1.10.3 アメリ・アインスロット
久しぶりに女王陛下へお会いした。
およそ7年ぶりの女王陛下は、それなりにお年を召されていたがまだまだ元気そうだった。
一緒に連れてきたアメリは、周りの騎士を見て顔面蒼白になってしまった。
ファール様が事前に対応する騎士の年齢を上げていたが人数あわせなのか、事実確認なのか数名の若い騎士がちょうどアメリの近くに配置されていたからだ。
ファール様が配置を変えるように隊長に頼み、若手を遠ざけることでアメリはなんとか耐えられるようだった。
そして、ファール様から女王陛下への説明がされた。
「幼少の頃から見ていたアンジェリカが負けるとはね。
だが卒業ではトップを狙うのだろう」
「はい、負けません」
アンジェリカ様はさすがという感じだ。
女王陛下を前にしても、動じることなく立派に受け答えができる。
そんな会話の後に、女王様がその年の領主候補の教室に通う男性の家にアメリのことを考慮した行動をするよう通達を出す約束をしてくれた。
破格の待遇を得てアメリは無事に学園へ通うことができるようになった。
女王との謁見が終わると、ファール様は仕事に戻り、私たちは別の部屋に移動した。
女王の息子である王太子と結婚したばかりの一妃エミリア様と二妃エマーシェス様が会いに来てくれた。
二妃様はカルスディーナ公爵令嬢エマーシェス様で、10歳の時に王太子と婚約したのだ。
私も役所で勤め出した頃のことだが、その時に私が王妃教育の教師として座学を教えたのだ。
理解力が高く、受け答えもしっかりして自分が天才だと持てはやされたことを恥じたぐらいに出来が良かった。
その時から、聡明で美人だった。
天はいったいどの程度の彼女を優遇しているのか疑問に思ったものだが、成人した彼女はその時とは比べ物にならなかった。
とんでもない美人だった。
まるで女神のように美しかった。
女神が不公平ではなく彼女が女神なのだと思えるぐらいに。
そして一妃様もそれに負けず劣らずの美人でスタイルも良かった。
私もスタイルにはそこそこ自信があった。
唯一エマーシェス様に勝っていただろう。
だがこの一妃様には到底太刀打ちできない。
完敗だ。
ここに女神が2人。
カトレア様にアンジェリカ様を入れると4人の女神が集っている。
そんな女神級の4人と私とアメリが一緒に話をしているのだ。
なんと素晴らしい時間。
世の男ども、うらやましいだろう。
そんな自慢をしたくなる時間だった。
だが、話題は世の男のくだらない面についての話だった。
役所の男や上級兵士の話で大いに盛り上がった。
そしてすばらしい男性の少ないことに嘆いていた。
そんな中でも王太子はまあまあの合格ラインらしい。
そんなたわいの無い会話を交わし、私はアメリをファール様に預けて領地へ戻った。
その後、アメリはアンジェリカ様と一緒に学園に通い無事卒業した。
成績は見事にアンジェリカ様と同じく座学で優秀な成績を収め、2人ともフィロの名を取った。
領主候補が学ぶ教室では、約束通り男性が紳士的に振舞ってくれたそうだ。
全ての領主候補生がアメリの病気を理解し、協力してくれたらしい。
婚約者のいないアメリに普通クラスの男子がアピールに来るのを牽制し、クラス一丸となってアメリを守ってくれたそうだ。
アメリは卒業後に領地に戻り、アンジェリカ様は国内だとファール様が居て甘えるからと隣国の大学へ留学した。