3.16.1 バーニィのお相手
時は7歳の誕生日の頃にさかのぼる。
それは、レティーシア・カリエール子爵令嬢が僕の侍女としてやってきた日までさかのぼる。
「ジルベール、この子がカリエール子爵からお預かりしたレティーシア嬢よ」
「初めまして、レティーシア様」
「そうではないでしょう、ジルベール。
貴方は侯爵家の嫡男。
貴方が年下だとしても、下の者に対してへりくだりすぎてはいけなわ。
爵位を持つ者に対して接する時と、そうでない時は区別なさいと言っているでしょう
それに紹介したらまず紹介者がしゃべるのよ」
「はい」
「やり直しよ。
ジルベール、この子がカリエール子爵からお預かりしたレティーシア嬢よ」
「カリエール子爵のレティーシアです。
ジルベール様の専属侍女として働くことになりました。
よろしくお願いします」
「ああ、レティーシア。よろしくね」
「はあ、まあ良いでしょう。
レティーシアはもういいわ。
コリンナのところに行ってちょうだい」
「はい、奥様」
レティーシアは、見事な礼をしてコリンナの所へに下がった。
「では、ジルベール。
貴方がエレノアやニナシスティの魔力を伸ばしたことはわかっています。
伸びる可能性があるならば、レティーシアの魔力を伸ばしてほしいの」
「実験中だから、効果があるのか保証はできませんが、良いですよリリアーナ母様」
「では頼むわね。
わかっていると思うけど、この子がバーニィの婚約者候補なのよ」
わかってませんでした。
全く。
「そう、その顔はやっぱりわかっていなかったのね」
いや、なんでわかるのかなリリアーナ母様は。
「あなたは賢いようにみえるけど、賢さの領域が狭いわ。もっと大きな視野を持つようにしなさい。
さて、わかっていなかったということは、バーニィが振られる理由を知らないと言うことかしら」
「それぐらい知ってますよ。コリンナが言うにはがっつきすぎが原因です。緊張して女性と話をしていないのに、すぐに告白する。
そして、少し優しくされるとすぐに惚れる。相手の好みを読まずにプレゼントをする。
そういうところがダメだと聞いてます」
「はあ、本当にそれだけだと思っていたのかしら」
「違うのですか?」
「貴族同士の結婚は魔力量も考慮されるでしょう」
「ええ、ですが王族や公爵家ならば魔力の釣り合いを考えると聞きましたが、貴族同士であれば多少の違いは大丈夫だと聞いてます」
「普通はそうね。
でも、バーニィは王宮魔導士。
魔導士は、魔導士として生活できる者を選んで次代を残すのが一般的です。
王宮魔導士ならば、伯爵家以上の令嬢と。
そうでなければクイン達のように、高位貴族の家で魔導士として雇われたことのある者たちから婚姻相手を探すのよ」
「へー、そうなんですか」
「だから、王都で探して見合いをさせた相手は伯爵家、あるいはその縁者だったわ」
「ほう」
「バーニィが振られていた本当の原因は貴方なのよ」
「え、僕ですか?」




