4.11.9 王都での生活
「うひぁ」
びっくりした、なんで。魔力検知も潜り抜けファールじいちゃんが後ろにいた。
「ふん、魔力検知を潜り抜ける魔道具ぐらい持っておるわ。頼り過ぎじゃ。
それで、わしが居たぐらいで、何をおどろいているんじゃ」
「いや、単に驚いただけですよ。今ので驚かない10歳児はいないでしょ」
「転移で領地に戻れる10歳児もいないがな」
「まあ、それは秘密で」
「ああ、良かろう。転移門を修復してくれたようだしな」
「ああ、あれですか。基幹部品が壊れていたわけでは無かったから。たぶんオメガさんでも修理できましたよ」
「以前に試した者もいたが、その者とオメガにそれほどの差は無かったはずだ」
「ええ、あの魔法陣は、最初に魔法陣を有効とする人を限定する名前入りの制約文面が書かれてました。それは新しい、というか逆かな古い本に書かれていた通りでしたから、名前を書き換えれば発動しましたよ」
「それが読める者がいないのが現状だった。マクシミリアンからも聞いておる。
魔法陣の記述ルールを解読したそうだな」
「僕らも解読はしていましたが、全部を理解する前に、バハムート様から500年前に書かれた魔法陣の初級本を譲ってもらいました。それにすべてが書かれていました。僕とオメガさんはそれを理解してます」
「そうか、そういうことか。以前からエルフにも交渉して書物を得ようとしていたのだが、彼らも興味ある魔法陣しかなく、新たな魔法陣を研究する者がいないから技術が廃れたのだと言っていた。
竜王と呼ばれる彼が持っておったのか。だが竜族もあまり魔道具には興味を持っていないと思ったが」
「ええ、だから初級本しか持っていませんでしたよ」
「ふむ、それは、竜語で書かれていたのか?」
「はい、カイ様。えっと竜王ハバムートは人の姿の時にはカイと言う名前なのです。
そのカイ様が竜語を翻訳しながら教えてくれました。マクシミリアン様に渡したのはそれを今の言葉に直した物です」
「そうか、この本の翻訳、転移門の修復、それにマジックバッグとマジックボックスの復活。最後に誘拐された幼子の発見と、これらの功績に報いて褒美を与えなければならないと陛下がおっしゃった。
お主は何が欲しい」
「特に欲しい物は無いのですが」
「何かないか?」
「そうですね。金属、材料が欲しいかな。注射針や医療に使う道具を作りたいし。それと鑑定の魔道具に使われているのが魔石ではなくて宝石、おそらくエメラルドだと思いますけどそういった素材も欲しいですね」
「注射針の事は聞いておる。良い技師が居るからそこに聞いてみよう。それにしても鑑定の魔道具だと、それも復活させるつもりか」
「まだ、研究からですよ。転移門や鑑定の魔道具を復活させるのは、先が長い話です」
「鑑定の魔術具だけでなく新たな転移門もか」
「それらを作る時の素材は必要になりますね。将来的に」
「それは国への貢献になる。素材を用意するのは当たり前だ。それは報酬とは別にわしが用意しよう。それ以外にないのか、例えば気に入った女子との婚約とか」
「マリアテレーズ様との婚約は決まっているのでしょう」
「ああ、マリアは決まっている。
だが、マリアとの婚約を発表するのはあと3年ほど後になる。
順番的には、クロスロードの嫡男として一人を早急に決め、3年後にマリアとの婚約を発表、同時に公爵家の跡取りとなる。そして、公爵家の跡取りであれば、二人の婚約者を決める事ができるので、マリアともう一人おって問題ないのだ。
いや、逆に先に一人決めておかねばならんのだ。そこに誰を入れるかだ。今ならお主の希望を聞けるぞ。陛下から望みを言えと言われておるのだからな。
いま自分で希望を言わなければ、後は陛下が命令することになるだろう。
希望は無いか、例えばクリシュナ。
他には侯爵家だな。
同期だとアイゼンハワード、イバスワード、バディワード、フィンレワードの令嬢。前後広げるともう少しいるな」
「えー。彼女たちには興味はないですよ」
「そうか、では残りは第1王女しかいないな。
だが彼女は自分で相手を選ぶと言ったからな。政略結婚には応じないぞ。
ジルベールは無理強いしたくはないだろう」
「ええ、本人の意思に反したことはしたくありません」
「わかった、では打診だけしておくか」