギー』ですか。解りました、わたくしも診断で調べてみます」
「僕の診断結果もコハクと一緒で現状しか解らない。だけどマリアテレーズは上位診断の魔法が使える。僕らの診断よりも説明が多く出るかもしれない。
病気名が解れば焦点を絞って詳しい事が解る可能性がある。何度も診断を使えばより多くの情報が集まるはず」
「試してみます」
何回か診断を続けて、最後に声を出して診断を続けた。
「アレルギー。ソバ、卵、小麦、米、大豆、果物、カニ、貝、牛乳」
食材の名前を次々と言っていく、そして一通りの食材を言った後で一言。
「卵はあやしい感じがします。後は解らないです」
結果が出た頃に、今日食べた食事の残りは無かったからと使った食材の余りを持って来てくれた。
ヤギのミルクとパン、それに卵。パンをミルクでふやかして食べるのは離乳食として一般的だ。侯爵家の子供なので贅沢に卵を付けているのが普通ではないが。
「卵か、確実な結果を欲するならパッチテストをやってみるか。やり方は詳しくないけど食材を肌に塗ってみれば良いのかな」
「パッチテストですか、聞いたことはありますが私もどうやってやるのか知らないですよ」
「先ほどから『アレルギー』と言ってますが、それは何ですか?」
コハクが僕に質問してきた。