3.11.3 10歳の誕生日
『わかったわ。勇者の称号を贈ります。個人を強くした方が生存率が上がるし』
お、決まったのか、やっぱりおすすめの勇者か。
ってあれ。
え? 何だ、体痛いぞ。
『メリーナ様、体が痛い』
『え、どうして、何が起きてるの』
オロオロとするメリーナさまの横にきれいに光る二つの塊が見えた。
『はあ、メリーナも無理をするわね』
『勇者の称号を与えただけですよって、ラキシス姉さまにアロノニア姉さままで。
あ、現世の時が完全に止まってる』
『英雄の称号が復活するタイミングで勇者の称号を渡すから、体への影響が大きかったのよ』
『え、英雄の称号なんて渡していませんよ』
『いやね、まだ気が付いていないの。
この子は300年前に貴方が英雄の称号を与えた子と同じ魂を持つ者よ』
『ラキシスのんびりと話をしていると危ないのではないか。
そろそろその者の魂を保護した方が良いぞ。
我では力が強すぎて消滅させそうだ』
『不足している分を神力で置き換えて、英雄と勇者の称号を安定化。
できたわ』
『そうか、では私の用事を済ませるか。
すでにイシスはついているのか。相変わらず自由だな。
勝手に移動したようだから、残りのガルダの魂を渡そう。
これで2体の聖獣召喚が可能となる』
『アロノニア姉さま、いったい何を。聖獣召喚ってどういうこと?』
『300年前にそなたが呼び出した転移者は暗殺された。
だがその魂はこの世界で消滅せず、我が元の世界に戻したのだ。
そして再びそなたがその者を召喚した。
そういうことだ』
『消滅しないなんてありえないわ。
いままでそんな事例聞いたことがないもの。
神の力をもってしても逆側への異界渡りができるわけないわ』
『だからアロノニア姉さまが力を使って元の世界に戻したのよ』
『姉さまが。
私よりもさらに強力な力を持つ姉さまなら確かに体は無理でも魂だけなら』
『そういう訳だ。だから預かっていた聖獣を戻したのだ』
『ジルベールと言ったか、我はアロノニア。
3神の長にして最古の神の一柱だ。
そなたには近いうちに我のために働いてもらう。
使いにバハムートをよこすので、言うことをよく聞くのだ。
褒美は用事を完遂したら渡すことにする』
体の痛みが無くなったので、話を聞いていたが、いきなりの事に訳がわからない。とりあえず女神に返事をしないと怒られそうだ。
『はい、承知しました』
『ジルベール、わたくしはラキシス。
運命の一人はそこで聞いているし無事に見つけたのですね』
『え、マリアテレーズがここに?』
『はい、3人の女神さまが現れてから、わたくしにも声が聞こえるようになりました』
『じゃあ、マリアテレーズが僕と一緒に死んでこっちに来た転生者?』
『マリアテレーズも貴方同様にかつてこちらで亡くなり、異界へ戻した魂なのよ。
かつて貴方が伴侶とした者の魂を持つ存在。
貴方たちの出会いは、私の未来視の力で予想した通りよ。
すくなくともここまでは』




