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3.11.4 10歳の誕生日

『いったいラキシス姉さまは何をしたの』


『私もかつてこの世界にいた?』

女神メリーナ様の言葉に対してマリアテレーズが割込みしてくる。


『そうよ、残念だけどジルベールのように魔法のレベルが昔のままとはいかなかったけれど、目覚めたらスキルレベルが高かったでしょ。かつての半分ぐらいを保持できたわ』


ラキシス様はメリーナ様の直接の答えではなく、マリアテレーズ様の問いについて答えている。


『え、だから僕のレベルは年齢とともに上がるスキルと上がらないスキルがあったということ』


『すべてを継承できたわけではないけれど、あなたの魂はそれだけの容量がある貴重な魂だったのよ』

『ふん、ラキシスに我の役に立つからと懇願され力を貸したのだ、役に立ってもらうぞ』


その答えは一つしかない。

『ハイ、カナラズヤ』


 そもそも前の継承とか昔の魂の意味も意図もわからない。

 前前世の記憶などかけらもないのに、メリットなどあるのか。

『ラキシス様、前前世と言われても、スキルが高いだけで記憶はまったくありません。

これから思い出すことはあるのですか?』


『断片程度なら思い出すかもしれぬが、まず無い。

だが、魂に刻まれた愛や力は継承している。

あの時代の魂を継承しているお前の相手はもう一人いる。

その者とも直に会えるだろう』


『え、今日マリアテレーズと会ったばかりなのに。

あと一人といきなり言われても。

何もしていないのに浮気をしたみたいな背徳感が』


『ふはは、なかなか面白い男だ。

今までの異世界人は女を与えれば喜んでいた。

だがそういう誠実な者は好きだぞ。

しかし、大切と思える者が困っていたら躊躇せずに助けるのだ。

この世界の男は何人の女性を救えるのかが重要とされている。

それが多いほど良い男と呼ばれるのだ。

いいなジルベール』


『え、神様に浮気を推奨されるとは。

わかりました。

この世界の理に従います』


『そうよ、運命の流れに従いなさい。

では、またね』


 世界の様子がもとに戻る。

 目の前にいた神々は全て消え、普通の光景。

 時間も流れている。


 いつの間にか体の痛みはない。


 だがズボンの長さがおかしい。

 手も。


 目線がなにか違う、違和感がある。


 あ、これ体が強制的に10㎝ぐらい大きくなってるわ。

「祈りの前後で体が成長したのか。この一瞬でこんなことが起きるとは。

大丈夫なのかジルベール」

 ファールじいちゃんが声をかけてくれた。


「ええメリーナさまから称号を頂いたら、体に合わなくて。危なかったのですが、ラキシス様が整えてくれました」

「そ、そうか。もしかしてもしかするが、アロノニア様とラキシス様も居られたのか」

 ああ、そういえば時間が止まっていたはずだから見てないのか。

 いや、時間が止まっていたはずなのに、見えていたのか?

「見えていたのですか?」

「いや、いつも通り光の塊があっただけだが、いつもは一つだけなのに今回は3つもあったのだ」

 どうやら、他の人には姿が見えていないらしい。


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