1.10.1 アメリ・アインスロット
アメリは男性恐怖症であったが、ある年齢以上の男性にはそれほど恐怖を抱かないようだった。
なので、父のカインとも仲が良かった。
旦那は、アメリはゆっくりと親子関係を築き上げ、アメリが10歳の頃には本当の親子のように触れ合えるようになっていた。
アメリが家に来てからは学業の教育を私が、そして貴族としてのマナーや、姿勢、心構えなどは母が指導してくれた。
だがアメリは私以上に賢い子供だった。
結局座学のほとんどがあまり手間をかける必要は無かった。
基礎さえ教えれば、後は本を読み習得していった。
どうやら、一緒に眠る時の寝言からおそらく彼女も私と同じ前世の夢を見ている時がある。
そのせいなのかも知れない。
アメリは、唯一、算術の勉強に手間取っていた。
私も徐々に領地経営の時間が増えてしまい、アメリが悩んでいる時に教える時間が取れなかった。
ちょうど、カインとアナベルは算術が得意で、その部分は彼らが教えるようになった。
コツをつかんだ後は、アメリの理解力に舌を巻いていた。
一方で私とお父様との関係は3年たっても子供ができず、その後アナベルとの行為の時も避妊せずにいた。
しばらくは、父、息子の両方から寵愛を受けたが残念ながらであった。
結局結婚から5年たった時に父カインからの進言でその関係をやめることになった。
そして、アメリは順調に大きくなった。
こちらに連れてくる時にアメリが貴族としての戸籍登録されていることは確認していた。この国では貴族は13歳になると王都で学園に行く必要がある。
だが彼女は多くの男子が居る教室に通える状態ではなかった。
多少の改善はあったものの、男性恐怖症は治りきらなかった。
アメリは、たくさんの男子が集まる普通クラスでは学園に通うことができない。
アメリを自分たちのクロスロードの養子にできればすんなり領主候補の教室に入れるのだが、ふたりの間に継承権を持つ子がいない場合、最初の養子は継承権を持てる男子しか認められない。
継承権のある男子がいる場合に、女子を養子に入れることが出来る。
私とアナベルの間には子供がいないので、アメリを養子にすることができなかった。
領主以外の身分の子供が領主候補生のクラスに行くには戸籍地の領主が推薦すれば領主候補として学園に通える。
アメリの戸籍は王都にあるアインスロット伯爵家。領主候補として学園に行くには王都を管理する公爵であるメリルディーナ公の推薦があれば良い。
私は、さっそく昔の上司であるメリルディーナ公爵に面会を申し込み、アメリを連れて出かけた。メリルディーナ公爵家に行くと、領主であるファール様とカトレア様に迎えられた。
その隣には、アメリと同じ年の女の子がいた。
まずは、私の自己紹介とアメリの自己紹介を済ます。
その後で女の子が自己紹介をしてきた。
「アンジェリカ・メリルディーナよ」
そう言った後でドレスの両端をヒラリと持ち上げ片足を後ろにさげ見事なカーテシーを見せてくれた。
「アメリさんとは同級生になるの。アメリさんよろしくね」
カトレア様に似たかわいらしい姿。
一見するとただの可憐な少女だが、ファール様から受け継いだ黒髪のせいか、落ち着きのある雰囲気を出している。
そしてその立ち姿は一目で理解せざるを得ない立派な公爵令嬢だった。