1.2.1 転生者A
気がつくと周りが白い空間にいた。
だが、ついさっき死んだ自覚がある。この状態は意味不明だが、おそらく死んだのだろう。
あの後、少女はどうなったのだろうか?
少女を助けたところまでは良かったが、まさかあれほどの悪意をもってひかれるとは想定外だった。
一度目の衝突を回避すれば救急車を呼んで助かるだろうと安易に考えていた。
しかしまさかの想定外の事態に陥るとは。
平和ボケしていた自分の失敗を後悔した。
恐るべしストーカー。
あーあ、こんなことならあの子と一緒に帰らなければ、いやいやそれだとあの子は無事ではないだろう。
2人でタクシーが来るまで待つべきだったのだろうか。
後悔しても時間が元に戻るわけでもない。
ところで、ここはどこだ、いつまでここにいるのだ。思考がループしているな。
そんなことを思っていたとき、ようやくこの白いだけの世界に変化が訪れた。
目の前にきれいな女性が現れた。
いつも大学で見かける女学生ぐらい。さっき助けた少女にも見える。
だがどうも違うようだ。
いや見えるということは、今の僕には目があるのか?
それにしてもこの女性、綺麗過ぎる。
その姿は存在するだけで神々しく、その存在が現世の者ではないことがわかった。
何よりもその女性の背中には金色の大きな翼があり頭の上に光の輪があるのだ。
つまり天使か神か。
「私はこの世界の神。メリーナです」
そう挨拶してきた。やはり神だったのか。納得だ。
「ん? あなた なんだかはじめて会った気がしませんね。もしかして私のことを知っていますか?」
突然現れた女性が、美しい声でそう話しかけてきた。
「いえ、知りません。今まで神様に会ったことは無いと思います。死んだ時に神様に会うなら1歳の時に一度死んだことがあるそうですが記憶にはありません。おそらくですがはじめてだと思います。メリーナ様でしたか?」
お、話すことができるのか、でも声が出ている感じと違うな。
「そうですよね。はじめてですよね。もちろん。当たり前ですね。ははは。……では最初に確認から。まず、あなたは先ほど死んだのですが、ご自覚されていますか?」
「はい。確かに死んだと記憶しています。が、ここはどこですが? 天国とか地獄ではなさそうですね。審判の部屋とか?」
声を使った感じではないが会話が成立しているようだ。
「いえ、ここは私の管理する別世界に転移させるための部屋です」
「別世界? 転移?」
何を言っているのだ。まったく理解できない。
「それでは説明をしますね」
メリーナ様は、混乱している私の答えを待たずに説明を始めた。