4.16.2 フィンレワードにて
「バーニィは護衛としてきたの?」
「まあ、それもありますが、本命はこっちの用事に付き合わないといけなんですよ」
バーニィの後ろから小柄の魔導士風のローブを着た男が現れた。50近い老人風の男だ。
「魔道具研究室の室長。クレイマー・メルセデス伯爵です。オメガの元上司ですじゃ」
「へえ、オメガさんの元上司。それでどういった用件でここに?」
「船を調べにきたのですよ」
船?
魔道具研究室とあの船は何か関係があるのか。もしかしたら船の中にある魔道具だろうか。魔力を封じる枷も違ったし。不思議そうな顔をしていたのか、クレイマーが先に話し出した。
「船の動力炉を調べにきたのです。あれは、巨大な魔道具ですから」
「ああ、なるほど。帆船なのに帆を畳んで進んでいたから魔力を使っているとは思ったけど。船員が動かし方を言わなかったからイシスに運んでもらったけど」
「今日は騎士と部下達が船内に危険な物がないか調査しているので動力炉の調査は明日になるようです。ジルベール様もご一緒しますか?
船の調査権は国から我々が委託を受けましたが、船の所有権はジルベール様がお持ちとのことご参加されますか?」
「へー、それなら専門家の居る時に見せて貰った方が良いし。ではお願いします」
そんな話をしている間に、治療が終わったようだ。
「治療が終わったようなので、領主館の方へ。後でカルスディーナ公爵もそちらに向かわれているはずです」
クロスロードの馬車もこの場に到着していたので、コハク達を乗せて領主館へと向かった。
馬車に乗り込むと治療行為が終わったからかコハクもマリアテレーズ様もベールを外し仮面を外した。
「あ、海の匂いですかこれ?」
マリアテレーズ様がそういった。そう言われれば、港に着いた時からずっと少し臭い匂いがしていた。
「海の匂いもあると思うけど、この臭いのは魚を処理した匂いかな。もう少し進むと気にならなくなるよきっと」
清浄の魔法効果が付いていた仮面は、匂いすらも感じさせないものだったらしい。さすが魔法の文化が栄えていた頃から使われていただけの事はある。匂いすらしないほどに清浄化が動いているのなら、変な菌も届かないだろう。マスクよりは予防効果が高いそうだ。
魔法を使う治療については、レベル次第で再生もできるので元の世界よりも優秀ではないかと思っていたが、過去の技術を見る限りかつてはそうだったのが解る。
「あれ、そういえばコハクってストレージ持ってないはずだよね。どこに仮面を?」
「わたくし、身に着ける物限定になりますが、異空間に隠しておけます。人の姿に戻った時に裸にならないのは、そのためです。身に着ける物程度の容量しかありませんが」
「あ、そうだったんだ」
なるほど、そういわれると侍女服を着たまま銀狐の姿になり、人の姿に戻ると服を着ていたが、それはそういう事か。